久しぶりに制限のない年末年始ということもあり、三が日最終日の雷門通りや仲見世通りは芋洗い状態。
軒先の方々も、慌ただしさを顔に出さないようにしながらも、交通整備のアナウンスに負けじと声を張る姿に年明けの繁忙期を実感させられる。
浅草はどこを歩いても話題に事欠かすことはなく、更に路地にも恵まれているので私にとっては非常にありがたい場所。
ですが。
この日ばかりは人の多さに圧倒されて、安全面も考慮したうえで戦線離脱。
今回ゴールは決めているものの、さてどうしたものかと考えを巡らしているうちにたどり着いたとある路地。
花川戸公園の巨大遊具とその前のベンチで体を寄せ合う男女をぼんやりと眺めながら気づいたのは、家々の前につるされたお正月飾り。
決して華美ではないものの、暗がりでもはっきりと見える松飾りの紙垂を追いながら、知っているようで知らなかった浅草をやや駆け足で巡る。
マンションやアパート、年季を感じさせる家、あちこちで風に揺れる紙垂はまるで不思議の国へ導いてくれるような兎のよう。
住まう人達が夜のけだるさを楽しむ息遣いも、美味しいものが手招きをするお店から漏れる温かな光も感じられるはずなのに、時折心細くなって後ろを振り向くこの感覚。
不思議の世界に迷い込んだアリスもこんな感じだったのかな、なんて。自分から選んだくせに、心細くなって迷って、でもその中で楽しいと思えるものをぽつぽつ拾っていく。
知っているつもりでいた町の、知らなかった一面を知る。
それも散歩の醍醐味の一つ。
いつの間にかバイパスに出てしまったので、この日のアリスごっこの幕を閉じて、ゴールとしていた隅田公園へ。
豪華絢爛、荘厳華麗とも言うべき新年を祝うライトアップが施されたスカイツリーを眺めながら頂くのは、こちらもお祝いに相応しい浅草は梅園さんの「花びら餅」。
手のひらに乗せただけで両端がとろんと垂れてしまうような柔らかさは、まだ産声をあげたばかりの新年のよう。
牛蒡の蜜漬は洗練された甘味と風味のみを残し、それがまた白みそ入りの餡と「甘じょっぱい」の風味を見事に構成しています。端からかぶりつき、微かに唇をすぼませて吸うと、牛蒡、餅、みそあん三位一体の味わいに舌鼓。
真冬のオリオン座とスカイツリーを同時に目に焼き付けた、そんな三が日の最終日。