DASH・チサコ(だっしゅ・ちさこ)
1988年8月24日、宮城県仙台市生まれ。2006年7月9日、センダイガールズプロレスリング旗揚げ戦にて、対ダイナマイト・関西戦でデビュー。2015年、妹・仙台幸子とのタッグ「十文字姉妹」で4冠を獲得。2017年12月17日、PURE-J認定無差別級王座を獲得。2019年3月21日、DDTプロレスリングに参戦し、女性初のKO-D6人タッグ王者となる(パートナーは里村明衣子&橋本千紘)。松本浩代とのタッグ「令和アルテマパワーズ」でも活躍中。151cm、56kg。X:@dashchisako
正真正銘“酎ハイ”の元祖!
生まれも育ちも仙台ですが、スカイツリーが大好き! 東京で試合があるときは、スカイツリーが見えるホテルに泊まって、お酒を飲みながら何時間でも眺めています。知人にそんな話をしたら、「スカイツリーが見えるいい酒場があるよ」と教えてもらって行くようになったのが、曳舟にある『三祐酒場 八広店』です。
京成曳舟駅近くにあった名酒場「三祐酒場 本店」からのれん分けを許された数少ないお店。本店は既に閉店しているため、現在ある『三祐酒場』はここだけなんですよ~。
プロレスでは激しい試合をしているのですが、普段はすごくビビり。
老舗のお店が好きなくせに、怖くてなかなか一人では入れないんです……!『三祐酒場』も店構えは強面で、見るからに老舗という感じ……無理。でも、知人に連れられて入ってみれば、ものすごく居心地がいい! 大将もスタッフさんもお客さんも、本当にフレンドリーで温かいんです。今ではついつい5~6時間、長居してしまいます(笑)。
「元祖焼酎ハイボール」のお店として有名で、私もここでは焼酎ハイボールをずっと飲んでいます。戦後、本店の長子である大将の伯父さんがアメリカ進駐軍のバーで飲んだ「ウイスキーハイボール」の味に感銘を受けて、考案したそうです。当時は蒸留の技術も良くなかったので、焼酎がすごく臭かった。それを飲みやすくするために、ウイスキーハイボールのように炭酸で割ってみたのが始まりだとか。大将の伯父さんが考案しなければ、この世に酎ハイは存在しなかったのかもしれないと考えると、すごいですよね!
強炭酸で、喉にガツンときます。秘伝のエキスが入っていて、レシピを知っているのは大将を含めて4人だけ。大将の奥様も知らないそうです。ほのかに甘さがあって、でも全然甘ったるくない。アテを選ばないのもすごいです! YABAI!(私の決めゼリフです。覚えてね♪) 日本酒だったら魚とか、赤ワインだったら肉とか、お酒にはそれぞれ合う料理がありますよね⁉ でも、ここの焼酎ハイボールは本当にどんな料理にも合うんです! 大将には「うちのボールはチサコちゃんのプロレスと似ている。どんな相手でもちゃんと試合を組み立てられる」と言っていただけて、うれしかったです!
絶対に食べてほしいのが、もつ煮込み。ここのもつ煮込みは本当にYABAI! 他のお店で食べると「ちょっと違うな」と思っちゃうほどです。鮮度のいい生肉を使っていて、味噌は本店の創業から同じ味噌を使っているそう。こんにゃくは白と黒の2種類。味が染みていて、本当においしい! 染みっ染みで、焼酎ハイボールと相性抜群です。
YABAI!鉄板もんじゃ
もう一つYABAI!つまみが、鉄板もんじゃ。仙台はもんじゃを食べる文化がないので、昔はあんまり好きじゃなかったんです。「このベトベトのやつ、なんで食べるんだろう?」と思ってました(笑)。でもここのもんじゃはすごくおいしい! 味が濃いめで、お酒が進みます。トロトロのもんじゃと、ベビースターラーメンのカリカリが絶妙。かつお節と青のりをかけるのも珍しいみたいです。
日替わりでメニューが替わるので、大将にオススメされたものを食べることも多いです。大将は外資系のホテルで料理人をしていたので、厨房では隣でフランス人がフランス料理を作ったり、イタリア人がイタリア料理を作ったりという環境だったそうです。だから大将の作る料理は和洋折衷、なんでもおいしいんです♪
今回初めて飲んだ「白ハイボール」もすごくおいしかったです。いわゆるレモンハイなのですが、生絞りレモン入りでレモンの味がガツンと来ます。ほんとYABAI! え、しつこい? 酔ってきたのかな……笑。
焼酎ハイボールが黄色いのに対して、レモンハイは白いから、お客さんが「白いのちょうだい」「黄色いのちょうだい」と言い始めたことから、白ハイボールという名前になったとか。大将のお父さまが作ったのが、おそらくレモンハイの元祖なんだそうです!
ここは東京の実家
2022年に初めて『三祐酒場』に来たとき、ちょうどけがで欠場していました。葛西純さんという憧れのレスラーと念願の対戦をする直前にけがをしてしまい、精神的にかなり落ち込みました……。病院で「手術」と言われたときには自然と涙が出てきました。悔しかったです。
そんなときに『三祐酒場』に来て、大将には本当に支えてもらいました。大将はプラス思考で、わたしがウジウジ悩んでいるときも「大丈夫だよ!」といつも励ましてくれます。「もっと頼れ。お父さんだと思ってくれていいから」って……。本当にありがたい存在です。最近、東京に引っ越してきたのですが、引っ越しを決めたのは「三祐酒場に来たい」という気持ちも何割かあったくらいです。毎日通えちゃいますからね♪
大将はプロレスが好きなので、テレビで昔のプロレスの映像を流してもらいながら勉強することもあります。この間は、谷津嘉章さん、天龍源一郎さん、ジャンボ鶴田さんのタッグマッチを観ました。谷津さんの魅力に目覚めたのは、『三祐酒場』のお陰です!
お客さんもすごくいい人たちばっかり! 老舗のお店の常連さんは話しかけづらいんですが、ここはみなさん本当にフレンドリーです。隣になった人に「よく来るんですか?」「このお刺し身、なんですか?」と聞いているうちに、仲良くなって一緒に遅くまで飲んで泥酔することも……(ごめんなさい)。「プロレスやってるんです」と言うと、試合を観に来てくださることもあって、本当にうれしいです。お客さんの半分くらいは女性なので、女性一人でも気軽に飲みに行ける雰囲気ですよ♪
プロレスラーとして、キャリア18年。いまが一番楽しいです。最近、お客さんがなぜ観に来てくれているのかをすごく考えます(急にマジメ)。一試合、一試合、自分にとってプラスにしていかないと、やっている意味がないとも思います。試合を“こなす”という感覚ではなく、自分のためにプラスにしていくという段階に来ています。
2024年4月14日に、後楽園ホール大会が控えています。自分らしく闘って、なにかを伝えられたらなと思います。試合だけじゃなくてマイクパフォーマンスでも、なにか一つ「これが泣けた」「これが忘れられない」というものを残したい……! 観てくれた人に「明日も頑張ろう」と思ってもらえるような試合をしたいんです。
私のように「仕事のときは強気だけど、普段はビビり」とか、だれでもスイッチがあると思います。『三祐酒場』ではそういうスイッチを外して、大将に元気をもらえる。みなさんにも『三祐酒場』でおいしいお酒を飲んで、おいしい料理を食べて、元気になってもらいたいです!
構成・撮影=尾崎ムギ子