◆散歩コース◆

体力度:★★☆
難易度:★☆☆

  • 登山シーズン 3月~5月、9月~12月
  • 最高地点 1252m(大山)
  • 登山開始地点 761m(ヤビツ峠バス停)
  • 歩行時間 4時間10分
  • 歩行距離 約8km
スタート
ヤビツ峠バス停
峠のバス停からイタツミ尾根を登って行くと、やがて右手の展望がときおり開け、相模湾が浮かんでくる。

25丁目の分岐
表参道と合流する手前に富士山の絶好の展望所あり。表参道を上がると銅製の鳥居を越えて山頂。

大山
山頂にはトイレ、茶屋あり。東側の見晴台に下りるルートもあるが、同じ道を下り、富士見台を過ぎて分岐へ。

16丁目の分岐(蓑毛越分岐)
分岐から直進すれば西の峠から、かごや道を通り下社へ。左折して表参道を下って行く。下りが少々長い。

阿夫利神社下社
神社脇の急な石段を下って下社へ。お参りしたらケーブルカーを使わずに大山寺へ。石段がかなり急。

大山寺
大山寺まで下りれば、緩い傾斜の下りになる。男坂の道と合流する追分社からこま参道を歩いてバス停へ。

ゴール
あたご滝バス停

アクセス:
[行き]新宿駅から小田急小田原線で秦野駅へ。秦野駅から神奈川中央交通バスでヤビツ峠へ。約2時間15分。
[帰り]あたご駅バス停から神奈川中央交通バスで伊勢原駅北口へ。伊勢原駅から小田急小田原線で新宿駅へ。約1時間30分。

ヤビツ峠行きバスは平日は9時台の1便。土休日は8時台と10時台があるが便数が少ないので要注意だ。ちなみに蓑毛までなら便数が多いが、ヤビツ峠まで歩くと約1時間20分くらい。

江戸時代の江戸の人口が100万人の頃、夏だけで20万人もの人がここに訪れたという。その割合でいけば、今なら200万の人が夏だけで登るという驚愕の数字になる。

もちろん大山詣に信仰心だけでやってきたわけではないだろう。当時は自由に旅もできない時代。信仰登山と称して、大山には登るけれど、帰りには江の島などで遊んで帰るという物見遊山の旅でもあった。いわば観光登山のはしりだったと思われる。

大山の麓には今もその名残として、大山講の人たちが泊まった宿がいくつも残っている。今回紹介するヤビツ峠の麓の蓑毛(みのげ) から登る人も多く、駿河や伊豆からの人が多かった。蓑毛には宿を提供する御師集落が築かれていたが、関東大震災後に起きた土砂崩れにより御師集落は壊滅した。

ヤビツ峠から登る大山は、一番楽なコースでもある。下社までケーブルカーで上がっても、山頂へ行くには標高差が574m、ヤビツ峠からなら500m弱なので、100mほど少ない。これは山では大きなアドバンテージ。

昔はケーブルカーもないので、下から表参道を丁寧に登ったはずだ。ヤビツ峠から登るなんて、昔の参詣者から怒られそうな安直参を反射する相模湾の光景が美しい。大磯丘陵や街並みも見えてくる。ときどき展望が開けるので、つい見とれてしまう。

イタツミ尾根の中間地点付近。表参道の合流地点まではヤビツ峠から約1時間20分。
イタツミ尾根の中間地点付近。表参道の合流地点まではヤビツ峠から約1時間20分。

江戸から続く山岳信仰の山、大山でお詣りを

ヤビツ峠から1時間半ほどで下社からの表参道との合流地点、25丁目の分岐に着く。合流地点の少し手前が絶好の展望所となっていて、丹沢山塊の塔ノ岳や三ノ塔、とくに富士山の眺めがいい。

ヤビツ峠からイタツミ尾根を上がっていくと、素晴らしい眺望が。大磯丘陵と相模湾に浮かぶ伊豆大島などの絶景が待っている。
ヤビツ峠からイタツミ尾根を上がっていくと、素晴らしい眺望が。大磯丘陵と相模湾に浮かぶ伊豆大島などの絶景が待っている。

ここまで来ると山頂は近い。奥社の裏手にあるトイレの先から行く展望所もあなどれない展望台。ぜひ足を延ばしてみたい。

27丁目に立つ銅鳥居。山頂すぐ手前には普通の鳥居がある。
27丁目に立つ銅鳥居。山頂すぐ手前には普通の鳥居がある。
山頂東側からの展望。大山はピラミダルな山容のため、海からのランドマークでもあった。
山頂東側からの展望。大山はピラミダルな山容のため、海からのランドマークでもあった。

下山のコースは二つ。表参道をそのまま下るのと、見晴台から下社へ下りるコース。今回はそのまま表参道から下社へ下りて、ケーブルカーを使わずに、こま参道へと下りることにした。

25丁目の分岐の下、表参道の富士見台からの眺望。下方の原っぱのようなところがヤビツ峠になる。江戸時代には茶屋があり、ここからの眺めは浮世絵にもなったという。
25丁目の分岐の下、表参道の富士見台からの眺望。下方の原っぱのようなところがヤビツ峠になる。江戸時代には茶屋があり、ここからの眺めは浮世絵にもなったという。

16丁目の分岐でさらにルートの選択ができる。まっすぐ下りて西の峠から下社へ行くルートもある。今回は左の表参道を下る。

16丁目の分岐から表参道を下った(下社近く)。
16丁目の分岐から表参道を下った(下社近く)。

山頂から1時間半、阿夫利神社下社の脇に出る。下社にお参りしてから下山。大山寺までの石段の下りは傾斜がかなり急なので要注意だ。疲れていたら無理せずにケーブルカーを利用したい。

今回はこま参道の店には寄らずに、お目当てのあたご滝バス停手前の「東学坊」へ。豆腐料理と露天風呂が待っている。

山歩きメモ

大山山頂から雷ノ峰尾根を下りた見晴台から下社へ下りるコース、あるいは見晴台から日向薬師に回るコースもある。見晴台から1時間半はかかる。日向薬師からバス便がある。

アドバイス

クサリ、ロープといった危険箇所はないが、下社から大山寺へ下る急な石段は、ルート上一番危険かもしれない。疲れてきているので慎重に。ケーブルカーを使って安全下山も考慮したい。

大山阿夫利神社

古くから信仰を集め、江戸期には大山詣が人気

大山阿夫利神社の下社の拝殿。1977年に杉板葺きの木造の建物から鉄筋コンクリートの 建物になった
大山阿夫利神社の下社の拝殿。1977年に杉板葺きの木造の建物から鉄筋コンクリートの 建物になった
大山山頂に立つ阿夫利神社の奥社。
大山山頂に立つ阿夫利神社の奥社。

大山は古くから山岳信仰の山として信仰を集め、江戸時代になると講が組織されて大山詣が人気となった。明治期に阿夫利神社と大山寺に分かれ、大山寺は現在地に移転し、跡地に下社が残った。大山山頂には阿夫利神社奥社と山頂売店脇に本社がある。

東学坊

豆腐懐石が美味しい露天風呂のある宿坊

豆腐料理で知られる東学坊は、宿坊から始まって、400年ほど続いている老舗旅館でもある。自家製の大山豆腐を使った豆腐料理がおすすめだ。コース料金は2700円~。露天風呂もあり、食事をすれば入浴料は無料となる。

●12:00~19:00LO、入浴料 1000円、月・火曜休。あたご滝バス停から徒歩3分
☏0463-95-2038

 

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ』より