あなご屋 銀座ひらい
骨酒の穴子にも職人技が冴えわたる
店主の平井良和さんは、寿司屋修業時代に穴子に魅せられ、穴子専門店『日本橋玉ゐ』を仲間と興した人。3年前、銀座の小路で独立した店は、アイデア満載のめくるめく穴子料理で、誰もが舌を巻く。そのなかに、穴子の骨酒が。「そのまま骨酒にしても味が強く出ないんですよね」と、骨付きのまま開いた身を、昆布出汁に漬けてから一夜干しに。それをていねいに炙り、1合につき半身を熱々の燗酒に入れる。すすってみると、上品な旨味がぐいぐいと押し上がり、継酒すれば、酒の色が黄味がかって、味わいもさらに深まる。熱燗のなかでふくよかにふくらんだ身は、しゃぶりつくとふわっふわ。きれいに味わい尽くすべし。
『あなご屋 銀座ひらい』店舗詳細
串焼き 小川の魚
丸々一尾が酒に差さる贅沢さよ
コップから突き出した姿にまず愕然。ひと口飲むと、香ばしさが鼻腔を駆け巡り、濃厚さにため息が漏れる。店主の小川勇一さんは養魚場2代目。自ら育てた岩魚を、エラと内臓だけ取り除き、3日間炭の遠火で干し上げ、注文後に炙る。最初はカチカチに固い身が、継酒するたびにほどけ、最後は骨もろとも胃の腑へ。人気店のうなぎの味を毎日食べたくてこの店を始めたと笑うが、イワナ、ヤマメの稀有な味も揃い、川魚好きは乱舞必至。
『串焼き 小川の魚』店舗詳細
もみぢ
酒場の価格破壊で出合う驚愕の味
お品書きにはフグやスッポンの文字が躍る。しかも1品200円前後! 今はなき赤坂の料亭で腕を磨いた店主の小林健二さんは、「駅から遠いから安くしちゃった」と照れる。フグといえばヒレ酒かと思いきや、「骨のほうが、出汁がよく出るから」と骨酒で。使うは、豊洲仕入れのショウサイフグで、刺し身用にさばいてから骨をじっくり炙る。2尾入りの骨酒はパック酒ながら、ヒレよりも野趣に富み、濃厚。骨を追加すれば昇天確実だ。
『もみぢ』店舗詳細
構成=フラップネクスト 取材・文=佐藤さゆり(teamまめ) 撮影=丸毛 透
『散歩の達人』2016年2月号より