住民たちの心をひとつにする重要な祭礼

千葉県の房総半島南東部に位置するいすみ市は、海や里山に囲まれ日本の原風景を思わせるような自然豊かな場所。そんないすみ市で五穀豊穣と大漁を願って毎年秋に行われる恒例行事が「大原はだか祭り」だ。

祭りの始まりは江戸時代に遡(さかのぼ)る。大井区の瀧内神社に残る祭りの風景を描いた絵馬によると、約170年前の天保年間にはすでに祭礼のしきたりや組織ができあがっていたとされている。江戸時代、この地には娯楽が少なく、年に一度の祭りを大原の住民たちは心待ちにしていた。当時は仕事が忙しく、住民の気持ちがばらばらになりがちだったが、「何を質に入れても祭りの支度を整えた」といわれるほど、祭りは住民の心をひとつにする大切な存在であった。

荒波に負けじともみ合う「汐ふみ」は圧巻!

初日の23日(月・休)は午後から十数基の神輿が大原漁港に向かい、すべての神輿がそろって13時30分から五穀豊穣・大漁祈願祭が行われる。その後神輿は大原海水浴場へ移動し、祭りのハイライトである「汐ふみ」へ。神輿が一斉に海へと担ぎ込まれ、荒波を受けながらもみあい、高々と宙に投げ上げられる。いすみ市観光協会によると、神輿が海の中でもみあう様子はまさに「勇壮豪快、関東随一」。多くの観客がその勇ましい姿に心を揺さぶられる。

両日ともに、各神輿は17時ごろに木戸泉酒造付近へ再び参集し、大原中央商店街を祭り唄とともに練り歩きながら大原小学校へと移動する。商店街では約1㎞にわたる区間が神輿と担ぎ手、観客で埋め尽くされ、祭り一色に染まる。すべての神輿が校庭に集結すると、威勢のいい掛け声とともに力の限り駆け回る。そして夕闇が迫る頃、提灯の明かりとともに夜空に花火が打ち上げられ、「大別れ」の儀式が始まる。「若けもんども別れがつらい、会うて別れがなけりゃよい」と哀愁を帯びた声で歌いながら神輿が互いに寄り添い、別れを惜しみながら去っていく。

提灯に明かりが灯り、神輿が寄り添う「大別れ」の儀式も見どころだ。
提灯に明かりが灯り、神輿が寄り添う「大別れ」の儀式も見どころだ。

担ぎ手たちの情熱と優しさの両面を感じられる勇壮な祭りにパワーをもらえること間違いなし!

東京駅から特急で約1時間20分とアクセスもいいので、海街を散策しながら祭りの熱気に触れてみよう。

開催概要

「大原はだか祭り」

開催日:2024年9月23日(月・休)・24日(火)
会場:大原海水浴場、大原中央商店街、大原小学校ほか(千葉県いすみ市)
アクセス:JR外房線・いすみ鉄道大原駅から各会場まで徒歩

【問い合わせ先】
大原はだか祭り実行委員会事務局(いすみ市水産商工観光課内)☎0470ー62ー1243
公式HP:https://www.isumi-kankou.com/event/HadakaMatsuri.html

 

取材・文=香取麻衣子 ※画像はいすみ市提供