涼しい街・勝浦は「猛暑日」がない!都心と比べると……

東京駅から特急に乗って約1時間半で着く勝浦は、海と山が織りなすリアス式海岸の絶景が美しく、新鮮な魚介類がおいしい街です。全国有数の水揚げ量を誇るカツオのほか、イセエビやキンメダイ、マグロなど海の幸が豊富です。辛さと旨味が人気の「勝浦タンタンメン」も漁港の街ならではのグルメで、漁師や海女さんが海で冷えた体を温めるための料理として定着しました。

青々とした夏空が広がる勝浦。
青々とした夏空が広がる勝浦。
高台からは漁船が見える。新鮮な海の幸も人気。
高台からは漁船が見える。新鮮な海の幸も人気。

近年、注目を集めている勝浦ですが、その理由は夏の気温です。勝浦では過去100年を超える観測の歴史の中、35℃以上の猛暑日を一度も観測したことがないのです。2024年8月9日時点での勝浦の今季の最高気温は、7月30日に観測した34.2℃です。この日は同じ東京都心では36.1℃まで上がって体温を超えるような暑さとなり、前日には栃木県・佐野で国内トップクラスの41℃を記録していました。これだけの酷暑の中でも、勝浦はギリギリ35℃を超えなかったのです。

私が訪ねた日も午後3時には、東京都心で33.6℃、埼玉県など関東の内陸部では36℃を超える体温並みの暑さでしたが、勝浦の気温は28.1℃と都心と比べて約5℃もの差がありました。

8月3日午後3時の気温。猛暑の内陸部とは大きな差があった(画像=気象庁)。
8月3日午後3時の気温。猛暑の内陸部とは大きな差があった(画像=気象庁)。

さて、気温差だけでなく、実際の体感はどうなのか。勝浦駅に降り立った瞬間の感想はというと………

「確かにちょっと涼しいかもしれない……いや、でもそう感じたいだけなのかも!?」

半信半疑のまま海沿いへと歩いていくと、目の前に真っ青な海と空が広がるとともに、疑いは晴れました。海に近付くにつれて、とても心地よい涼しい風が体を吹き抜けていったのです。

日差しは強いが、心地よい風に癒やされる。
日差しは強いが、心地よい風に癒やされる。

日陰に入って風を受けると、涼しさはさらに増します。ジリジリと照り付ける日差しの強さは都心と大きな差はないものの、この涼風こそが「避暑地として話題になる理由」なのだと実感しました。

なぜ勝浦は涼しいの?ヒミツは「地形」にあり!

では、天然のクーラーのように涼しい風はなぜ吹くのでしょうか? そのヒミツは地形にあります。勝浦沿岸の海は水深が深いため、海の底まで太陽の光が届きにくく水温が低いのです。

海面の水は太陽で暖められますが、風が吹けば押し流されていき、海底の冷たい水が湧き上がってきます。この海水によって冷やされた風が陸地まで吹き付けて、涼しさを体感できるのです。

太平洋の海はやや波が高く、風も強い。
太平洋の海はやや波が高く、風も強い。
景勝地の鵜原理想郷・手弱女平(たおやめだいら)では鐘の音が海岸に響き渡る。
景勝地の鵜原理想郷・手弱女平(たおやめだいら)では鐘の音が海岸に響き渡る。
涼しいせいか(?)日陰では8月なのに紫陽花を発見!
涼しいせいか(?)日陰では8月なのに紫陽花を発見!

涼しいだけじゃない!人気の理由は他にも

勝浦はいま、過ごしやすい気候の中で暮らせると移住先としても人気を集めています。実は、勝浦の魅力は夏に涼しいことだけではなく、冬は温暖で極端な寒さはないことにもあります。

平年の最低気温が0℃未満の「冬日」の日数は、千葉県市原市の牛久など内陸部では60日を超えているのに対して、勝浦ではたったの6日しかありません。冬は千葉県の沖合を流れる黒潮のお陰で気温が下がりにくいため比較的暖かく、年間を通して過ごしやすい気候なのです。急激な冷え込みも少ないため、勝浦など南房総では都心部より一足早く2月頃から花々が見ごろを迎える場所もあります。

立秋を過ぎてもまだまだ続く猛暑。勝浦の涼しい風と美しい海を満喫しにお散歩へ出かけてみませんか?

 

右:最低気温0℃未満の日数の平年値(画像=銚子地方気象台)。左:最高気温30℃以上の日数の平年値。
右:最低気温0℃未満の日数の平年値(画像=銚子地方気象台)。左:最高気温30℃以上の日数の平年値。