2020年3月 JR原宿駅 駅舎
原宿・表参道の移り変わりを見てきた歴史の証人
大正13年(1924)に建てられ、100年近く原宿のシンボルだった原宿駅の旧駅舎が、3月20日、その役目を終えた。東京都内最古の木造建築の駅舎で、明治神宮のためだけの駅だった時代から、原宿・表参道の移り変わりを見てきた歴史の証人でもある。
ヨーロッパ風の趣あるデザインは、おしゃれな街・原宿という異世界に導いてくれるゲートだった。耐火の問題と、オリンピックに合わせてのクローズだったが、翌21日からは新駅舎と新ホームの運用が始まった。1年たった現在、駅舎の取り壊しが始まったが、これだけの歴史的建造物を保存も移転もせず取り壊すという事は、歴史や伝統を重んじる欧米では考えられず、我が国の文化遺産への無関心さに憤りすら覚える。
2020年3月「東急百貨店東横店」
渋谷のデパートといえばここだった
ハチ公と並んで渋谷駅のシンボルだった「東急百貨店東横店」が、渋谷の再開発に伴い、3月31日をもって閉店した。昭和9年(1934)渋谷駅に直結するターミナルデパートとしてオープンしてから86年で幕を閉じたことになる。まだ西武も東急本店もパルコも109もヒカリエも無かった時代、渋谷のデパートといえば「東横」であり、東横のれん街で買い物し、屋上の遊園地で遊んだものだ。3階は地下鉄銀座線の改札とホーム、またかつては2階に渋谷と二子玉川を結んだ路面電車「玉電」の乗り場もあった。上階には「東横劇場」もあり、子供の頃、木馬座のケロヨンの舞台を観たことを思い出す。屋上には、ロープウェイ「ひばり号」があったことも有名である。
JRの乗降も便利で、銀座線の降り口からはそのままデパートに入れた。地下にあった食料品売り場は、「東急フードショー」は渋谷マークシティに、「東横のれん街」は渋谷ヒカリエに移って、それぞれ営業を続けている。現在は取り壊しに入り、高層ビル「渋谷スクランブルスクエア」第二期棟に生まれ変わるが、いよいよハチ公広場も含めた再開発計画も最終段階に入るようだ。
2020年5月「水月ホテル鴎外荘」
森鴎外が小説『舞姫』を執筆した旧居が残る
上野動物園の裏手にひっそりとたたずんでいた「水月ホテル鴎外荘」がコロナの影響もあって5月いっぱいで一旦閉館した。昭和18年(1943)のオープンで、敷地内には森鴎外の旧居がそのまま残っていることで有名である。この旧居は築130年の木造建築で、鴎外が新婚生活を過ごし、小説『舞姫』を執筆した歴史的な建造物である。また館内には、都内第一号の天然温泉もあり、小ぶりながら檜造りの雰囲気ある風呂として人気もあった。昔ここでクラス会をやったこともあり、宴会や会合で広く利用されてきた。閉館後、クラウドファンディングを通じて集まった寄付で、営業再開にむけて準備中である。緊急事態宣言もあって、再開が遅れているようだが、明治の東京の雰囲気を残す数少ない場所だけに全面再開を期待したい。
2020年7月 JR中央総武線飯田橋駅
旧牛込駅の場所に戻ってきた!
JR飯田橋駅の旧ホームが7月11日いっぱいでその役目を終え、翌12日からは200メートルほど新宿寄りに移動した。もともときついカーブに作られたホームで、列車とホームの間に30センチ以上のすき間があり、転落事故も起きていた。明治時代に甲武鉄道(のちの中央線)の始発駅だった牛込駅と隣の飯田町駅が、昭和3年(1928)に統合して飯田橋駅となり、以来92年間同じ場所で使われてきたホームだった。今回、以前の牛込駅の場所に移ったことで、92年ぶりに牛込駅の場所に戻ったことになる。
飯田橋は神楽坂も近いほか、大学や病院も多く、角川映画の試写室もあってよく利用していただけに不思議な気分である。