美しき画集の林のなかで瞑想。『ESPACE BIBLIO』[御茶ノ水]
天井に向かって書棚がにょきにょき。その合間を“小宇宙”ととらえたテーブルが埋めている。不揃いの椅子、異なる照明を設け、座る場所で気分が変わるから不思議だ。「自分のうちでも、会社でもない空間を作りたくて」と話すのは、デザイナー兼写真家の齋藤芳弘さん。資料として集めたアートブックは、絶版、稀少本も多く、「本は読んでこそ価値あるもの」と一般開放している。都心とは思えぬ木漏れ日の下で愉しむ、テラスでの読書の時間も、なんかいい。
『ESPACE BIBLIO』店舗詳細
森の音に包まれる深淵なる夢想の館。『アール座読書館』[高円寺]
水槽の水音に加え、9月末までスズムシやカンタンなどの虫の音も響き渡る。森の中の読書をテーマに、田舎の博物館をイメージして手づくりした店内は、店主の渡辺太紀さんが夢想の世界を具現化。「縄文土器って日本が誇るアートだと思うんです」と、本棚からも彼の世界観がのぞき見えるようだ。デスクはどれも本棚に向かい、他の人と目線が合わない工夫も心憎い。ここでは私語厳禁。話したい人は3階の喫茶『エセルの中庭』へどうぞ。
『アール座読書館』店舗詳細
自家焙煎コーヒー片手に読みふける。『草枕』[新橋]
萌黄色の暖簾(のれん)をくぐると、木造りの空間が奥へ延びている。「日本文化って暗さが美しいと思うんです」と、店主の相吉(あいよし)康輔さん。間接照明で浮かび上がるのは、本やレコードの数々。カウンター席に陣取れば、「手持ち無沙汰のときに読んでもらえれば」と、文庫本も居並ぶ。クラシックやジャズが静かに流れるなか、時々でブレンドを変えた豆が挽かれると、コーヒーの香りがふわり。濃密な苦みの後から顔を出す甘みに、ほっとひと心地。
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夢見る大人たちが憩う小さな隠れ家。『SEE MORE GLASS』[原宿]
原宿に店を構えて25年以上。ビルの地下に潜むからか、今なお隠れ家感が色濃い。小さな木造りの店には、荒井良二氏や長新太氏、谷川俊太郎氏などの絵本がぎっしり。荒井良二さんや田村セツコさんの原画が飾られた壁は、ギャラリー でもあり、毎年4月には「それで君を呼んだのに 忌野清志郎を想う」小さな展覧会が行われる。訪れるのは、アートや絵を愛する大人たち。店主の坂本織衣さんが醸すゆるりとした空気に浸って、英気を養っていく。
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各地の多様さと奥深さに感嘆。『KAIDO books&coffee』[新馬場]
「観光地より、生活の土台となったものに興味が湧くんですよね」と語るのは、店主の佐藤亮太さん。旅の起点となった品川宿らしい店をと、地元古書店『街道文庫』と提携し、各地の文化や歴史を伝える本を多角的に揃え、全品販売する。圧巻なのは2階。木製書棚が林立し、さながら本の森に迷い込んだ気分。ここで日がな一日、過ごす人もいるという。また、コーヒーも旅のきっかけにすべく、日本各地のロースターから焙煎豆を取り寄せる。次なるお供は、品川海苔の復活を目論んでおられるとか。木・金・土曜日の18:00~23:00には別業態で「古本喫茶イココチ」をオープンしている。
『KAIDO books&coffee』店舗詳細
数奇な出合いで生まれた心地よさ。『BOOK CAFE DINER イココチ』[東高円寺]
「自宅にある本を店に持ってきて置いたのが始まりです。当初は売るつもりはなかったんですが」と店主の蔵下さんは話す。店内には壁際の本棚を中心に、絵本や小説、デザイン、建築、料理など、幅広いジャンルが揃う。席から手が届く距離にある小さな棚にも、まんべんなく本が詰まっている。このごろはラインナップを見て、お客さんが本を持ってきてくれることもあるとか。地域の憩いの場で、本が巡っていく。
『BOOK CAFE DINER イココチ』店舗詳細
乙女心を呼び醒ます古本屋空間。『古本カフェ&ギャラリー 点滴堂』[三鷹]
まるで夢の世界だ。書棚では、絵や装丁の美しい本や幻想文学が新たな持ち主を待ち、女性客どころか男性客をも虜にする。「お客さんが棚を作っていったんですよ」と柔和に微笑むのは店主の稲村光男さんだ。手元に置きたい一冊を見つけるためにと、カフェスペースを設け、お茶を喫しながら書棚を見渡す。様々なテーマを設け、約10人の作家が参加する企画展なども常時開催。「心に点滴を受けました」と伝える客人もいるそう。
『古本カフェ&ギャラリー 点滴堂』店舗詳細
【ブックカフェではないけれど……本が読みたくなる?喫茶店】
珈琲道場 侍[亀戸]
ロッキングチェアでゆらゆら読書天国
電車内だとやけに読書がはかどる。揺れているということがポイントなのかもしれない。電車は目的地で降りなければならないが、ここならそんな心配は無用だ。ロッキングチェアの揺れに身を任せていると、アルファ波が発生するのか、普段なら難しく思える本もすんなり読めてしまう。ちょっと照れながらロッキングチェアに腰をおろすと、意外にもすんなりと体が順応。夜にはお酒を片手にハードボイルド小説をキメてみたい。
『珈琲道場 侍』店舗詳細
ルネッサンス[高円寺]
薄闇と音の洪水に埋没しひっそりと読みふける
地下演劇の舞台のように入り組んだほの暗い座席が並び、何とも雰囲気のある空間。かつて中野に存在した名曲喫茶「クラシック」の家具を使用し、なじみの大工さんが作り上げた店は、スタッフが「全国で一番敷居が低いんじゃないかと思います」と語る、会話もOKの名曲喫茶だ。クラシックに身をゆだね頭の芯を痺(しび)れさせれば、難解な詩集や哲学書のわからなさもむしろ楽しくなってくる。
『ルネッサンス』店舗詳細
イリヤプラスカフェ@カスタム倉庫[田原町]
椅子の数だけ読書スタイルがある
本格的エスプレッソマシーン“ミラージュ”でいれる500円のカフェラテが自慢。スタイリッシュな空間に加え、読書を邪魔しない心地よい音楽、アグレッシブな本でも人目を気にせず読める適度な距離感と三拍子揃った、まさにパーフェクトな読書喫茶! 高くゆったりとした天井の下、さまざまなデザインの椅子で思い思いの読書スタイルが楽しめる。ゴチャゴチャと散らかした家を飛び出し、書斎代わりに入り浸ってしまいそう。
『イリヤプラスカフェ@カスタム倉庫』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり(teamまめ)、増山かおり 撮影=門馬央典、山出高士、鈴木愛子