ワインと日本茶の隠れた共通点
フランスのリヨンで生まれたダントンさんが日本茶に目覚めたのは、2度目の来日を果たした時のことだった。ある旅館を訪れた時に、仲居さんが淹れてくれた日本茶を飲んで、その美味しさに感動。さらに、「日本茶は、ひょっとすると世界中で受け入れられるソフトドリンクにもなるかもしれない!」と、その秘めたポテンシャルにも気付かされたという。その後、日本で働きながら独学で、時には生産者のもとを訪れて、日本茶の知識を深めた。その際に、日本人の間でも日本茶を飲む習慣が薄れてきていることを知り、日本茶の魅力を多くの人に伝えて、ファンを増やしたいと決意した。
そこで、日本茶のイメージを「気軽で」「おもしろい」ものに変えようと、後に『おちゃらか』の看板商品となる日本茶のフレーバーティーを開発することに。2005年には吉祥寺に自身の店をオープンし、それから約6年の間、日本茶に関する様々なイベントも開催しながら普及活動を行ってきた。そんなダントンさんの活動に目を付けたのが、当時まだオープン前だった『コレド室町』。出店の誘いを受け、2011年に日本橋室町に拠点を移すことになる。人形町に移転するまでの9年間、日本橋室町でお茶の魅力を伝えてきた。
2度目の来日まで、パリやロンドンでワインのソムリエとして働いていたダントンさんは、日本茶もワインのように、お客さんの求める味わいや香りに沿ったものを提案している。そのきっかけとなったのは、ダントンさんが初めてお茶畑を目にした時に「フランスのワイン産地の風景のようだ」と感じたことだそうだ。ブドウとお茶の生産方法にも共通点が多いことを知り、「ワインの販売方法を日本茶に当てはめて考えるヒントになった」と、当時を振り返る。そのため、この店では看板商品であるフレーバーティーのほかに、ダントンさんがお勧めする、生産地や製法も様々な全国各地のお茶を取り揃えている。
フレーバーティーだけでも数十種類あり、どれにしようか悩んでしまいそうだが、どんなお茶を求めているかダントンさんに相談すれば、きっと理想のお茶に出合えるはずだ。ギフトやお土産など、贈る相手の好みが分からない時は、数種類のフレーバーティーが詰め合わせになったTEA BAGアソートセットを選ぶのもおすすめ。
『おちゃらか』の第3章
取材当時、まだ人形町に店を移して1ヶ月足らずだったにも関わらず、近所の古参の店主たちと気さくに挨拶を交わすなど、すっかりこの地に馴染んでいる様子だったダントンさん。移転後すぐに近所の店の人たちとコミュニケーションを図っていたようで、その際に、店から歩いて5分の距離にある『茶ノ木神社』の存在を知る。
この神社の周囲には、お茶の木が植えられている。同じお茶を扱っている店として、縁のようなものを感じたダントンさんは、ゆくゆくこの神社のお茶の木を自身で管理したいと語る。2005年のオープン以来、店頭でお茶の木を育ててきた経験もあり、栽培のノウハウは持っている。『茶ノ木神社』で栽培した茶葉を収穫して、「いずれ周辺の小学校などで茶もみ体験とか、いろんなイベントを提供して、地域に還元していけたら」と話す。
今では、大学でお茶に関する講義も受け持つなど、幅広く活動中。人形町に拠点を移し、これから始まる『おちゃらか』の第3章に向けて、全国の番茶の紹介にも力を入れていきたいと意気込む。
「日本人が知らないだけで、日本茶の楽しみ方は幅広いんだよ」
そう語るダントンさんの言葉に、改めて日本茶のポテンシャルを見直すきっかけになった。
『おちゃらか』店舗詳細
取材・文・撮影=柿崎真英