江東区にある松尾芭蕉記念館へ行ったときに偶然に出会った橋です。鉄骨をこれでもかとガッシリと張り巡らせた異様に目を見張り「うーむ、ごっつい!」と唸りました。
 
小名木川を渡るその名も”萬年橋通り”に架橋されています。特徴的なのはやはりその極太の鉄骨を組み合わせた構造。横から眺めたときのアーチの曲折は流麗な印象も受けます。橋を正面やすこし斜め前方から見たときのインパクトはなかなか強烈。「俺は頑丈です!」と自己主張しているかのようです。

現在の橋が架橋されたのは1930年(昭和5年)。関東大震災以前は木橋であったそうですが震災復興にあわせて鉄橋として再構築されたそうです。このいかにも頑丈そうな見た目に地域住民の方々も頼もしく思えたのではないでしょうか。
 
萬年橋自体はそもそも江戸時代に遡るようです。小名木川は運河であり船の通行のために高くアーチ状に架橋されて、その形状の美しさが評判だったそうです。浮世絵の「富嶽三十六景」(葛飾北斎)や「名所江戸百景」(歌川広重)にも取り上げられています。

すぐ南にある隅田川の青い清洲橋の眺望がもっとも素晴らしい場所ともされています。清洲橋はドイツ・ケルンのライン川にかかるヒンデンブルク橋をモチーフにしており、萬年橋のたもとからの清洲橋の情景は「ケルンの眺め」とも呼ばれています。
 
萬年橋のそばは松尾芭蕉ゆかりの地です。すぐ近くには芭蕉が閑居した芭蕉庵の跡地や松尾芭蕉記念館があります。また周辺には清澄庭園や深川江戸資料館などの観光スポットも豊富です。この日は折角なので深川めし(炊き込みご飯タイプ)をいただきました。あっさりとした淡白な醤油と出汁のベースにアサリの旨味がたっぷり。なによりお米に負けないてんこ盛りのあさりのボリュームが嬉しいです。

最近はスタイリッシュでモダンなデザインの橋も増えてきました。萬年橋はその対極の存在といえるかもしれません。むしろ「外見のデザインなんか気にしないぜ」とでも無言の主張をするかのようです。江戸の下町にあって、その武骨な風貌はまるで昭和の頑固親父を思い起こさせるようだなーと感じました。

●萬年橋
(まんねんばし)
所在地: 東京都江東区の清澄二丁目と常盤一丁目の間の小名木川
アクセス: 東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄大江戸線「清澄白河」駅から徒歩6分、都営地下鉄大江戸線・新宿線「森下」駅から徒歩7分