高架橋と高架橋の間を突き抜けるように立つ姿は、まさに龍が天に昇る姿!?
高架橋耐震工事による約1年の休業期間を経て、以前の平屋でカウンターだけだった店舗から2階建ての新店舗として2018年にリニューアルオープンした。JR常磐線と山手線の2つの高架橋の間に挟まるように立つ。
それにしても、よくぞこんな器用に高架橋の間を縫って立てたものだと感心してしまう。なかなかにユニークで、インパクトある店構え。
中に入ると1階は厨房があることもあり小さなカウンター席のみだが、2階は奥行きのあるフロアにカウンター席のほかテーブル席もある。黒とナチュラルな木を基調にしたシックな雰囲気。もちろん頭上をひっきりなしに通る電車の音が振動とともに伝わってくるが、思ったほど強烈ではない。すぐに慣れる(ハズ)。
普通の餃子2個分の重量級ギョウザは、皮まで手作り!
ここの餃子は、とにかく大きい。上野でジャンボギョウザといえば『昇龍』、『昇龍』といえばジャンボギョウザといえるほど、代名詞であり大人気の名物である。そこで本日のランチは断然、ギョウザライス740円なのだ。
ギョウザライスが運ばれてくるやいなや箸が迷う暇もなく、まずは焼きたて熱々の大きなギョウザをガブリひと口。焼き目はこんがりパリパリ、皮はもっちり、餡はむっちり。豚ひき肉よりキャベツの比率の方が高いのに、肉の旨味や食感がしっかり感じられる薄味仕立て。その餡をたっぷり包む厚めの皮もお店で手作りする。
「こんな大きな皮は、売ってないからね」と、店主の野澤昌治さん。「うちのギョウザは大きいけど、野菜たっぷりでそんなにくどくない。あっさりした味付け。ほかの料理もそんなに強い味付けじゃなく、やさしい味付けにしてる」とのこと。
それには先代だった父のこんな教えが野澤さんの中にあるためだ。「あんまり味を強くすると飽きちゃう。ちょっと足りないかなぁぐらいの味付けの方が飽きがこない。また食べたくなるんだよ」。これこそが、『昇龍』のおいしさのDNAだ。
多才で風流人だった祖父が『昇龍』を創業以来70年余り。アメ横で愛される老舗町中華
子供のころから店の手伝いをしていたという野澤さん。大学卒業後は外国をまわったりして1年間ほどを過ごしたのち店に入り、両親や職人とともに働いた。そして2015年に父が亡くなり、3代目となった。
「店を継ごうとも継がないとも思ってなかったんだけど、そういうふうに線路が敷かれてた感じですよね。そう仕組まれたんだよね。きっとね、親父にね」といいながら、すごくいい顔で笑う野澤さん。今も、父から受け継いだ味を守る。
そんな『昇龍』には、親子2世代、3世代で通う常連も多い。地元のみならず、千葉や埼玉など遠方からわざわざ食べに来るお馴染みさんもいるという。ハワイやヨーロッパから毎年、年に1回必ず来るというファンもいるというから驚きだ。
ギョウザライスは、ギョウザ4個とライスに、やさしい味のスープ、もやしの和え物がつく。これを完食すると、すっかりお腹いっぱいになった。実はギョウザ4個じゃ正直、ちょっと足りないかもと思ったが、そんなことはなかった。そりゃそうだ。普通サイズのギョウザにすれば、実質8個分はあるのだ。
最後に、野澤さんにジャンボギョウザ以外の人気メニューを聞いたら「エビチャーハン990円だね」と即答。野澤さんもびっくりするぐらいよく出るという。よし、次はその真相を調査だ。その前に、こんど来たときはビール(赤星)とジャンボギョウザでまずは一杯といきたい。昼飲みにいい季節もすぐそこだ。
取材・文・撮影=京澤洋子(アート・サプライ)