数々のラーメン店で研鑽を積み、名店仕込みの支那蕎麦で独立

新宿御苑前駅の2番出口を出て、旧甲州街道から路地裏に入ると『支那蕎麦 澤田』が見えてくる。並びがうどん屋で、間違う人も多いらしい。向かって右が『支那蕎麦 澤田』だ。

『支那蕎麦 澤田』。新宿御苑前駅から徒歩2分と、駅からのアクセスもよい。
『支那蕎麦 澤田』。新宿御苑前駅から徒歩2分と、駅からのアクセスもよい。

店主の澤田信幸さんは、23歳で横浜のラーメン店で働き始め、その後、全国に横浜家系ラーメン店を展開する企業に就職。5年ほど統括として店の立ち上げに携わりながら、自らがラーメンで成功することを夢見てきた。

店主の澤田信幸さん。ラーメンで成功を夢見て、第一歩となる独立店で爽やかな笑顔。
店主の澤田信幸さん。ラーメンで成功を夢見て、第一歩となる独立店で爽やかな笑顔。

会社を退職した後、知人と大阪でラーメン店をオープン。それから2年ほどで独立を考えるようになる。その時、目に留まったのが支那蕎麦の名店『八雲』だ。

「もともと家系ラーメンとか、白湯ラーメンが好きだったんです。求人を見て『八雲』に食べに行って、初めて清湯がおいしいなって思いましたね。そこから清湯が好きになったというか、造詣が深くなりました」と澤田さん。『八雲』での約1年の修業を経て、2021年3月16日に『支那蕎麦 澤田』をオープンした。

カウンター10席。黒い内装に木の飾りで広がりあるシックな空間。
カウンター10席。黒い内装に木の飾りで広がりあるシックな空間。

オリジナリティあふれる極上の支那蕎麦

さまざまなラーメン業界で学び、さらに独自に試行錯誤して作り上げた支那蕎麦と聞いて、早速、一杯お願いした。

小鍋でスープを温めながらタレ、麺、具材と、ひとつひとつ仕上げていく澤田店主は真剣そのもの。
小鍋でスープを温めながらタレ、麺、具材と、ひとつひとつ仕上げていく澤田店主は真剣そのもの。

厨房で手際よく作られていく支那蕎麦を想像しながら出来上がりを待つのも楽しい。カウンターテーブルに丼が置かれると、いい香りが漂う。オーダーは、白醤油に海老・肉ワンタンが2個ずつトッピングされたこちらだ。

白醤油 二種のワンタン麺1100円。具はチャーシュー2枚、海苔、ネギ、海老・肉ワンタン各2個。
白醤油 二種のワンタン麺1100円。具はチャーシュー2枚、海苔、ネギ、海老・肉ワンタン各2個。

丸鶏のミンチにチャーシューご飯にも使う豚肉、平子煮干などに白醤油を合わせたスープは、旨味あふれる仕上がり。何度もレンゲですくっては飲み、あっという間にスープがなくなってしまいそうな勢いだ。

三河屋製麺の平打ち中細麺は、しなやかで喉ごしなめらか。
三河屋製麺の平打ち中細麺は、しなやかで喉ごしなめらか。

麺をすくってみると、細くしなやかな麺がきれいに持ち上がる。もともとはもう少し太い麺を使っていたそうだ。「以前より細い麺にしたら絡まってしまって、違う形状の丼に変えたんです。友人から『支那そばや』の丼がいいよとすすめられて、いまはその丼を使っています」。スープや具材だけでなく、麺や丼、あらゆるこだわりが、おいしさの源なのだ。改めてひとつひとつ味わいながら、誰もが絶賛のワンタンまでおいしくいただいた。

海老ワンタン。ちゅるんとした皮にプリプリの海老餡がたっぷり。おいしくて 何個でも食べられそう!
海老ワンタン。ちゅるんとした皮にプリプリの海老餡がたっぷり。おいしくて 何個でも食べられそう!

昆布水つけ麺や限定の白湯と豊富な麺作りで多店舗展開も目指す

スープに合わせてタレを作る。先ほどの一杯は1種類の白醤油を使ったタレだが、3種類の醤油を使った醤油ダレで作る支那蕎麦がある。醤油ダレは澤田店主のオリジナルのブレンドだ。

平ざるでワンタンの湯切り。跳ねるワンタンと澤田店主の所作にほれぼれ。
平ざるでワンタンの湯切り。跳ねるワンタンと澤田店主の所作にほれぼれ。
こちらは黒醤油の二種のワンタン麺1100円。醤油を3種類ブレンドしたスープ。
こちらは黒醤油の二種のワンタン麺1100円。醤油を3種類ブレンドしたスープ。

「初めは、どうしてもブレが出て安定しなかったんです。保存の仕方で味が全然変わるので、少しずつ調整して、いまはブレの幅が少なくなってきました」と、まだまだ味の追求に余念がない。

「まずは地道に味を安定させて」と澤田店主。次は多店舗展開を目指す!
「まずは地道に味を安定させて」と澤田店主。次は多店舗展開を目指す!

白醤油と黒醤油、2種の支那蕎麦と人気を競う昆布水つけ麺もあり、日々の仕込みは大変なのに、さらに限定メニューの提供も考えているそう。「涼しくなってきたら白湯をやります。2022年も木曜日だけ白湯と味噌を限定提供したんですが、2023年は曜日を限らず常に出そうかなと思っています」と澤田さん。

「もともと経営に興味があって、個人店の店主だけで終わりたくない。多店舗展開も考えています」。穏やかな表情からは想像しなかった意欲的な言葉に、今後の展開が楽しみだ。

住所:東京都新宿区新宿1-12-1/営業時間:11:00~15:00・17:00~20:30(水11:00~17:00、土11:00~15:00)/定休日:日/アクセス:地下鉄丸ノ内線新宿御苑前駅から徒歩2分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=大熊美智代