動いている三角柱看板の特徴
その通行人である私が、この三角柱のすべての面に書かれている内容を把握できているかというと、あまり自信がない。店の前を通り過ぎる時には大抵一つの面しか見ていないからだ。
しかしよくよく見てみると、それぞれの面のデザインや内容はなかなか凝っている。今回はこうした三角柱看板に注目してみたい。
まず、動いている三角柱看板を立ち止まって観察してみる。酒田(山形県)の果物店店頭で回転していた三角柱看板では、「おいしさと真心お届け フルーツ」「慶弔盛篭ご進物お見舞 フルーツギフト」「地方発送承ります」と、フルーツギフトの宣伝に至る一連の流れが出来上がっていた。
一方で、館林(群馬県)の薬局のように3つの面それぞれが独立しており、特に関連性を持たないものもある。
回転する三角柱看板でスピード感を表現?
この三角柱看板を設置している店の傾向を見てみると、圧倒的に薬局と
クリーニング店が多い。
薬局はさまざまな薬を宣伝する必要があると推測できるので、三角柱看板導入もうなずけるが、クリーニング店の場合はどうだろう。祖師ヶ谷大蔵のクリーニング店の三角柱看板には「走れ!走れ!スピードクリーニング」という文字があしらわれていた。
クリーニングのスピード感を表現するには、回転する三角柱看板がうってつけなのかも知れない。
見えない面に何が書かれているのか。気になって夜も眠れない
ところが、三角柱看板が動いていないことがある。「ことがある」というより、実は動いていないものを見る方が多い。壊れてしまったのか、あるいは電気代の節約なのか。平面の看板であれば、反対側に回れば書かれている内容が把握できる。しかし三角柱の場合、動いていなければどうしても見ることができない1面というのが発生してしまうのだ。
村上(新潟県)で見かけた薬局の三角柱看板は、恐らく壊れているものと見え、壁に寄り掛かるように立っていた。
「ぢ・肥満・神経痛・糖尿・体質改善・ぜんそく」「慢性病でお悩みの方!漢方薬ご相談下さい…」と、あと1面には何が書かれているのだろうか。
三次(広島県)の時計店では、閉まっている店の隅にピッタリ沿うように三角柱看板が設置されていた。
「ご結婚ご婚約に!ダイヤモンド」という華々しい看板の、残り2面には何が書かれているのだろう。気になって夜も眠れない。
動いていなくてもいいから、せめて3面全てが見えるように設置しておいてほしい……!と心の中で思いながら、私は今日も三角柱看板の脇を通り過ぎていく。
イラスト・文・写真=オギリマサホ