細やかな心づくしで生まれたそば『一東菴』[東十条]

おまかせ酒肴2200円、地酒1合669円~は純米が中心。
おまかせ酒肴2200円、地酒1合669円~は純米が中心。

店主の吉川邦雄さんは茨城県の畑でソバを育て、直に付き合う農家からも玄ソバを手に入れる。細かに粒を仕分け、剝きながら味見する理由は「粒の大きさで味が異なるので、特性を見極めて粒を組み合わせるんです」。出来具合で碾き方、加水、切り方も変え、「楽しみながらそばを表現したい」と笑う。石臼で手碾きしたそばをすすれば風味がすがすがしく鼻を抜け、塩でいただけば旨味がぐんと増す。笠間焼の器や丹精込めた植栽も粋だ。

約10食限定の手碾きせいろ1350円。
約10食限定の手碾きせいろ1350円。
本日の三種盛りのソバ産地を案内。
本日の三種盛りのソバ産地を案内。
農家の手伝いにも行く吉川さん。
農家の手伝いにも行く吉川さん。
昔の製粉機を置く。夜は予約が確実。
昔の製粉機を置く。夜は予約が確実。

『一東菴』店舗詳細

住所:東京都北区東十条2-16-10/営業時間:11:45~14:00LO(売り切れ次第終了)・18:00~20:00LO(木~土営業)/定休日:日・月/アクセス:JR京浜東北線東十条駅から徒歩1分

ふわっとろ~の後ふくらむ香味に仰天『川辰』[東十条]

コシヒカリと味わううな重は松2600円~。写真は特上3100円。肝吸い300円、お持ち帰りも多い。
コシヒカリと味わううな重は松2600円~。写真は特上3100円。肝吸い300円、お持ち帰りも多い。

通りにこぼれる芳しい香りの元は、1969年より営む名店だ。ウナギは問屋から毎朝届く国産で、注文を受けてから蒸して焼く。その間、肝を生姜醤油で煮た数量限定の肝茹でを肴に一杯、もいい。さて、真打ちのうな重は、注ぎ足し続けたタレがすっきり味。ウナギの骨と頭でとった出汁に、醤油とみりんが加えられ、うなぎ本来の風味をぐっと引き出す立役者だ。頬張れば、とろりととろけ、旨味がどんどんふくらんでいく。

朝届いたウナギを捌(さば)き、素焼き。注文後に蒸し、備長炭で焼き上げる。
朝届いたウナギを捌(さば)き、素焼き。注文後に蒸し、備長炭で焼き上げる。
家族2代で営む。
家族2代で営む。

『川辰』店舗詳細

住所:東京都北区東十条4-4-19/営業時間:11:30~13:30LO・16:00~19:30LO/定休日:月・火/アクセス:JR京浜東北線東十条駅から徒歩2分

地元の人々が愛すエビ自慢のそば屋『㐂久家』[王子]

かき揚げ天もり1050円はワサビ代わりに大根おろしが添えられる。
かき揚げ天もり1050円はワサビ代わりに大根おろしが添えられる。

1955年創業以来、昼時を過ぎても客がひっきりなし。店員さんがくるくると客の間を往来しての目配り気配りにも感服だ。初めて来店するなら、かき揚げ天もりを頼むべし。「うちはエビが自慢」と、2代目店主の境修一さんが胸を張るかき揚げは、小エビのみ、という混じりっけなしの贅沢さ。ザクザクの衣からプリップリのエビが香味を放つ。出汁をおごったつゆにどぼんと付け、更科の手打ちそばを手繰(たぐ)れば、お腹(なか)も心も満足必至。

15cmはある巨大エビの天丼1600円も見事。エビの香味がたまらない。
15cmはある巨大エビの天丼1600円も見事。エビの香味がたまらない。
2代目ご夫妻。
2代目ご夫妻。
店内ギャラリーでは月替わりで、初代撮影のソバ畑が季節を伝える。
店内ギャラリーでは月替わりで、初代撮影のソバ畑が季節を伝える。

『㐂久家』店舗詳細

住所:東京都北区王子本町1-15-20/営業時間:11:30~19:00/定休日:土、第1・3金/アクセス:JR京浜東北線 ・地下鉄南北線王子駅から徒歩5分

味わい深く懐に優しい街の洋食『吉良亭』[十条]

牛肉のはちみつ赤ワインソース煮込み1000円は、ランチ時スープ、ライス、コーヒー付き1200円。
牛肉のはちみつ赤ワインソース煮込み1000円は、ランチ時スープ、ライス、コーヒー付き1200円。

シェフの吉良陸夫さんは、ホテルでフレンチの腕を磨き、独立。「うちは洋食堂だね」と豪快に笑い、ソースに醤油をたらして、ご飯にも酒にも合う日本の洋食に仕立て上げる。料理は季節ごとに変わるが、一つだけ変わらぬ名物がある。それが、牛肉のはちみつ赤ワインソース煮込み。噛むと、ほろりと崩れる肩ロースがまとうのは、濃厚なソース。月に一度、これを楽しみに訪れる妙齢のご婦人たちもいて、「これだけははずせません」。

ムキエビのアンチョビソース焼き550円とグラスワイン400円。
ムキエビのアンチョビソース焼き550円とグラスワイン400円。
人懐っこい吉良さん。
人懐っこい吉良さん。

『吉良亭』店舗詳細

住所:東京都北区十条仲原2-8-12/営業時間:12:00~14:00(月休)・18:00~21:30LO(第1・3水休)/定休日:不定/アクセス:JR埼京線十条駅から徒歩9分

気軽にご馳走、地域密着イタリアン『Osteria Ta~mia』[王子]

日替わりステーキ。写真は短角牛のサーロイン、ハマグリと松茸のリゾット、ワインはグラス350円~、ボトル1800円~。
日替わりステーキ。写真は短角牛のサーロイン、ハマグリと松茸のリゾット、ワインはグラス350円~、ボトル1800円~。

生まれも育ちも、もちろん出会いも王子の、田澤貴宣さん光子さん夫妻が迎えてくれる。週に何度も通う人がいるパスタランチ、とりこにさせるのは野菜など具の多さだ。夜の日替わり料理では、土地柄必須のボリュームと安さに応えつつ、ヴェネト州で鍛えた腕を光らせる。香りのいい短角牛は素焼きでジューシーに、ハマグリのリゾットは芳醇なハマグリの出汁だけで。素材にとことん寄り添うやさしさが持ち味だ。

ワイン好きの夫妻。
ワイン好きの夫妻。
気取らぬ店内。
気取らぬ店内。

『Osteria Ta~mia』店舗詳細

住所:東京都北区豊島2-6-4ミマスビル1F/営業時間:11:30~14:30LO・17:00~22:00LO/定休日:水/アクセス:JR京浜東北線 ・地下鉄南北線王子駅から徒歩10分

取材・文=佐藤さゆり、松井一恵 (teamまめ)、鈴木さや香 撮影=高野尚人、山出高士、オカダタカオ、鈴木愛子