奥神楽坂と呼ばれる江戸川橋方面の開拓が止まらない!
坂上さんぽの出発点は地下鉄東西線神楽坂駅。メインストリートをまたいで路地に入り、往年の街の姿をとどめる「一水寮」の周辺を観賞。続けて赤城神社の参道で神社に一礼、脇の道を経て『ドーナツもり』でおみやげを購入。なりゆきで店前の長くゆるい坂道を下っていく。この細い坂、近年オモシロい店がこっそり増加中。今後が楽しみ。途中であかぎ児童遊園に入りこみ、勢いでゾウさんすべり台ひとすべり。
住宅地に潜む『おはぎと大福』がすぐ先に。またも買い物の手が伸びる。
江戸川橋通りをまたいで『swing by coffee』でヌケの良いコーヒーを立ち飲み、近くにできた『八百(やお)食堂』で豚汁めしをいただく。おおこりゃアタリだ。
意外と庶民的な顔も隠し持っている神楽坂
満足して腹ごなしに地蔵通り商店街の、神楽坂とは異なる庶民的な道筋を進み、年季の入った渋ビルの隠れ地帯を散策。筑土八幡神社と長い石段中腹にあるプチ児童公園や、その先のレトロな手すりの急階段なんて渋いポイントを巡り、メインストリートへ復帰。 ふるさとに戻った気分(おおげさ)も束の間、また脇道に入り、『フラスコギャラリー』をのぞく。
今日は何やってるかな、ふふ。白金公園向かいの『jokogumo(よこぐも)』が折よく開いていたので物色後、『カド』の門を潜り、立ち飲みで〆の1杯。これで帰宅もいいけど神楽坂を飯田橋まで下るのもおすすめ。飴色の街灯が連なる夕暮れの風景も見物なのだ。
(1)一水寮
昭和にタイムスリップする路地の顔
渋い路地に忽然(こつぜん)と現れる、トタンに覆われたレトロな建物は、地元の建築家高橋博氏が終戦直後、大工の寮として建てた2階屋。アパート等に転用された後、耐震補強を含めた改修工事が行われ、今はスタジオ・事務所として使用中。登録有形文化財。
(2)ドーナツもり
高級ケーキと同格の本格ドーナツ
リノベ古民家で、フランス菓子のクオリティーを持ち込んだドーナツ10数種を販売。生地作りに3日、食材はオーガニック、トランス脂肪酸フリーの最高品質の油で揚げて仕上げるドーナツは、胃もたれなくペロリといける。
(3)あかぎ児童遊園
閉園時間付きで街の安全にも配慮
住宅地に挟まれた細道にひそむ公園。表情豊かな2頭のゾウが連なる独特なすべり台は地形の高低差を利用したもの。南北に出入り口があり、江戸川橋への通路としても利用できる。
(4)おはぎと大福
見つけるまでも楽しい隠れんぼ小店
おはぎ好きが高じて店開きした立原則明さん(写真奥)。場所もここだ! と、古い住宅地をあえて選んだ。木箱に並ぶおはぎは、定番4種と日替わり2種。ほどよい甘みと硬めのもち米が持ち味。全部手作りなのに値段も手ごろ。
(5)swing by coffee
神社脇に潜む自家焙煎コーヒーの名店
大通り一本裏の静かな風情が気に入りこの地に開店したそう。吟味した豆を中煎り~深煎りでクリアな味に仕上げる。飲んだ後のさっぱり加減が見事。テイクアウトメインだが、1杯370円~で淹れたてを立ち飲みできる。
(6)八百食堂
つまりは庶民派の和風シチューなのだ
2021年10月開店、珍しい豚汁めしの専門店。味噌の配合を工夫、こってり仕上げた汁は具沢山。埼玉県産「とねのめぐみ」使用のメシがまた美味で食が進む。小皿付きで並580円。サイドメニューも豊富で、リピート必至。
(7)江戸川橋地蔵通り商店街
現役バリバリの頼れる庶民派商店街
入り口の近年整えられた立派な地蔵堂がシンボル。昔ながらの肉屋、八百屋、煎餠、和菓子屋など約80店舗。最近はカフェなども登場し、通りに新しい風が吹きはじめている。
(8)筑土八幡神社
一歩引いて街を見守っております
あまり目立たないが、建立9世紀に溯る古刹。新宿区内最古の石の鳥居を有し、その脇に小さな公園。高台の斜面を利用した遊具は、小型ながら見通しよすぎて結構こわい。
(9)フラスコギャラリー
街のおもしろ実験スペース
ご近所の雑貨店『貞』が手がけるギャラリー。奥に上がりかまちがあるのが神楽坂っぽい。ちょっとした料理や演奏も可で、イベントや個展が開かれている。この日は平和をテーマにした女性作家4人の作品展が開かれていた。
(10)jokogumo
狭い敷地に厳選した日常雑貨が静かに並ぶ
人気の雑貨店が規模を縮小し、店開きした場所に戻ってきた。「お客様との距離感がちょうどいい」と店主の小池梨江さん。通好みの手工芸品を始め生活を彩る品々が揃う。久留米絣(がすり)の今風もんぺ1万2100円~の品揃えは東京一。
(11)カド
角打ちでちょいと立ち飲みもできる居酒屋
古民家を改装した居酒屋。肩肘はらぬ雰囲気がいい。入って右手の土間は立ち飲みコーナーで、開店当初からあったが近年人が集まりだした。おつまみ基本300円。神楽坂なのに、一杯飲んで1000円でオツリ!
取材・文=奥谷道草 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2021年12号より