店のそこかしこでペンギンが歓迎『ペンギンカフェ』(阿佐ケ谷)
開店のきっかけを「ペンギン・カフェ・オーケストラが好きで、一日中その音楽がかかっているカフェがあったらいいな、と思って」と語る店主の二羽(ふたば)信宏さん。福岡の『豆香洞(とうかどう)コーヒー』から仕入れたスペシャルティコーヒー豆を多めに挽き、カップ1.5杯分をサイフォンのフラスコごと提供するのもこだわりだ。アクセントにケニアを使った深煎りの文士ブレンドは、自家製の水羊羹とびっくりするほど相性がいい。商店街と住宅地の境目で醸される緩い空気も、いい。
『ペンギンカフェ』店舗詳細
素晴らしいコーヒー体験のために!『UNLIMITED COFFEE BAR』(とうきょうスカイツリー)
スタッフ全員がプロフェッショナルバリスタで、シングルオリジン・スペシャルティコーヒーを提供。「コーヒーのフルーティーさと良質な酸味をカクテルに活かそう」と、12種のコーヒーカクテルを展開。エスプレッソにはウイスキーとベリーを、水出しにはフルーツを合わせたり。コーヒーの軽やかな味わいに開眼! スタッフの鈴木ゆかりさんは、2017年のJCIGSC国内優勝者。「お酒と組み合わせれば多様に広がります!」
『UNLIMITED COFFEE BAR』店舗詳細
お猪口に注がれる絶品エスプレッソ『Turret COFFEE』(築地)
ストイックなまでにシンプルな店内は、旨いコーヒーを出すためだけの場所。カウンター前にあるボンベのようなマシンは医療用浄水器。「このまま飲んだらおいしくないですよ。純粋に豆の味だけを出したいので使ってます」とオーナーの川﨑清さん。
お猪口(ちょこ)で供されるエスプレッソは、 「言ってみれば一番出汁ですね」。淹れたての褐色の美しい泡を伴ったエスプレッソが、専用カップではなく和の酒器に注がれる。この味は海外にも口コミで広がり、仕事で来日した外国人が時間を割いて飲みに来るという。どら焼きをはじめとする甘味も、コーヒーとの相性を考え、多くの試食を繰り返して吟味したものばかりだ。
『Turret COFFEE』店舗詳細
赤いガラス扉の向こうの新世界『マコ』(築地)
この店は長らく、マコさんという女性が切り盛りしていた。ズバズバ言い切りながらも優しくて、彼女とのおしゃべりが新たな刺激だったが、2018年5月にマコさんが引退してしまった。いろんな人生模様があったんだろうけど、マコさんは1人、この店を守り抜いてきた。でも「人に迷惑をかける前に引退」。マコさんらしい。それから数箇月後、吉田哲也さんが不動産屋にこの店を案内された。 「ザ・昭和の内装とマコさんに引かれて。今も毎日マコさんは? とお客さんに聞かれます」 と吉田さん。
階段を上って赤いガラス扉を開ける。 「自称マコのマゴ」と笑う吉田さんと助っ人の松本さんが、新たな世界を描き始めていた。
『マコ』店舗詳細
シックな店構えと穏やかな時の流れ『かふぇ おか がれーじ』(大森)
「元々は、大工の棟梁(とうりょう)が作業場にしていた場所なんです」と店主の岡昌人さん。ちょうど棟梁が引退するタイミングで、残った木材を引き継ぎ、いろいろ自作した。サクラを使ったカウンターテーブルはいつもきれいに磨かれている。ここでコーヒーを飲むのが、ちょっとした贅沢だ。豆はアフリカのケニアに特化し、「強火で長時間かけて煎るダークローストが自慢」だとか。パンチのある苦味が特徴で、それでいてふわりと甘みも押し出され、華やかさがある。隣接するガレージには岡さんの愛車であるKTM。ときにバイク仲間が集まり、熱く語らう夜も。
『かふぇ おか がれーじ』店舗詳細
地元出身の2人が作る町工場のオアシス『BUCKLE COFFEE』(雑色)
オーナーの石山俊太郎さんは、ある時スペシャルティコーヒーに出合い、開眼。この感動を広めるべく店を始めようと決意し、まず東ティモールに向かった。2年間コーヒー農家で一緒に生活し、生産から販売までノウハウを習得。その間、日本で開店準備を進めてくれたのは幼馴染(なじ)みの佐藤恒大さんだった。「スピーカーのケーブルを手作りしたり、昔から作り手に向いていると思ってたんです」と石山さん。家電量販店で働いていたところを「焙煎士になってくれないか?」と誘った。
『BUCKLE COFFEE』店舗詳細
モダン建築の喫茶空間『珈琲・ロン』(四ツ谷)
開店は1968年。当時まだ珍しいコンクリート打ちっ放しのビルは、近所に勤める建築家の実験建築だった。真ん中が吹き抜けて桟敷(さじき)のような2階席から階下が見通せ、舞台装置のように想像力をかき立てる。そのせいか劇作家井上ひさしも常連だったとか。「四ツ谷はかつて出版社やテレビ局のある中継点でいろいろな人が来てました」と生まれも育ちも四ツ谷っ子のマスター小倉洋明さん。再開発で変わりゆく街に燻(いぶ)し銀の如く佇むモダンな喫茶店だ。
『珈琲・ロン』店舗詳細
喧騒をよそに極上コーヒーを味わう『マレビトコーヒー』(飯田橋)
目白通沿いの大曲手前、素っ気ないサッシに赤字テープで記された店名が目印。「わかっているようでわかっていない言葉で、昔から響きが好きだったので」 と、店名の由来を話す店主。「外部からの来訪者」 という意味をなす、民俗学者折口信夫のキーワードだ。もともと版画作家をしていたが、自分のアイデアが反映される仕事をと、好きで極めた焙煎のノウハウを活かし開店。コクのある深煎りコーヒーは絶品だ。
『マレビトコーヒー』店舗詳細
老舗バーのごとき品位と深い味『十一房珈琲店』(有楽町)
1978年より営業する老舗喫茶店。BGMもジャズがかかり落ち着いた雰囲気でコーヒーを楽しめる。30年以上寝かせた生豆を用いたヴィンテージコーヒーは高貴に香り、含むと濃厚な苦酸甘味が口内に爆発し、深い余韻を残し消えていく。自然体で、コーヒーを心地よく楽しめる。これぞプロのワザ。ブレンド各種ももちろん格別。ほどよい緊張感ただよう大人の空間で味わう至高の一杯は格別である。
『十一房珈琲店』店舗詳細
池袋のニュー・スタンダード『COFFEE VALLEY』(池袋)
2014年11月オープン。ビルの谷間という隠れ家風ロケーションからして絶妙。「スタンダードでありながら新しい」を目指し、シンプルで適度にモダンな店内は居心地よし。店舗3階に構えた焙煎機でコーヒー豆を自家焙煎し、フレッシュなコーヒー豆をそのまま丁寧に抽出したコーヒーは甘さと風味のバランスが良く、飲みやすい。パーラー江古田の全粒粉パンのトーストもはずせない味だ。気さくでオープンな接客ぶりも楽しい。ぜひ池袋で根付いてほしい。
『COFFEE VALLEY』店舗詳細
開放的な空間に憩う『オールプレス エスプレッソ 東京ロースタリー&カフェ』(清澄白河)
「巨大な焙煎機を置けて、いいコミュニティがある場を探してたら、この元材木倉庫に辿り着いた。街の人々に店の空間をシェアしてもらい、コーヒー一杯で幸せな気分になってほしい」との思いで開店した。同店は約30年前、ニュージーランドで小さなカートを使い、手売りしたのがルーツだ。質の高いアラビカ種の豆などを熱風でムラなく焙煎し、エスプレッソマシンの名機・マルゾッコで淹れた一杯で、ほっと一息。
『オールプレス エスプレッソ 東京ロースタリー&カフェ』店舗詳細
映画のセットのような心地よい空間『キアズマ珈琲』(雑司が谷)
雑司が谷鬼子母神の参道に立つ築 86年の木造 2階建て。かつて手塚治虫が暮らした並木ハウスの別館だ。2階には書斎のような一人席やフランス映画のセットみたいな赤い壁の空間があり、発想の自由さが何だか心地よい。2種のチーズを混ぜ、酸味を抑えたベイクドチーズケーキは中がしっとり。コクはあるのに、チーズのくどさがない。自家焙煎した深煎りの豆を3種ブレンドし、ネルドリップしたブレンドとの相性も抜群だ。
『キアズマ珈琲』店舗詳細
特製レアチーズケーキを一緒に『CAFÉ TOUJOURS DÉBUTER』(五反田)
マントルピースや小窓を配し、落ち着いた間接照明の店内は、まるで別世界。幻想的なステンドグラスを横目に、ブレンドをひと口飲めば思わず長居したくなる心地よさ。ブラジル、コロンビアをベースに7種の豆をブレンドし、ネルドリップしたコーヒーと一緒に、自家製ブルーベリーソースをかけたレアチーズケーキもどうぞ。
『CAFÉ TOUJOURS DÉBUTER』店舗詳細
姿も味わいも、まるでプリンなチーズケーキ『A bientot』(荻窪)
駅から少し離れた商店街に、2012年にオープン。中は子ども連れも気兼ねなく過ごせる、ゆったりした空間だ。酸味の少ないクリームチーズを使い、湯煎して、ゆっくりオーブンで焼き上げ、カラメルソースでメリハリを利かせたチーズケーキはプリンのような味わい。ブレンドは濃厚なコクと苦みが特徴のノワール、苦みと酸味とコクのバランスがよくマイルドなルージュの2種。毎回2杯飲む常連客のために生まれたLサイズもある。
『A bientot』店舗詳細
きめ細やかなふんわりカッテージ『CAFÉ Fleurant』(吉祥寺)
吉祥寺で店を始めて29年。フランスの田舎の家を思わせる店内では、マスターの奥様がアレンジした花やオブジェが場を華やがせ、どこを切り取っても絵になる。数種類の豆をブレンドし、ネルドリップで丁寧に淹れたコーヒーには、深いコクとほどよい苦みが。「これも、フランスの田舎の家庭料理」というカッテージチーズを裏ごしした、きめ細やかなチーズケーキには自家製ブルーベリーソースがたっぷりかかっている。
『CAFÉ Fleurant』店舗詳細
文化の薫りと溶け合う大人の琥珀『コーヒーパーラー ヒルトップ』(御茶ノ水)
1980年からの歴史をもつ、『山の上ホテル』のコーヒーパーラー。深煎りのブレンド豆を使い、粒子の細かい浄水の氷水を1滴ずつ12時間以上かけて抽出した水出しコーヒーは、雑味がなくクリア。氷水にするのは年中同じ温度で抽出できるからだ。これにほんのり甘みをつけ、カルーアをかけたコーヒーゼリーは、ほどよく柔らかで上品な大人の味わい。コレクションした世界のブランドの洋食器から、その人のイメージに合った器で供される。
『コーヒーパーラー ヒルトップ』店舗詳細
固まるのが待ち遠しい魔法のゼリー『CAFÉ FAÇON』(中目黒)
2008年、中目黒の路地裏にオープン。フルーツのような酸味の感じられるスペシャルティコーヒーを自家焙煎し、1杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れる。個性的なのはアフォガートをイメージしたコーヒーゼリー。冷やした器に人肌のコーヒーが注がれると、きめ細かい寒天がみるみるうちに固まって、目の前でぷるぷるのゼリーに。バニラと抹茶のアイスに載っかった小豆餡が、最後まで飽きることなく楽しませてくれる。
『CAFÉ FAÇON』店舗詳細
たっぷりのクリームで苦みまろやか『珈琲道場 侍』(亀戸)
生家が合気道の道場だったオーナーが武道の精神を接客に活かそうと、1978年に創業。武家屋敷風の店内ともなじむ、趣ある和の器で供されるコーヒーゼリーには、深煎りの豆を8時間かけて抽出した水出しコーヒーを使用。アイスクリームと生クリームがほろ苦さをやわらげてくれる。同じく水出しコーヒー使用のカプチーノは添えられたオレンジの香りが何ともさわやか。ブレンドなどは1杯ずつ、ハンドドリップで淹れてくれる。
『珈琲道場 侍』店舗詳細
夕日がノスタルジックに差し込む『手紙舎』(つつじヶ丘)
1965年(昭和40)に建てられた団地という特別な空間に、間口いっぱいに設けられた格子窓。そこに広がるのは大きなヒマラヤ杉が見守る石畳の広場だ。商店が並び、子供が駆け抜け、自転車も多く行き交う。開店は2009年。店主の北島勲さんもこの風景が出店の決め手だった。「外国人の方は自分の国みたいと言うし、タイムスリップしたようだとか映画の一場面のようだとも言われます」。誰にとっても懐かしさを誘うノスタルジックな光景。冬の時季は西日が美しく差し込んでくる昼過ぎがベストアワーだ。
『手紙舎』店舗詳細
銀杏並木と赤レンガが織り成す連作絵画『こころ』(東大前)
「お客さんを通すと『いや~きれいな眺めだ』って褒めてくださるの。雪の日も素敵ですよ」とママさんが誇らしげに案内する2階席。一面の窓には東大の瀟洒(しょうしゃ)なレンガ造りの塀に校舎、銀杏(いちょう)並木が連作の絵のように映る。創業は76年前だが、当時は今の窓も席もなかった。46年前、長屋だった店舗を改築する際、「表の景色を見ながらお茶を飲めたら」とこの姿に(現在、2階は見学のみ可能)。
『こころ』店舗詳細
大きな窓ガラスから見える景色になごむ『東向島珈琲店』(曳舟)
店の奥の階段を少し上がったスペースに、とっておきの窓はある。目の前は小さな児童公園。金網越しにイチョウの木や時計台、すべり台などの遊具がよく見える。「店を開こうと物件探しで訪れた時、窓を開けたらこの景色。僕もすっかり気に入って即決したんです」と店主の井奈波康貴さん。当時磨りガラスだった窓は、「お客さんにも喜んでもらおう」とクリアガラスに変えた。昼下がりになれば元気に遊び回る子供たちの姿に心和まされる。
『東向島珈琲店』店舗詳細
おこもり感ある席に、格子窓という幸せ『樹樹』(羽村)
窓好きにはたまらない。混んでいたって選ばなくたって窓際席に必ず座れる。なぜなら全座席がボックス席で、その全てに窓があるからだ。「もともとここは森で、46年前、木を極力切らずに喫茶店を作ったら建物も窓の配置もたまたまこうなったんです」と2代目の中野之暢(ゆきのぶ)さん。上から見ると変型「へ」の字の建物は左右で禁煙・喫煙席に分かれ、それぞれに木枠の格子窓。席によって覗(のぞ)ける景色も日差しも微妙に異なるので、座り比べたい。
『樹樹』店舗詳細
風情と香りでゴージャスな朝を『カフェ銀座仏蘭西屋』(銀座)
シャンデリアが照らす優雅な雰囲気で、ゴージャスな朝食を満喫できる銘店は1981年創業だ。たっぷりバターを染み込ませたトーストをかじれば、バターの香り高さに思わずうっとり。目玉焼き、ウインナー、サラダ付きのCセットなら活力ばっちり。コロンビアベースの特注ブレンドコーヒーも朝にうれしい軽い口当たりだ。
理想の喫茶店のパスタ『CAFE RIJN』(水道橋)
1962年に創業、二代目の田村秀樹さんが86年に引き継ぎ改装オープンした。大きなカウンターのあるゆとりの空間にアコースティックギターのBGMが心地よい。「十数年前に岸部眞明というギタリストに感動して自分も弾き始め、今じゃ店で発表会や岸部さんのライブもやってます」 と笑顔のマスターが作るパスタは16種もあり、量も味も 「喫茶店のパスタ」の理想型だ。
『CAFE RIJN』店舗詳細
野菜と果物が盛りだくさん!『カフェ ラフレッサ』(新日本橋)
レース越しに朝の日差しが差し込む窓際の席に、大量に用意された雑誌や新聞。通勤前にモーニングを食べて行く常連さんは数多く、笑顔を交わしながらママさんの手はフル回転だ。人気のモーニングはチーズトースト、ジャムトースト、バタートーストなど数種類から選べる。サイフォンで丁寧に淹れたコーヒーもお忘れなく。
『カフェ ラフレッサ』店舗詳細
大阪・老舗の玉子サンド『甘党の老舗 天のや』(麻布十番)
大阪・宗右衛門町で80年続いた甘味処。約 80年前、ダンスホールの踊り子さんたちに、深夜の軽食として雑炊を出していたが、「雑炊に変わる軽食を」と請われて初代が考案したのがこの玉子サンド。関西風たまご焼きは昆布とかつおの出汁を大量に含んでいるため食感がふわふわ。たまごの優しい味を辛子マヨネーズがピリッと引き立て、ほどよい厚みのパンとのバランスが絶妙。芸能人にもファンが多く、楽屋見舞いにも引っ張りだこだ。
『甘党の老舗 天のや』店舗詳細
丁寧な仕事でたまごが香る正統派『ワンモア』(平井)
「バターたっぷりが秘訣です」。ご主人福井明さんはそう言って、フライパンに惜しみなくバターを溶かしてたまごを焼く。近所の『さくら堂』がこの店のために焼くというパンは、1日寝かせてほどよく水分を抜くのがポイント。ミディアムレアに仕上げた熱々のたまご焼きを挟むと、パンが熱でしっとりするからだ。一口で食べた時の一体感はそこにある。職人肌の福井さんが手間を惜しまない姿勢から、このたまごサンドが生まれたのだ。
『ワンモア』店舗詳細
創業以来ペリカンのパン一筋のタマゴサンド『Smell』(浅草橋)
創業以来の付き合いである『ペリカン』から毎日配達してもらうパンで作るサンドイッチはもちもちで味わい深い。たまごサンドはゆでたまごが基本だが、お願いすればたまご焼きとのハーフ&ハーフも可能。一緒に挟んだ薄切りのキュウリがいい仕事をして、さりげないけれど完成度が高い。創業 50余年のハイカラな外観と重厚なカウンターやボックスシートが渋いザ・喫茶店だ。
『Smell』店舗詳細
築80年超の歴史が刻まれた豊かな空間『松庵文庫』(西荻窪)
靴を脱いで上がると視界が広い。壁一面にガラス戸がはめられ、その向こうに手入れの行き届いた庭が見えるからだ。深く腰かけ、ぼんやり景色を眺めていると、日がな一日こうしていたい気持ちになる。苦みの効いたコーヒーは、途中でミルクを足すとなお味わい深く、長居をそそのかされているよう。
日中ともなれば光が燦々(さんさん)と差し込むこの建物には、かつて音楽家の夫婦が住んでいた。ご主人が亡くなったのを機に家を手放すこととなり、近所に住んでいた岡崎友美さんが縁あって引き継ぐことに。岡崎さんは、「人が集う場所にしたい」と店を開くことを決意。86年の歴史がゆるやかに蓄積された建物の魅力に引き寄せられ、今日も老若男女が訪れる。
『松庵文庫』店舗詳細
レコードのやわらかい音に身を委ねる『Café Otonova』(浅草)
背の高いレコード棚はジャズを中心としたコレクションが充実。店主の渋谷航介さんが、時間帯や客の様子に合わせて選盤する。じっくり聴き入りたい人は、1階の真ん中にある大テーブルが特等席。吹き抜けの天井で音が大きく膨らみ、臨場感が増す!
その昔「駄菓子横丁」と呼ばれた一角にあるこの店は、元々和菓子の工房兼住居だった。がらっとリノベーションした建物に名残は少ないが、常連のおじいちゃん、おばあちゃんが懐かし話に花を咲かせているのに出くわすと、想像が広がる。
『Café Otonova』店舗詳細
名物は元祖のりトースト『珈琲専門店エース』(神田)
苦みが効いたオリジナルブレンドをはじめ、メキシカンバターコーヒーなど世界各地のアレンジコーヒーが楽しめる。カウンター席は店主との距離が近すぎて、気後れするが、イスは固定されておらず、高さも低いので、するりと座れて心地よい。カウンターの天板の角が丸くクッションになっているのも、腕にやさしい感触。穏やかな笑顔を絶やさない店主兄弟の流れるような動きが間近に見られ、心も舌も満たされる、休憩に最適な席だ。
『珈琲専門店エース』店舗詳細
カウンターと一体化するような心地よさ『トンボロ』(神楽坂)
カウンターに使われているのはブビンガと呼ばれる木材の一枚板。椅子はアメリカのアンティークで、カウンターテーブルの高さに合うように2㎝ほど切って短くしてある。お店の人とも、隣の人とも、遠すぎず近すぎず、すべてがちょうどよい絶妙の間合いだ。まるで味わいの違う2種類のブレンド(香りと酸味のA、こくと苦みのB)をその日の気分で選び、誰を気にすることなく、ぼんやりと頭を休めるのにうってつけの場所である。
『トンボロ』店舗詳細
水の豊かな深大寺で、温(ぬく)もりの一服『曼珠苑』(調布)
そば屋が軒を連ねる深大寺で、「おしるこ」の文字に誘われる。茶店のような木戸を開け、日本やインドの民芸雑貨を眺めながら奥へ進むと、うわ~。日の光と木の温もりがたちこめる空間にぶつかる。深大寺に生まれ、民藝運動に憧れた内田雅子さんが開店して51年。「寒村だけど水が豊かで、水車をまわす水音がゴーゴーと響いてた」と昔を語る。茅葺き屋根の母屋の裏に井戸があり、小豆をとぐ、煮るなどすべてに軟らかな井戸水を使う。
『曼珠苑』店舗詳細
/アクセス:京王線調布駅から深大寺行きバス終点下車、徒歩1分
庭を眺めて和みのひととき『ギャラリー・茶房 古桑庵』(自由が丘)
自由が丘・熊野神社の隣にある、100坪の敷地に立つ築 90年の母屋と、隠居所兼茶室だった『古桑庵』。ここで育った中山勢都子さんが、古きよき昔を伝え守るため、茶房として開放している。冬の凛とした庭を眺めながらのひとときにふさわしい抹茶は、まろやかな味とふわっとした泡を作るため2種を独自ブレンド。苦みより甘みが深く広がる。「作法は気にせず、正座もずっとしなくていいのよ」と中山さん。ああ、お尻に根が生える。
『ギャラリー・茶房 古桑庵』店舗詳細
自分のためにお茶を淹れる贅沢を『日本茶 さらさら』(三鷹)
玉川上水沿いに開店して約40年、日本茶専門喫茶店の先駆けとして知られる。煎茶は3種あり、「金」 は上品で深い甘みが広がる最高級品。ポットの湯を湯冷ましに入れひと呼吸置き、急須、そして茶碗へ注ぎ切る。お茶を淹れるという一連の作業を繰り返し、窓の向こうの風景を眺めながら、二煎、三煎とゆっくり味わうと、つい、追加のお茶請け270円に手がのびる。店主・花岡郁美さん曰く、「はらはらと雪が降る景色も最高なんですよ」。
『日本茶 さらさら』店舗詳細
良音に酔う!往年の革新的ジャズ喫茶『DUG』(新宿三丁目)
1967年(昭和42)開店。店内は、手作り真空管アンプやJBLのスピーカーから流れ出る音で満ちている。ジャズ喫茶=おしゃべり禁止、アルコールはもってのほかという時代、初代マスター ・中平穂積さんは欧米でのジャズを巡る旅を経て、もっとフランクに音楽に浸れる場を作ろうと開業した。息子の塁さんが手伝うようになってからは、さらにアルコールが充実。
『DUG』店舗詳細
遊び心だらけの夢空間、ブランコ席も!『gion』(阿佐ケ谷)
1日約 18時間営業、開業 39年来無休というパワフルさである。窓際、道路側、カウンター席などブロックごとに段差をつけたり、天井や床の素材や色を変えたりと、変化に富んだ造り。極めつけは、ブランコ席まで……! 「ぜんぶ私の遊び心。どこに座っても新鮮でしょ」と店主・関口宗良さん。下見に300軒の喫茶店を巡り、1年かけて自身で設計した。カクテルは種類を絞ったえり抜きのラインナップ。ウォッカのミルク割りは、飲みやすくて女性に人気。
『gion』店舗詳細
本から始まる地域のつながり『Book Cafe Diner イココチ』(高円寺)
「自宅にある本を店に持ってきて置いたのが始まりです。当初は売るつもりはなかったんですが」と店主の蔵下さんは話す。店内には壁際の本棚を中心に、絵本や小説、デザイン、建築、料理など、幅広いジャンルが揃う。席から手が届く距離にある小さな棚にも、まんべんなく本が詰まっている。このごろはラインナップを見て、お客さんが本を持ってきてくれることもあるとか。地域の憩いの場で、本が巡っていく。
『Book Cafe Diner イココチ』店舗詳細
純喫茶の色香を放ちつつ、ビジネスマンの味方!『珈琲 西武』(新宿)
上品なロココ調でしつらえられ、天井に伸びたステンドグラスが印象的。大人の社交場として、昭和39年より続くこの店は、スプリングのソファ椅子が座り心地よく、隣席とほどよい距離があって、昔から打ち合わせや出先仕事、はたまた、おさぼりにと重宝されてきた。3階を新設した2年前、フロアごとに無料Wifiを整備し、さらに一人ノマド席や、個室なども設置して進化を遂げた。とはいえ、「電源は全席ではないんですけど、以前からあったようですね」と、店長さん。疲れた脳にうれしいチョコレートパフェ1000円や、特製レシピで作る西武カレー750円など、喫茶王道の味や、細やかな心配りもうれしくて、ついつい長居になる。
『珈琲 西武』店舗詳細
デカ盛りはサービス精神の表れ『珈琲屋OB』(八潮)
ビッグサイズの飲み物が名物でアイスティーは何と1.8ℓ! 「飲み干す人がいると私たちが驚くくらい(笑)。食器には金魚鉢や花瓶を使ってるんですよ」と店長の千葉薫さん。一方でサンドイッチのマヨネーズからピザソースまで含め、料理はどれも手作りで手間隙を惜しまない。「本当は自家焙煎のコーヒーが自慢なんですが、大きい飲み物の陰に隠れて気づかれない(笑)。でもお客さんが喜んでくれればそれでいいです」。
『珈琲屋OB』店舗詳細
広い敷地にゆったりと時間が流れる『SENKIYA』(東川口)
オーナーの高橋秀之さんは、実家が営んでいた植木屋を引き継ぎ、カフェにリニューアル。ゆったりとした日本家屋では、ドアがきしむ音、キッチンの音、お客が席を立つ時に椅子を引きずる音、子どものはしゃぐ声、そのすべてがやさしく聞こえる。
コーヒーは常時3種類。なかでも『THE MODERN COFFEE』の焙煎豆で淹れた一杯は、冷めてもなお味わい深く、時間が経つごとに違う風味を醸す。のんびり飲むのにぴったりで、庭を愛(め)でながらその変化を存分に堪能したい。店内に雑貨やCDを扱う店を併設し、屋外にはギャラリーやクリエイターの工房。のんびり夕方まで、敷地内をぐるぐる回遊してみるのも楽しい。