「インド風」カレーの専門店なのに、なんでエチオピア?
最初に断っておくが、『エチオピア本店』はインドカレー専門店だ。メニューにビーフカレーがあるため「インド風」としているものの、ルーに小麦粉を入れず、ふんだんにスパイスを使った正統なインドカレーを提供する。対して、エチオピアといえばアフリカだ。インドカレー専門店なのになんで?と思う人も多いだろう。
話は1988年の創業当時に遡る。カレーとコーヒーの専門店としてスタートしたものの、扱っていたエチオピアコーヒーの評判がすこぶるよかった。ならばそのまま店名に……。というなんともざっくりした理由が店名の由来だ。カレーとまったく関係ない。おかげで今でも「なんでエチオピア?」と思う人が後をたたない不思議な店名となってしまったのだ。
栄養満点!12種のスパイスと野菜をじっくり煮込んだ健康カレー
セロリと玉ねぎを中心とした大量の野菜ペーストをスパイスで炒め、肉のエキスでじっくり煮込む。寝かせる工程も合わせると3日ほど時間をかけることで野菜が溶け込み、小麦粉を使わなくても自然なとろみがついたルーが仕上がる。
スパイスは、現在でも漢方薬の薬剤として使われる12種類を配合。鎮痛作用や消化を助けるなど、さまざまな効果のあるスパイスにより新陳代謝が促され、便秘や冷え性が改善する人もいるほどだ。野菜による食物繊維が豊富でヘルシー、かつ効能もたっぷり。なかなか魅力的だ。
野菜の旨味と鮮烈なスパイスの香り!チキンがごろりと入ったチキン+野菜カリー
チキン+野菜カリーは見た目にも具材がたっぷり。素揚げ、油通し、生からルーで煮る、とそれぞれに調理された野菜がたっぷり入る。チキンはごろりとした大ぶりのサイズだ。
辛さは70倍まで選べる。「0」が一般的な中辛程度とのことなので、今回は1倍をセレクト。辛さによる追加料金がないのは激辛好きにはうれしいポイントだろう。ちなみに唐辛子の量は1倍で0.1gなので70倍は7g。うわ〜、無理!そんなの食べられる人いるの?と思ったけれど、1日にだいたい4〜5人はいるそう。案外食べられる人いるんだな……。
一口目でガツッと鮮烈なスパイスの洗礼を受けた。鼻の奥を風が突き抜けていくような強い風味だ。多様な野菜をじっくり煮込むことで出る複雑な旨味と甘さ、そしてスパイシーさが混じり合う。深みのある贅沢な味わいがたまらない。もっちりと水分の多い日本の米に、粘度の低いルーがちょうどよく絡む。しみ込んだごはんがまたうまい。
スパイスの入ったスープで茹でてある下味のついたチキンは、スプーンでかんたんにほぐれるほど柔らかい。噛むごとにほろりと繊維にそってほどけていく。カレーに入った鶏肉って、こんなにおいしいのか……と実感する味だ。
お腹はパンパンなのに重さはない。ヘルシーでクセになる味
一皿一皿作り上げるため、カレーが提供されるまでには待つこと約10分。その間に供されるのが蒸かしたジャガイモだ。塩やマーガリンなどをつけて食べるとホクホクしていてシンプルにおいしい。実はこのジャガイモ、食べ放題という魅惑のシステムなのだが食べ過ぎるとカレーが入らなくなってしまうので用心が必要だ。といいつつ、実は2個食べた。そのおかげでカレーを食べきる頃にはお腹ははちきれんばかり。う〜ん。これはやっぱりやりすぎだったか…。しかし、なぜか不思議な軽さがあり、苦しくはない。なるほど、これがスパイスの効能か。
家にたどり着く頃には「また食べたいな」などと考えていた。クセになる老舗の味だ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ