緑がまぶしい武蔵野の住宅街
JR阿佐ケ谷駅を出ると、高さ30mはあろうかというメタセコイア(アケボノスギ)を見上げる。
「さすが杉並区」
生命力あふれる大木に元気をもらって、駅周辺を歩きはじめた。この駅前ロータリーが象徴するように、阿佐ケ谷を歩くと、樹々がつくる印象的な風景に出会える。
例えば、フレンチレストランと小劇場を併設する映画館『ラピュタ阿佐ヶ谷』。駅前の繁華街を20mほど外れると、森に眠る古代遺跡のような館があらわれる。
住宅街に異彩を放つ建築は、縄文杉の切り株をモチーフにつくられた。ガリバー旅行記に登場する空飛ぶ島「ラピュータ王国」をイメージしたという(ジブリ映画の『天空の城ラピュタ』ではなく)。
阿佐ヶ谷神明宮、世尊院と、駅近に比較的大きな寺社があることも、阿佐ケ谷ライフのポイントだ。通勤や通学の行き帰り、お参りがてら緑豊かな境内を散歩し、気分を新たに仕事や学業に打ち込めそうだ。
祠のすぐ裏手には「ライオンズマンション阿佐ヶ谷」。「ライオンズマンション特有のレンガタイルが、落ち着いた印象ですよね」と石川さん。
静かな住宅街で名店に出会う
『ラピュタ阿佐ヶ谷』や阿佐ヶ谷弁天社がある阿佐ヶ谷駅北側は、石川さんいわく「低層の戸建住宅が立ち並ぶエリアで、閑静な住環境が特徴」。マンションも目立った高層建築はなく、景観に調和している印象だ。
こちらは、重厚感ある外観が目をひく「コスモ阿佐ヶ谷ロイヤルフォルム」。「敷地は南側の間口が広く、住戸はワイドスパンの開口を持ち採光に恵まれています」と石川さん。
このあたりに住むと生活圏になるのが、松山通り商店街。年に数回、露店や大道芸でにぎわう「ゆうやけ市」が開催されている。
そこでぜひ通いたいのが、『Gelateria SINCERITA』だ。国際コンテストで3位に輝いた本格派のジェラート店は、常時17種類をそろえ、一部の定番を除き大半を1〜2カ月で入れ替える。
「それしかやることがないし、ジェラートをつくるのが好きなので……」と微笑む店主の中井洋輔さん。新作づくりは素材が命だが、ひたすらジェラートを突き詰める中井さんには自然と素敵な出会いが訪れるようで、ファンから生産者を紹介されたり、素材を持ち込んでくれる生産者もいたりする。
毎月の新作発売を楽しみに待とう。
これぞ阿佐ケ谷の台所!
また、阿佐ケ谷での暮らしをイメージするなら「阿佐谷パールセンター」は外せない。JR阿佐ケ谷駅から地下鉄南阿佐ケ谷駅周辺まで、約700mのアーケード商店街だ。
昭和11年創業、『蒲重かまぼこ店』の三代目・太田泰司さんは「阿佐ケ谷は、パールセンターを中心にした住商一体の街です」と話す。食料品や日用品は何でもそろうし、飲食店も充実しており、このあたりに住めばかなりの頻度で通うことになるだろう。
『蒲重かまぼこ店』のように、手づくりのお総菜が気軽に買える店があるのもありがたい。戦前から愛されるさつま揚げを一枚いただいて、商店街を食べ歩きするのも一興だ。
本当に住みやすい街
パールセンターの南側を抜けると、地下鉄南阿佐ケ谷駅はすぐそこ。
「JR阿佐ケ谷駅と地下鉄南阿佐ヶ谷駅は、並行するメイン道路と商店街によって繋がっていることもあり、同一商圏と言えます」と石川さん。「ただ、南阿佐ケ谷駅周辺の方がより“住まいの入り口”としての役割が大きいかもしれませんね。阿佐ケ谷駅付近には、両隣の高円寺・荻窪の色合いもあり中央線独特のサブカル色が見られるのに対し、こちらは杉並区役所や警察署・税務署などの公共施設が集まるほか、南側の背後地は緑地・公園に囲まれて空が広く感じられ、住む環境として恵まれていると思います」。
「クリオレミントンハウス阿佐ヶ谷」は再開発でうまれた、全167戸+17店舗の都市型マンションだ。石川さんいわく、「このエリアではめずらしい高級仕様で、特にエントランスホールは西欧のホテルのよう。フロントサービスが用意されていて、ラウンジやクラブハウス、コミュニティハウス、託児所など施設が充実しています」。
南阿佐ケ谷駅から10分弱歩けば、蛇行しながら流れる善福寺川。武蔵野の面影を残す川沿いの遊歩道は、散策にもジョギングにも絶好のコースだ。
善福寺川緑地に隣接して、「プラウドシティ阿佐ヶ谷」が広がる。旧・阿佐ヶ谷住宅の跡地に建て替えられた、7棟の再開発マンションだ。
「『プラウドシティ阿佐ヶ谷』は、緑と人々の交流が大切にされた旧・阿佐ヶ谷住宅を継承しています。かつて敷地内に植えられていた樹木も、できるだけ移植する努力がなされました。約4400本の樹木による3つの森と約2600㎡の面積を誇るグランドガーデンを含む4つの中庭、そして提供公園を抱く緑豊かなランドスケープを描きます」と石川さん。
旧・阿佐ヶ谷住宅を設計した津端修一氏は、単に建物を建てるだけでなく、都市計画にも目を向ける建築家だったそう。住民のコミュニケーションをうみだす設計思想は、「プラウドシティ阿佐ヶ谷」にも受け継がれている。
個性派飲食店がきらめく夜の繁華街へ
夜の散歩は、再び阿佐ケ谷駅方面へ。阿佐ケ谷駅は開業からおよそ100年(1922年開業)経つだけあって、駅前繁華街の歴史は古く、充実している。南口から徒歩1分の「パークハウス阿佐ヶ谷レジデンス」に我が家があれば、心置きなくハシゴ酒が楽しめそうだ。
「パークハウス阿佐ヶ谷レジデンス」からほど近い「いちょう横丁」には、ミシュランガイドでピブグルマンに選出された『餃子坊 豚八戒』がある。予約必須の人気店だが、現在テイクアウトを提供中(予告なく終了する場合あり)なので、手軽に名店の味を堪能するチャンスだ。
線路を挟んだ北口の線路沿いは、約150もの小さなお店が軒を連ねる「阿佐ヶ谷スターロード商店街」。戦後に闇市や飲み屋がならんだエリアで、渋いムードの路地に迷い込むのも味わい深い。
こうして線路沿いの繁華街を歩いていると、シャレの効いた店名、大胆な壁画に目を疑うような激安店など、強烈な個性が伝わってくる。近くのマンションに住んで毎日通っても、気になるお店をすべてまわるには、何ヶ月も必要だ。毎日ワクワクした気持ちで、夜を迎えられるに違いない。
紹介したお店の詳細
紹介したマンションの詳細
*残りの5軒については、マンションライブラリをご覧ください。
取材・文・撮影=小越建典