毎月訪れたくなる月替わりメニュー

店内の壁に掲示されている地図。
店内の壁に掲示されている地図。

店内に入ると、壁に貼られたイタリアの地図が目に入った。各地方に番号が振られ、さまざまな種類のピザの写真も添えられている。

「月替わりで順番に、イタリア各地のものを作っているんですよ」と話すのは、この店のシェフを務める栗山隼さん。都内の複数のイタリア料理店で修業を積み、別々の地域で修業したシェフに師事したことで、各地の特徴を心得てメニューに活かしている。「今月のおすすめ」として毎月ひとつの地域がピックアップされ、その地域のメニューが並ぶのだ。

「ワインも、料理に合うものを赤と白で3種類ずつ、毎月選んでいます。1年を通してイタリア全土を味わえるようになっているんです」

何度来ても飽きないばかりか、毎月訪れてイタリア全土の味を制覇したくなる……そんな工夫が施されたメニューだ。

店内はカウンター席が6席、テーブル席が16席ほど。
店内はカウンター席が6席、テーブル席が16席ほど。

2015年のオープン当初は古民家を改装して営業していたこともあり、「お茶の間」が店名の由来なのだとか。建物の老朽化のため2019年に現在の場所に移ったが、過ごしやすくアットホームな雰囲気は健在だ。

ひと工夫が肝、シラスのピザ

本日いただくのは、平日限定のランチセット。メインはパスタ、ピザ、石焼ドリアから選ぶことができ、そこに特製サラダとスープ、ドリンクがつく。今回は、ナポリのピザであるチチニエッリをセレクトした。

ランチセット1380円(写真のチチニエッリは+300円)。
ランチセット1380円(写真のチチニエッリは+300円)。

チチニエッリは「小魚」という意味で、釜揚げシラスを使ったピザ。現地ではトマトソースが一般的だが、栗山さんのアレンジで生のりを使っているのが最大の特徴だ。「ピザに生のり?」と不思議に思うかもしれないが、これがまた絶妙に合う。シーフードならではの香りとうまみがくせになり、モッツァレラチーズとの相性も抜群。凝っているけれどシンプルで、ぺろりと平らげてしまう食べやすさだ。

トマトの甘みもアクセント。
トマトの甘みもアクセント。

斬新ながら突飛ではない、なじみ深さと新しさの絶妙なバランス。その秘訣はなんなのだろう。25年ほどイタリアンと向き合ってきた栗山さんは「クラシックなイタリアンをベースに、現代風に再構築するスタイル」だと話す。「基本の材料は変えずにどうつくりかえるか、どう見せ方を変えるかを考えていますね」。

人気のピザのほか、肉料理も豊富

常連さんは大抵その月のおすすめを注文するというが、グランドメニューも数の多さとバラエティに驚かされる。自慢のピザは18種類、「基本は乾麺ですが季節ものだと手打ちも多いです」というパスタも10種類近く。得意だというお肉料理は牛、豚、鴨まで勢揃い、特に1kgのビーフTボーンステーキは「イタリアといえば」な一品。また、ワインは約60種類が揃い、それぞれ細かく特徴が記されていて選ぶのも楽しそうだ。

「トリュフなど、ものによってイタリアの食材も使いますが、国産で良質なものも多いので。おいしい時期においしいものを提供できるように、と考えています」

取材に伺ったのは10月ごろ。これからの季節はジビエ料理も楽しみだ。

不忍通りと言問通りの交差点から少し入ったところ、緑の装飾テントが目印。
不忍通りと言問通りの交差点から少し入ったところ、緑の装飾テントが目印。

メニューもオープン以来少しずつ進化しており、お客さんの声を反映したり、同業者と意見を交換してメニューに活かしたりすることもあるという。

「特に近所の飲食店同士は、ライバルというよりも一緒に切磋琢磨できる関係。これは、根津ならではの雰囲気だと思います。だからいい店が多いのかもしれませんね」

飲食店が切磋琢磨し合う街で、シェフの経験と工夫が光るイタリアン。一度試せば、通いたくなってしまうこと間違いなしだ。

『Chama Chama』店舗詳細

住所:東京都台東区谷中1-3-7/営業時間:11:30~15:00・16:30~23:00/定休日:水/アクセス:地下鉄千代田線根津駅から徒歩3分

取材・文・撮影=中村こより