熟練の職人が丹精込めて茹で上げる“唯一無二”の麺
『つけ麺屋 やすべえ』は、つけ麺専門店の草分け的存在。2002年、高田馬場に1号店を立ち上げ、都内で8店舗展開している。2010年にオープンした秋葉原店は、電気街にそびえるビルの地下1階に店を構える。
つけ麺をいただくならば、食券を買う前に決めておきたいことが3つある。その1、麺の量を選ぶ。その2、つけ汁の味を選ぶ。その3、トッピングを選ぶ。初めての方は券売機を前にして迷ってしまうと思うので、階段に並んで順番を待つ間に考えておくといいだろう。
まずは麺の量。小盛180g・並盛220g・中盛330g・大盛440gがあり、どの量を選んでも同じ値段なのがありがたい(特盛550gは100円増し)。小盛にはサービスでトッピングが1品付く。食が細い女性や年配の方でも、おいしく食べきれる量だ。
麺にはこの上なくこだわっており、あっさりした魚介ベースのつけ汁に合う味と食感の麺を創業70年の老舗製麺所と協力し、研究開発。『つけ麺屋 やすべえ』専用の“唯一無二”の小麦粉を使用している。この特別な麺が毎日、製麺所から各店舗に届けられる。
「打ち立ての生麺なので、日によって麺の状態が違うんですよ。季節ごとに気温・湿度に合わせて麺の加水率や熟成時間を変えているので、製麺所の職人さんとやりとりして茹で加減や締め加減を調整しています」と厨房スタッフの髙田直樹さん。『つけ麺屋 やすべえ』で10年以上のキャリアを積む職人だ。その違いは、麺を毎日触っているとわかるというのだからすごい。
髙田さんが絶妙なさじ加減で締めた麺は、ツヤツヤと光っていておいしそう。「おいしく食べてもらえるように」と髙田さん。丁寧に仕事をする職人さんの技術と想いがあって初めて麺の良さが引き出され、こだわりの麺がおいしく仕上がるのだ。
おいしさにこだわって、店の厨房で手仕込み
続いて、4種類あるつけ汁の味をどれにするかが悩みどころ。1つ目は、「野菜の旨味、肉のコク、魚のダシを融合させた秘伝の醤油ダレ」と謳った甘辛いつけ汁。ザク切りの肉厚チャーシューと歯ごたえがいいメンマがもりっと入っている。
2つ目は、醤油ダレに自家製ラー油を加えた辛味のつけ汁。券売機には辛さを追加できるボタンが3つあるので、辛いもの好きは辛味ダブルに。辛味MAXは、より刺激的な特濃の自家製ラー油だ(辛味スペシャルMAXのみ30円)。
辛味のつけ汁には、麺が温かい状態の“あつもり”が、ひと味違うおいしさでおすすめだそう。通常は冷たい“ひやもり”なので、“あつもり”にしたい方は店員さんに食券を手渡す時にお願いしよう。
3つ目は味噌味のつけ汁で、4つ目は自家製ラー油を加えた辛味味噌のつけ汁。この味噌もまた自家製で、香り高くコク深い。こちらはたっぷり野菜&ひき肉入り。
醤油ダレをはじめ味噌・ラー油・鶏油など、調味料はすべて店のオリジナルで、店舗で仕込んでいる。トッピングももちろん手仕込みで、店ごとに厨房で作っている。秋葉原店は上の階にも厨房があり、9時間かけるというスープの仕込みも絶え間なく行っているそうだ。
最後は、どのトッピングを付けるか。無料のつぶし生にんにく、いりごま50円、野菜150円など多彩なラインナップ。いろいろ食べたいなら、やすべえ特製420円を選ぶのが正解! 味玉・チャーシュー・水餃子・野菜・焼のりと盛りだくさんで、めちゃくちゃお得なのだ。
鮮やかなオレンジ色の濃厚な黄身が特長の茨城県産「奥久慈卵」の味玉は、トロッと半熟でいい味つけ。醤油ダレに漬けて1日寝かせている。どれもこれも一度はいただいてみたいトッピングばかりだ。
麺もつけ汁も食べ方自由! 味変しながら楽しむのが“やすべえ流”
いつも迷わず辛味つけ麺を選んでしまう筆者。店おすすめの“あつもり”で辛味といきたいところだが、あえて初心にかえって、今回はシンプルなつけ麺を注文した。
麺を箸で持ち上げただけで、早くものど越しのよさが想像できる。コシがあって、ツルツル、シコシコ、モチモチ。おいしい麺の条件をすべて満たしている。何もつけずに食べると、上質な小麦の香りが感じられるのが素晴らしい。
あっさり系の醤油ダレは、やさしい甘辛さの中にほんのりと酸味も感じられる。出汁の風味をしっかりと効かせながらも決して濃すぎることのないこの味わいが、さまざまなアレンジを可能にするのだろう。
卓上には、削り節・刻み玉ねぎの入ったツボが置いてあり、どちらも好きなだけトッピングしてOK。酢やコショウでつけ汁の味を変えてみるのもいい。自分好みにカスタマイズできるので、つけ麺1杯で何通りもの味を楽しめる。
最後にもうひとつ、味変の楽しみがある。麺を食べ終えたら、サービスのスープ割りを頼もう。熱々濃厚なスープをつけ汁に投入。この店に来たなら、スープ割りでシメずにはいられない。
久しぶりにスタンダードのつけ麺を食べて、改めて『つけ麺屋 やすべえ』の奥深さを知った。こんなにバリエーションがあるのだから、まだ食べたことのない味にもチャレンジしたい。この先も何度も通うことになりそうだ。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=コバヤシヒロミ