2012年オープン、炭火焼の肉が主体の安ウマ居酒屋

新橋駅と内幸町駅の間のディープな路地裏には、落ち着きがあり個性の際立った店が目立つ。そんなエリアを歩いていると、『肉食酒場 らいどん』の木の看板が目に入った。

ビルの中からではなく、地下専用の入り口から階段で地下1階へ。
ビルの中からではなく、地下専用の入り口から階段で地下1階へ。

店内に入るなり、炭火で肉が焼かれるいいニオイにクラクラ〜。お腹が減った〜。

『肉食酒場 らいどん』は、炭火焼きの肉を主体に海鮮にも力を入れた居酒屋で、旬を意識した食材や料理も登場する。「つまみメニューの他にも、味も見た目にもこだわった“逸品”。お客様が喜んでくれるひと皿を探求し提供したい」というのは店主の七條賢さん。

とっても気さくな店主の七條賢さん。
とっても気さくな店主の七條賢さん。

どんな質問にも気さくに答えてくれた七條さんは、もともとフレンチとイタリアンの出身。さまざまな飲食店で経験を積み、現在のオーナーに出会った。

『肉食酒場 らいどん』は2012年にオープン。七條さんは2020年の秋からこの店の店長になった。「それからは少しずつメニューを変えています。前は銘柄肉とかもあって肉料理が主体でしたけど、最近は天ぷらや焼きものなど魚介類を取り入れたりもしているんですよ」。

 

店舗は地下だが、外からでも見やすいメニュー。
店舗は地下だが、外からでも見やすいメニュー。

入り口に掲示されていたメニューにはお家芸の肉料理がズラリと並んでいたが、魚介もイケるのか。これは期待できそうだ。

ご飯がおいしく食べられるみっくす丼。とり、うし、ぶたが丼の上にそろい踏み!

定番が5種、週替わりメニューが2つある。みっくす丼は毎日6食限定だ。
定番が5種、週替わりメニューが2つある。みっくす丼は毎日6食限定だ。

ランチはすべて850円。まずは炭火焼のとり丼、うし丼、濃いめの醤油だれで豚バラ肉を煮込んだぶた丼。これらを1種類ずつ盛り合わせたみっくす丼に揚げたてサクサクの唐揚げ定食といった5品。さらに週替わりの定食とパスタがある。

取材当日の「今週の定食」は牛ハラミだった。しかもスタミナ炒めだって。ご飯が進みそう。
取材当日の「今週の定食」は牛ハラミだった。しかもスタミナ炒めだって。ご飯が進みそう。

ランチの定番の唐揚げもいいし、肉料理が中心の今週の定食や、ランチでしか食べられないパスタもおいしそうだ。だってホラ、七條さんのルーツを聞いたらさぞおいしいんだろうなと期待値が上がってしまう。

パスタは12:30からスタート。この日は春らしいメニューが2品。スープとサラダ付き。
パスタは12:30からスタート。この日は春らしいメニューが2品。スープとサラダ付き。

「唐揚げ定食はこの辺りで出してる店が少なかったので、人気が高いですよ。パスタを出し始めたのは、完全に女性ねらいです。というのも、11時半からランチが始まると12時半ごろには落ち着いちゃうんです。でも、女性の方はけっこう遅い時間に来る比率が高かったのでね」と七條さん。

どれにしようか迷ったが、定番のとり、うし、ぶたが少しずつ乗った毎日限定6食のみっくす丼850円をオーダーすることにした。この日は運良くまだ残っていてよかった!

鶏もも肉と牛バラ肉を炭火で焼く。
鶏もも肉と牛バラ肉を炭火で焼く。

網の上に乗せられた鶏もも肉と牛バラ肉は炭火で焼く。すると途端に香ばしさと炭の香りが! 脂がはぜて炭に落ちると小さな炎と共に燻したニオイとケムリがポワンと立つ。ああ、おいしそうな香り! ありがたいお肉の香水をたっぷり吸い込めるこの瞬間が幸せだ。

鶏もも肉に包丁を入れるとパリッと軽快な音を立てる。
鶏もも肉に包丁を入れるとパリッと軽快な音を立てる。
とり、うし、ぶた、そして卵までが丼の上にそろい踏み。まるで『らいどん』農場だ。
とり、うし、ぶた、そして卵までが丼の上にそろい踏み。まるで『らいどん』農場だ。
いい照りのお肉ちゃんたち。麻婆豆腐にお吸い物、枝豆や冷奴など小鉢も充実。
いい照りのお肉ちゃんたち。麻婆豆腐にお吸い物、枝豆や冷奴など小鉢も充実。

では、いただきまーす。鶏にはタマネギ、柚子胡椒、ゴマとネギがたっぷり入った塩だれがかかっていて、こんがり焼けた皮がパリパリ。こげたところが香ばしくて旨味がギュッとしている。肉の性質もあるのだろうが、比較的あっさりとした味付けだ。牛はバラ肉の薄切りに焼き肉のタレのような特製の甘辛醤油が絡む。ゴマの風味が良く、濃厚なのでご飯がすすむ!

唯一、煮込んで調理されている豚。セコンドの卵を従えて登場だァ!
唯一、煮込んで調理されている豚。セコンドの卵を従えて登場だァ!

豚はいわゆる角煮。豚バラ肉をザラメや黒糖を入れた醤油ベースのタレで煮込んでいる。卵は醤油とみりんだけで別の鍋で煮込んでいるからあっさりといただける。

ミディアムレアな黄身がいい感じ!
ミディアムレアな黄身がいい感じ!

全体的にタレがビチャビチャかかっている丼ではなく、あくまでもそれぞれの肉のおいしさを際立たせるタレの濃度に品の良さを感じた。七條さんも「ご飯をおいしく食べて欲しいと思ってるんですよ。だから、しっかりした味付けだけど、最小限にしていますね」と語っている。

感動したのはマイルドな味付けの麻婆豆腐。これだけ食べるとやさしい味わいなのだが、肉汁とタレがしみたご飯にたっぷりかけて食べたら、これがメチャメチャ合う! お肉の後にこれが待ってると思ったら、このみっくす丼の魅力が爆上がり。これを選んでよかった〜。

れんげの上で作るマイ麻婆丼。これに勝るものはなし。
れんげの上で作るマイ麻婆丼。これに勝るものはなし。

約1000円でボリューム満点の高品質ランチがそろう西新橋のランチ事情

駅前のメインエリアほどではないが、『らいどん』がある西新橋周辺にはオフィスと飲食店の数はけっこう多い。この辺りのランチはどんなものがあるのだろう?

七條さんは、「ランチタイムは仕事をしているので他のお店のことはそれほど詳しくないかもしれないですけど……」と前置きしながらも「価格帯は平均1000円ぐらいだと思いますね。それでいて、しっかりお腹いっぱいになる量でがっつりと食べられるメニューが多いと思います。和洋中だと洋・中が多めですかね」と分析する。

それに比べたら『らいどん』のランチははオール850円でリーズナブルなうえボリューミーだ。「正直、けっこうギリギリでやってますけど、安い・ウマイがモットーですから。ギリギリまで踏ん張りたいです」と拳を握る七條さんだ。

「お客さまのランチの時間は限られているので、すぐにお出しできるよう体勢を整えています」という。
「お客さまのランチの時間は限られているので、すぐにお出しできるよう体勢を整えています」という。

新橋はサラリーマンの街といわれているだけあって、店をひきついだ1年半ぐらい前は8、9割が男性だったそうだ。しかし、冒頭でも触れたように工夫をして続けているうちに、「意外と女性のお客さんも増えだして。今はやや男性が多いくらいになりました」と七條さんは語る。

ナチュラル感のある店内。
ナチュラル感のある店内。

かくいう七條さんの好物を尋ねると「僕はラーメンです! ニンニクや背脂たっぷりのラーメンが大好きです」と即答。もしかしたら、ランチメニューにラーメンが加わる日が来るかもしれない。炭焼チャーシューが乗っちゃったりして!? きっとおいしいんだろうな……。そしたらまた食べに来てみたい。

住所:東京都港区新橋1-11-5 西新橋福徳ビルB1F/営業時間:11:30~13:30LO・18:00〜不定(日によって閉店時間が異なる)/定休日:土・日・祝/アクセス:地下鉄内幸町駅から徒歩3分、JR・地下鉄・ゆりかもめ新橋駅から徒歩7分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢