体の外側と内側から健康をサポートしたい
東急世田谷線の世田谷駅から駒沢方面に歩くこと7分。駒沢公園通りに面する場所で、『薬膳カフェ 日月』は営業を行う。春先にはたくさんの花が咲き誇るという開放的なテラス席を通り、店内に足を踏み入れる。もともとは、2階で営業を行う『整體院 快』の待合室として利用していた場所だったのだそう。整体院では、お客さんのリクエストを受けて犬の整体も行っていることから、こちらのカフェも犬を連れての利用が可能となっている。タイミングによっては、看板犬のウィルちゃんとも出合えるという。
院長兼カフェオーナーの小澤明子さんは、長年整体師として多くの人の体や健康に向き合う中、「体の外側からだけでなく、内側からも健康にアプローチして、患者さんの体全体のバランスを整えることをサポートしたい」と考えるようになったと話す。そのために、小澤さんは一から中医学を学び、その基礎となる「陰」と「陽」の考え方に基づいた薬膳メニューを考案している。
例えば、手作りの蒸しパン。黒い方の月は、体の冷えやエネルギー不足を感じた時に摂るといいとされる、陽の食材(黒ゴマや松の身など)を多く使用している。一方、白い方の日は、体に熱がこもっていたり、リラックスしたいと感じたりする時に摂るといいとされる、陰の食材(クルミやナツメ)を多く使用して、それぞれ「陰」と「陽」のバランスを微妙に変えているという。しかし、いずれの蒸しパンも、その反対の要素を持った食材もワンポイントで加えているため、一つで「陰」と「陽」両方の要素を補うことができるのだ。
このように、“熱と冷”あるいは“体力の有無”など、自身の体の状態から選べるメニューがあるほか、季節に合わせて陰陽バランスを考えたシーズナルのメニューも登場する。さらに、犬の整体を通して、彼らにも最期まで美味しいものを食べてもらいたいと、健康な間はもちろん、臓器が弱っても食べることができる犬用の薬膳フードを開発し、販売している。
気になる体の諸症状から選べる花茶
その陰陽バランスを考えたメニューは、ドリンクにも。『薬膳カフェ 日月』が独自で仕入れる花茶(はなちゃ)も、薬膳はもちろんのこと、漢方の考え方も取り入れながらブレンドされている。そもそも花茶とは、花びらや茎、葉などを乾燥させ、煎じて飲むハーブティーの一種。韓国の文化で育まれてきた飲み方で、韓国を訪れた際に偶然出合ったという。そして「花茶が漢方薬でもおなじみの花を使用し、嗜好品としてだけでなく、体調を整えるものとしても飲まれていることを知り、日本でも広めたい」と考えた小澤さんは、さまざまな苦労の末、素材となる花の栽培から加工までを一貫して行う生産者さんと巡り合えたという。
その農家さんが作る花茶は、韓国や日本の厳しい基準を満たした安心安全さが売り。このカフェでは40種ほどの花から作られた花茶を仕入れ、シングルとブレンド合わせて50種近い花茶のメニューを用意している。その中には、アレルギーや乾燥など、季節ごとの悩みに合わせたシーズナルブレンドもある。
その中から今回いただいたのは、不調が気になりやすい季節の変わり目にぴったりなブレンドが施された、通年メニュー。血の巡りを調整する山茱萸(さんしゅゆ)茶や、体の過剰反応を抑えるイエローコスモス茶のほか、パンジー茶や山桜茶で構成される。
お湯を入れる前の状態の花はどれも色鮮やかで、無着色・保存料不使用とは思えないほど。そして、お湯を入れると花々の色素が溶け出し、一気に華やかな気分になる。味わいも西洋のハーブティーに比べるとクセがなく、自然そのものの風味を感じられる。選ぶ花によって、色合いや体への作用も異なるため、訪れる度に新しい発見があるはずだ。
小澤さんをはじめとするスタッフの温かい人柄や、お客さん(犬も)の健康を考えた体に優しいメニューの数々。このカフェを訪れれば、自然と心も体も満たされるような感覚を味わえるはずだ。親しい友人の家にお邪魔するような気持ちで、気軽に訪れてみてほしい。
『薬膳カフェ 日月』店舗詳細
取材・文・撮影=柿崎真英