看板が見えてきたものの、これはどうみても工場の入り口。ここから入っていいのかと迷いつつ中へ。入口の守衛さんに聞くと、親切に教えてくれました。左前方に「家具の博物館」がありました。

家具の博物館は、入場料が200円。
館内の写真撮影も可能だそうです。「最近になってOKになったんですよ」と職員の方。

エントランスには、博物館の由来が貼ってありました。

家具の博物館は、フランスベッド創業者の池田実氏の発起により、昭和47年に晴海に開設されたもの。
「住環境の変化により散逸しがちな家具を後世に伝えねければ」という想いがあって作られたそうです。
平成16年に、池田氏ゆかりの地である今の場所に移転しました。

寄贈などもあって、現在は、家具1800点を所蔵しています。
年に2回の企画展では、家具に関する展示(椅子とか箪笥とか)や、地元のアーティストの作品展示を行って、賑わっているそうです。

平日の豪雨の日とあって、館内には私ひとりでした。ゆっくりと展示を見ていきます。

フランスベッドの工場内にある博物館ですが、ベッドは一台のみ。しかも、寄贈されたベッドでした。寄贈した方が、昭和13年に購入し、平成まで使っていたものだそうです。ごっついインパクトのあるベッドでした。

コースの前半は、冒頭の写真のような西洋クラシック家具のコーナー。17世紀から19世紀のイギリスなど欧米各国の椅子やテーブル、チェストなどが集まって、素敵な一画でした。

西洋家具の中に、上の写真のようなミニチュア椅子がディスプレイされていました。
この椅子を作ったのは、菊池敏之氏。
「戦前から、元高島屋東京店の装飾部設計室に勤務し、定年後も個人で設計仕事を続けた」と書いてありました。コレクションは、欧米のクラシック椅子1/5の縮尺で再現したもの。作ったものを、この博物館に寄贈していたそうです。

椅子がお行儀よく並ぶ様はキュート。一つ一つに非常な時間がかっていることがわかります。
すごい方がいらしたものだなあ、とただ感嘆。

江戸時代から明治時代にかけての、日本の家具が並んでいるコーナーがありました。

階段箪笥、舟箪笥、薬箪笥や、豪華な仏壇など、いろいろある中で、気になったのは、車輪つきの「車長持」。

火事の多い江戸の町で、この車長持に荷物を載せて避難する人が多く、避難の妨げになったそうです。たびたび禁止令が出て、ついに、車箪笥の製造自体が中止になってしまったそうです。

火事の時に、こんなのがゴロゴロしていたら大変です。でも、荷物運びたい気持ちもわかる。
地方では、車長持ちが作られ続けたそうです。

最後のコーナーは、近代以降の日本の家具。
ここにある衣装箪笥「東京箪笥」にも釘付けになりました。

そっくりな箪笥が実家にあり、「祖母の嫁入り道具」だと聞かされていました。東北の出身なので、そちらのものかと思っていたら、東京箪笥だったことが判明。
昭和初期に流通したもので、それ以前に作られていたものよりは、コンパクトで機能重視、上下2つにセパレートできるのだそう。

狭い実家には、この嫁入り道具の箪笥が3つもあり、今では一つが私のものになっています。どういう箪笥だったのか、初めてわかってすっきり。

家具の博物館は、歩いているうちに、どんどん次のコーナーが現れ、見ごたえ充分でした。
職員の方から、「これでも、所蔵しているうちの何分の一しか展示しておらず、展示替えは大変な作業」と伺いました。何しろ展示物が大きいですものね。

帰りはますますの豪雨。こんな豪雨の日にも、駅近な博物館は助かります。

箪笥や椅子に囲まれる非日常な空間、「家具の博物館」でした。
家具に関する企画展の時に、また行ってみたいと思います。