素朴でシンプルながら弾ける旬の香りに目を見張る『お茶とおやつ ヨウケル舎』[千歳船橋]
「季節を味わってほしくて」と、完熟具合を日々見極める店主の丸永洋子さん。なかでも人気はタルト。一見素朴ながら、ディプロマットクリーム、サワークリーム&生クリーム、果汁を吸い込むスポンジが重なり、舌の上で広がる旬の甘みにうっとり。特注の、はなやかブレンドのフルーティーさが寄り添うよう。また、カリッ、しっとりのスコーンは2種のお供を選んで。自家製の梅ジャムなら香りが口中でパッと花開く。
『お茶とおやつ ヨウケル舎』店舗詳細
商店街に潜む街なか山小屋で和む『喫茶PONY』[経堂]
壁一面に描かれた夜の湖は、まるで絵本から飛び出したよう。絵本と山を愛する西宮順平さん、小村恵美さん夫妻は「階段を上がると静かで、山に行った時と同じ感覚になれるんです。そして山小屋といえば、カレーとコーヒー」と、オレンジの皮入りドライカレーとフルーティーなケニアを看板に据えた。さらに、ニンジン好きの恵美さん手製の素朴なキャロットケーキも評判。ニンジンのやさしい甘みにもホッコリする。
『喫茶PONY』店舗詳細
手網焙煎コーヒーと楽しむ静かなひととき『クルミ堂』[経堂]
古い民家の2階の心和む店内を彩るのは、店主・小島寛子さんの夫が手作りした木造家具、息子が描いた絵、姉作の東アフリカの布雑貨。入り口脇には焼き菓子がずらり。旬味のマフィンは生地本体こそ甘さ控えめだが、甘酸っぱさ、まろやかさなど、かむたび食材の持ち味が口の中で存在感を示し、楽しい。人気の蒸し焼きプリンはむっちりなめらか。手網自家焙煎の苦味が効いたコーヒーにぴったりだ。
『クルミ堂』店舗詳細
老舗喫茶の午後に欠かせぬおやつ『珈琲屋 それいゆ』[祖師ヶ谷大蔵]
1滴1滴水が落ち、8時間かけて抽出するダッチコーヒー。「初めて飲んだ時、くっきりクリアで後から香りがふくらんでね。以来、ホットもアイスもこれ」と、店主の鈴木正一さん。焙煎が深いアイスコーヒーでゼリーも作り、ロンググラスで供する美しいパフェにもたっぷり。また、ケーキも人気。カボチャを粗く潰したパンプキンパイは上品な甘さで、タルト生地に忍ばせたゴマの香ばしさにも頬がゆるむ。
『珈琲屋 それいゆ』店舗詳細
専門店が本気を出したコーヒースイーツ『ローキートーン珈琲店』[祖師ヶ谷大蔵]
店内はコーヒーの香りが濃密。ブレンド16種、ストレートは焙煎違いを含め30種余り揃え、自家焙煎豆を求める人がひっきりなし。穴蔵感が妙に落ち着く4卓だけの狭小喫茶では夏、フレンチローストのコーヒーゼリーセットを。コーヒーとWで味わっても胃もたれはなく、クリアなビターを満喫。秋はコーヒー粉を散らしたカフェオレプリン、エスプレッソが染みたティラミスでコーヒーの表情を楽しんで。
『ローキートーン珈琲店』店舗詳細
スイーツや音楽に心奪われる甘美な時間『F*GICCO(エフ ジッコ)』[成城学園前]
ショーケースを埋めるのは、見目麗しきスイーツ約10種。人気のバナナカスタードパイはバナナが想像以上に芳醇で、クリームのなめらかさ、みずみずしさにも心躍る。そこでひと口、コーヒーを。マチュピチュで手摘みした無農薬生豆を自宅で焙煎し、クリアなフルーティーさだ。店主の藤川あおいさんはかつて暮らしたクロアチアの料理を出すことも。ライブも催し、多様なカルチャーに陶酔する。
『F*GICCO』店舗詳細
取材・文=林 さゆり 撮影=井原淳一
『散歩の達人』2024年9月号より