鹿沼箒&きびがら細工
幸せと健康を祈りつつ 心を込めて作る工芸品
たった一人となった鹿沼箒職人が作る箒ときびがら細工。干支にちなんだきびがら細工は、鹿沼箒の余材を使って古くから伝わる箒編みの技で作られる素朴で可憐な縁起物。鹿沼さつきマラソン大会で還暦以上のランナーにも配られている。子供の頃から身近に接して技法を継承、一時途絶えた材料の箒きび栽培を復活させてまで伝統を守る心意気に感じ入る。
●見学不可。購入は『まちの駅 新・鹿沼宿』か通販で。 ☎0289‐64‐7572
大和屋足袋店
職人の足元を支える 藍染の地下足袋
明治末期の創業以来、受け継がれた伝統の技術で各種和装小物を手作りして販売。足袋を手作りする店は栃木県で唯一、全国でも数少なくなり各地から注文がくる。すべて日本製の材料を使った完全手縫いの鹿沼足袋3700円~。好きな生地を持ち込んだオーダーの場合は1週間程度で仕上がる。
まちの駅 新・鹿沼宿
宿場町ならではのおもてなし空間
『まちの駅』は、誰でも気軽に立ち寄って地域の話題や情報が得られる交流の場。散歩が充実する観光案内や、トイレ休憩などに大いに役に立つ。鹿沼には102カ所あり設置数日本一(2018年4月現在)。その中核施設で市街中心にある。ご当地グルメのにらそばをはじめ、弁当や軽食、喫茶などでひと息つける。きびがら細工や板荷茶(いたがちゃ)といった「かぬまブランド」の特産品や農産物も買える。
古峯神社
天狗の社で授かる御朱印が大人気
御祭神、日本武尊の使いである天狗で有名なことから「天狗の社」とも呼ばれ、災厄消除や開運の御利益で厚い信仰を集める。天狗の御朱印は丁寧に描くこともあり休日は長蛇の列ができるほど。なかには数カ月待ちの図柄も。2万もの講中を持つ古社とあって、800名が参籠(さんろう=宿泊の意)でき個室もある。参籠室や廊下に多数掲げられた天狗の面や扁額は必見だ。
録事尊の村廻り
上皇や雷様の病を治した名医を偲ぶ、巡行仏の風習
娘の病因を調べるために解剖したり、後鳥羽上皇の病気を治癒させた功により「録事法眼」の名を賜った逸話の残る名医・中野智元(1136?~1205?)。江戸時代になり、徳を偲んで智元夫妻と娘を地蔵や観音として祀り、それぞれの像を厨子に納めて粕尾(かすお)地区の家々を廻るようになった。現在は夫婦2体が別々に廻り、1年ほどで常楽寺に戻される。雷神の治療伝説に絡めた「粕尾七不思議」の伝承も興味深い。
●栃木県鹿沼市下粕尾949 ☎0289‐83‐0971(常楽寺)
双体道祖神
信州、上州から続く双体道祖神ロード
村の境や辻に祀って悪霊や災いを遮る道祖神。さまざまな姿形があり、長野や群馬でよく見る男女二神の双体タイプが有名。関東平野にはあまりないが、群馬へ通じる峠道に沿った中~上粕尾地区には双体道祖神が多く、分布の最東端だとか。地元では「どうろく神」の名で親しまれ、仲むつまじい姿と素朴な温かみにほっこり。
●拝観自由。 ☎0289‐62‐1172(市教育委員会文化財係)
古峯園
雄大な回遊式池泉庭園の茶室でお抹茶をいただく
標高700mにある古峯神社の神苑は、雄大な山並みを活かした借景が魅力の池泉庭園。園内に裏千家の茶室「又隠(ゆういん)」を移した『峯松庵(ゆうしょうあん)』があり、立礼席でお抹茶をいただける。風雅な空間で、癒やしのひとときを。ちなみに「峯松庵」の名は古峯園の「峯」と松下幸之助の「松」からとったもので松下幸之助筆の扁額がかかる。抹茶(菓子付き)600円。
芭蕉のそば餅
上品なソバの風味が口いっぱいに広がる
鹿沼市特産のソバ粉と鹿沼産米「さつきの舞米粉」を使用、共通レシピで作られる鹿沼菓子組合統一銘菓。松尾芭蕉が奧の細道紀行の途中、鹿沼に泊まり「入逢の 鐘もきこえず 春の暮」という句を詠んだ。芭蕉がそば好きだったことから命名。1個150円。同じく統一銘菓の「美たまるカステラ」は鹿沼産ハトムギと栃木県産小麦を100%使用したもの。
栄屋
門前でまったりまんじゅうタイム
古峯神社の門前に4軒並ぶ昔からの物産店の一つ。名物のゆべしまんじゅうは昔ながらの手作り。ほのかに桜の香りがするしっかりした生地と、ほどよい甘さのあんがよく合う。伏流水で淹れたお茶を飲みながら気さくな店主と話が弾む。定食類もあり、御朱印待ちの時間で食事をとりたい。
●8:00~17:00(変更あり)、無休。栃木県鹿沼市草久5067 ☎0289‐74‐2228
松風堂
とちおとめ5粒分を 贅沢に使ったイチゴあん
昨年発売された鹿沼イチゴイチエは「いちご市」を名乗る鹿沼市ならでは。鹿沼産とちおとめを練り込んだ自家製イチゴあんを、モチモチの皮で包んだどら焼き風の菓子。沖縄産黒糖を使い、カリッとした歯ごたえの食感が独特なかりんとうまんじゅうや定番のカステラとともに人気。
喜楽食堂
市民に愛され60年これぞ正しく日本の洋食
家族で切り盛りする、懐かしい雰囲気の食堂。魅力的な洋食メニューばかりだが、なかでも一番人気はAランチ。濃厚なデミグラスソースたっぷりのハンバーグ、エビフライ、玉子焼き、ハムに付け合わせはナポリタン。コーヒーも付く。夜もランチメニューをオーダー可。
安喜亭
鹿沼ラーメンのスタンダード
豚そばは鹿沼が誇るご当地ラーメン。大正14年(1925)創業の老舗が、基本を守りつつ進化させてきた。ネギ、タマネギなど野菜たっぷりの餡が最大の特徴で、これに細長く切った豚バラ肉が入る。ストレートの極細麺は自家製麺で、魚介系ダシの旨味が効いた醤油味のスープによく絡む。
Café饗茶庵本店 根古屋路地
路地裏に佇む、温かく懐かしいカフェ空間
県内に個性的な5店舗を展開する日光珈琲の本店。手間をかけた料理やコーヒー、レトロな雰囲気に心が和む。男体山、女峰山、太郎山と、日光の山名が付くブレンド各660円。近くの『まちの駅 新・鹿沼宿』奥にあるエスプレッソスタンド的な支店『朱雀』(11:00~17:00LO)もぜひ。
野州麻紙(やしゅうまし)工房・野州麻炭製炭所
日本で唯一、麻紙をつくり麻文化を次代に伝える
作付面積日本一の麻栽培農家。麻の加工と麻の繊維からさまざまな加工品を作っている。国産麻の野州麻を種から育て、精麻や注連縄、麻紙、麻炭に加工して販売。古来、魔除けや縁起物として神聖視されてきただけに、神社への出荷が8割を占めるという。併設の『Cafeギャラリー納屋』では、日常で使える麻商品が買える。麻紙漉きなど各種体験教室も行っている(7日前までに要予約)。
点の記ハイキング
四等級揃い踏みの鹿沼で三角点めぐり
栃木県の一等三角点は11点、そのうち1点が鹿沼にある。鹿沼は比較的低い山が多く幸い雪が少ないので、全等級の三角点を見てみるのも一興。ちなみに二等は6点、三等は33点、四等は3点ある。高い場所では、県立自然公園で日光開山の祖である勝道上人が修行した古峰原(こぶがはら)、行場の石裂山(おざくさん)、麓に鉱山跡がある鳴蟲山(なきむしやま)、クライミングができる切り立った岩山などバラエティ豊か。先日の台風の影響で暫しお預けの場所もあるので注意のこと。
鹿沼町道路元標
9年越しの邂逅に感謝! 史料を守る街に幸あれ
町歩きで旧市街の目安になる道路元標。各市町村に設置された大正時代、現市域に6町村あったが、9年前の取材では旧鹿沼町のものだけ見つからなかった。じつは撤去後市が保管し、今年から郷土資料展示室で披露されていると判明、感激した。また昨年還暦を迎えた市庁舎は、惜しまれつつ2年後に建て替えの予定。1964年東京五輪前夜の雰囲気を味わうなら今だ。
●展示室無料。9:00~17:00、月・祝翌日休。栃木県鹿沼市睦町1956-2 ☎0289‐60‐7890
取材・文=飯田則夫
『散歩の達人』2019年12月号より