渋谷の住宅街で15年営む隠れ家イタリアン
渋谷・桜丘町の閑静な住宅街にあるイタリアンレストラン『ボナペティート』。店名の「ボナペティート」はイタリア語で「いただきます・召し上がれ」を意味する言葉。レンガ調の外観と相まって、“町の小さな食堂”を思わせるアットホームな雰囲気を感じられる。
扉を開けて店内に入ると、ウッディで温かみのある空間が出迎えてくれる。たとえ初めての来店でも、ホッとして、どこか懐かしい気分になる雰囲気だ。2007年にオープンして以来、15年にわたり周辺オフィスで働く人たちに愛されているのも頷ける。
本場イタリアの空気が流れる小洒落た空間
店のオーナーシェフ・加藤さんは、イタリアに3年間滞在する中で、イタリア中を巡りながら料理の修行を積んできた。『ボナペティート』の料理は、加藤さんが現地でマンマから教わったレシピを再現したものがほとんどのため、日本にいながら本場の郷土料理を楽しめる。
また、料理だけではなく店内の随所からもイタリアの風を感じることができる。イタリアを巡る中で見た現地のレストランの様子と加藤さんの感性が融合した空間は、まるで渋谷の中に小さなイタリアが存在しているかのようだ。手作り感のある可愛らしい雰囲気に惹かれ、店に来る9割が女性客なのだとか。
一晩煮込んだ真心たっぷりの自家製ラザニアは、リピーターが続出する逸品
この日はせっかくなので、この店に訪れた人たちがこぞって注文するという看板メニューのラザニアを、ランチセットで味わうことにした。
ランチセットは1000円という良心的な価格ながら、胡麻と野菜をベースにした自家製ドレッシングのサラダと、おかわりOKの自家製フォカッチャ付きといううれしいボリュームだ。
日本ではイタリアンレストランの定番メニューであるラザニア。
しかし加藤さんに「ラザニアって、イタリアではお店の味ではなく“家庭の味”なんです」と教えてもらった。そのため地域によって味わいに個性がある。『ボナペティート』のラザニアは北イタリアの味を再現しているそうだ。
そんな自家製ラザニアの特徴は、野菜がたっぷり入っていること。主にセロリ、にんじん、玉ねぎの3種類を使い、それぞれ甘みが出るまでじっくりと炒めたあとにワインを入れて、挽肉と一緒に丸1日ぐつぐつと煮込む。
さらに一から手作りした自家製ホワイトソースや、イタリア産の濃厚なチーズなどを組み合わせ、手間暇かけて野菜の旨味が溢れだすラザニアに。
スプーンを通すと、焦げ目のついた伸びるチーズと、中から溢れるホワイトソース、それに包まれた大ぶりのパスタで一気に幸せな気分に。ホワイトソースのなめらかでクリーミーな食感を感じられ、じんわりと野菜のやさしい甘み、挽肉の旨味が複雑に絡み合い押し寄せる。マンマの愛情を感じられるような温かく深みのある味わいは、一度食べたら恋に落ちる人が続出するのも納得だ。
渋谷にはたくさんの店があるが、本場のイタリアの空気を感じたくなったら『ボナペティート』の扉を開けてみよう。料理を食べているうちに、たちまちイタリア周遊気分へと誘ってくれるだろう。
そして一度足を運んだら、次回はきっと「いいお店知っているんだ」と誰かに紹介したくなるはず。
取材・文・撮影=稲垣恵美