近隣住民も通う下町ならではの親しみやすい雰囲気
映画『男はつらいよ』や漫画『こち亀』の舞台として親しまれる葛飾区。葛飾区役所は京成立石駅から徒歩7分ほどの場所にある。京成立石駅周辺は、再開発が活発ながらも、昔ながらのアーケードに下町らしい商店や居酒屋がぎっしりと立ち並ぶ、昭和の趣が色濃く残る地域だ。言わずと知れた“せんべろの街”でもある。
葛飾区役所へ向かうには、駅北口側の区役所通り商店会を抜け、立石さくら通りを進む。
区役所の正面には広い階段があってつい上りたくなるが、食堂のある新館はこの奥の建物。外から回ったほうがわかりやすいので、階段の脇を抜けて先に進もう。
1階入り口からも入らずに、建物の裏側に抜けると新館が見える。
新館までの行き方がわからないときは、「新館1階の食堂に行きたい」と区役所の受付で聞いてみよう。係の人が丁寧に教えてくれる。
新館1階の入り口から廊下を進むと、サンプルメニューのが並ぶショーケースが見えてくる。
店内は広く、6人掛けのテーブル席がずらりと並ぶ。混み合う時間帯はほぼ相席となるが、お客さんはみんな慣れた様子ですっと席に着く。一般のお客さんも多く見られ、顔見知りの常連さん同士が仲良くおしゃべりしていたり、小さいお子さん連れに周りの人が声をかけたり、下町らしい温かい雰囲気だ。
葛飾区では「主食、主菜、副菜がそろった“バランスメニュー”を提供している」「野菜を70g以上使用した料理がある」など、健康に配慮した食事やサービスを提供する飲食店を“かつしかの元気食堂”として認定している。『葛飾区役所 元気が出る食堂』もその認定店の1つで、健康バランスを重視した“元気が出るメニュー”を日替わりで提供している。
「今日の元気が出るメニューは、葛飾区内にある東京聖栄大学の学生が考案したコーンバターライスのカオマンガイ丼です」と教えてくれたのは、店長の小林恵二さん。カオマンガイなんて、役所の食堂ではなかなか聞かないメニューですね。地元の大学とのコラボメニュー、ぜひ食べてみたいです!
地元の大学とコラボした栄養満点の日替わりランチ
日替わりメニューは、元気が出るメニュー650円のほか、内容充実でお得なA定食680円、定番&アレンジメニューのB定食620円、お弁当700円の全4種類。さっそく元気が出るメニュー650円の食券を握りしめ厨房カウンターへ。
“定食類”のカウンターで食券を渡すと、厨房スタッフさんがてきぱきとトレーに料理を並べてくれた。
カオマンガイとは、鶏スープで炊いたお米にゆで鶏をのせた、タイの名物料理。それを東京聖栄大学 管理栄養学科の学生さんが栄養バランスを考慮した健康メニューにアレンジした。赤・黄パプリカ、ブロッコリーに細切りキャベツと野菜たっぷりで見た目も鮮やか。
ライスはスイートコーン、バター、ニンニク、ショウガを加え、鶏ガラの出汁で炊いたもの。鶏の旨味にバターの香りがマッチして食欲をそそる。パプリカやブロッコリーは栄養価を損なわないよう、蒸してトッピングされている。
ほろほろにゆでられた鶏むね肉はとってもジューシーで、エスニック風味のタレがコーンバターライスと相性抜群! 味の相乗効果で旨味が倍増している感じ。
鶏肉、キャベツとライスをまぜまぜして一気にかっこみたくなる気持ちを、蒸し野菜が落ち着かせてくれる。
定食類には小鉢と味噌汁が付く。小鉢は日替わりで、この日は肉野菜炒めとナスの煮びたしが付いてきた。肉野菜炒めは焼き肉のタレ味でピリ辛。ナスの煮びたしはかつお出汁の風味が口の中にふわっと広がって美味!
「肉野菜炒めにはキムチをいれてピリ辛にしています。ナスの煮びたしの出汁はそばつゆのかえしを使っているんです」と小林さんが教えてくれた。これは追加で白いご飯も欲しくなっちゃうやつ。
メインのカオマンガイがエスニックで、小鉢は韓国風と和風の味付け。いろいろ味わえてなんだか得した気分♪ ごちそうさまでした!
葛飾産の小松菜を使った天ぷらそばも人気
東京聖栄大学からは毎年12種類ほどのヘルシーメニューのレシピが届くそう。2024年度はカオマンガイ丼のほか、たっぷり野菜ときのこのビビンバ丼やチキンハンバーグのロコモコ丼といったメニューを採用した。
店長の小林さんいわく、「うちの管理栄養士と相談して、材料が揃うもの、食堂内の厨房で調理できるものといったことを考慮して、届いたレシピの中から採用するメニューを決めています。地元とのコラボでいえば、学校給食メニューが日替わりメニューに登場する日もありますよ」。
取材当日の小鉢で使われていた小松菜は地元葛飾で採れたものだそう。
「地元のJAから届く小松菜を毎日使っています。1週間に30把ほど使うんですよ。小鉢や付け合わせのほか、通年で天ぷらそばのかき揚げに使用しています」
小林さんに料理へのこだわりを伺うと、「予算の範囲内に収めなくてはならないんですけど、きちんとした素材と作り方を守ること。食堂のメニューには和・洋・中ぜんぶありますけど、安い食材を使ったとしても“○○風”にならないように、そのものの料理を食べていただくのがこだわりです。それがお客さまに伝わっているかはわからないですけど」と、ちょっと笑いながら答えてくれた。
いやいや、ランチを食べている常連さんたちのお顔を見ればわかります。小林さんの心のこもった料理、お客さんに伝わっていますよ。
京成立石駅周辺では現在再開発が進んでいて、葛飾区役所も2028年頃に駅前にできる新庁舎への移転が決まっている。きっと新しい食堂もできるだろう。真新しいピカピカのお店になっても、近隣の人たちが笑顔で足を運ぶこの雰囲気、引き継いでほしいな。
タイムサービスのコーヒー無料券もらったし、近いうちに今度は甘い物でも食べに来よう。
※価格はすべて2025年3月31日現在のもの。
取材・文・撮影=マルヤマミキ