【高円寺で長く愛される魅惑のカフェ・喫茶店】
本から始まる地域のつながり『Book Cafe Dinerイココチ』
「自宅にある本を店に持ってきて置いたのが始まりです。当初は売るつもりはなかったんですが」と店主の蔵下さんは話す。店内には壁際の本棚を中心に、絵本や小説、デザイン、建築、料理など、幅広いジャンルが揃う。席から手が届く距離にある小さな棚にも、まんべんなく本が詰まっている。このごろはラインナップを見て、お客さんが本を持ってきてくれることもあるとか。地域の憩いの場で、本が巡っていく。
『Book Cafe Dinerイココチ』店舗詳細
作り込みがすごくて読書に没頭できます『アール座読書館』
私語厳禁。古い机やベンチ、植物や水槽などを配した「読書するためだけの空間」は、異様でもあり、どこか懐かしくもある。宮沢賢治の『黄いろのトマト』に出てくるような博物館、長崎の教会、古い木造校舎、昔乗った列車――。造りたいお店のイメージは物件探しの段階からあったが、「結局、開店まで半年もかかってしまいました(笑)」と店主・渡辺太紀さん。長い時間をかけて作り込まれた、どこにもない場所がここにある。
『アール座読書館』店舗詳細
薄闇と音の洪水に埋没し、ひっそりと読みふける『ルネッサンス』
スタッフが「全国で一番敷居が低いんじゃないかと思います」と語る、会話もOKの名曲喫茶。かつて中野に存在した名曲喫茶『クラシック』の家具を使用し、同店おなじみの大工さんが作り上げた空間は、2007年にオープンしたのが信じられないムードを漂わせる。地下演劇の舞台のように入り組んだほの暗い座席で、クラシックに身をゆだね頭の芯を痺れさせれば、難解な詩集や哲学書のわからなさがむしろ楽しくなってくる。
『ルネッサンス』店舗詳細
夢見る人たちを迎い入れる駅前のアメリカンダイニング『Yonchōme Cafe』
『Yonchōme Cafe』は高円寺駅のホームからも見える老舗のカフェで、オープンは1989年。数々の映画やドラマの撮影が行われ、高円寺ゆかりの著名人たちがそれぞれの思い出を持つ。高円寺の文化を育んできた場所のひとつだ。
オーナーがニューヨーク留学中に好きだったアメリカンダイナーをイメージした店内。鉄製のフェンスがあるのは、ニューヨークの街並みを意識してのことだ。
メニューが豊富なのも『Yonchōme Cafe』の特徴だが、やっぱり代表的なメニューはタコライスだろう。ピリ辛の自家製チリミートが食欲をそそり、ボリュームもたっぷり。表面には野菜がたっぷりと野菜不足になりがちな人にもぴったりだ。
『Yonchōme Cafe』店舗詳細
ソムリエがコーヒーとスイーツのマリアージュを提案『Poem MANO A MANO COFFEE』
高円寺南口で約半世紀、街の人に親しまれてきたコーヒーハウス「ぽえむ」。2020年4月にリニューアルが行われ店名も少し変わって『Poem MANO A MANO COFFEE』となった。
現店主はソムリエとして、食べ物と飲み物のマリアージュを大切に提案し続けてきた五十嵐智香子さん。彼女が「うちのスペシャリテはこれなんです」とすすめるのが四万十栗のテリーヌだ。高知で取れた四万十栗のペーストを生地に混ぜ込み、中央にホールの栗を配置。焼き上がりに洋酒を丹念に染み込ませ、周囲にはアイシングをまとわせた。味、香り、風味、佇まいまで上等だ。
『Poem MANO A MANO COFFEE』店舗詳細
【個性が光るおしゃれカフェ】
スタイリッシュさと手作りスイーツが魅力のコーヒースタンド『RAD BROS CAFE』。
高円寺駅から中野に向かう線路沿いを進み、環七を渡ってすぐのところに『RAD BROS CAFE』はある。高円寺らしからぬスタイリッシュな店だ。
手作りのスイーツの中でいちばん人気はオリジナル バスクチーズケーキ。チーズと生クリームは北海道産、小麦粉ではなく米粉を使い、砂糖もてんさい糖を使うなど、原材料は厳選している。生地はぎゅっと詰まっているが、フォークを入れた時と口に入れた時で、重さにギャップがあるのが不思議だ。
コーヒーは、セレクトショップのような形式。コーヒーにしろケーキにしろ、定番はありながら、毎月何かが変わっているというのも、店を訪れる楽しみとしておもしろい。
『RAD BROS CAFE』店舗詳細
古いビルの3階に広がるもう一つの物語でティータイムを。『エセルの中庭』
古いビルの3階にある『エセルの中庭』に入店するには、2階まで登った後にドアを開け、さらに狭い階段を上がる。階段は明らかに別世界に繋がっている。
オーナーは同じビルの2階にあるおしゃべり禁止の読書カフェ『アール座読書館』の渡邊太紀さん。少年の頃から宮沢賢治やミヒャエル・エンデに親しみ、大人になってからは洋館やアンティークショップ巡りも楽しんだ。その2つが融合したのが『エセルの中庭』だ。
第2次世界大戦前後の英国に暮らしていた少女エセルが登場するストーリー『中庭のエセル』が背景になっている。メニューは、ドリンクは紅茶が中心で美しく華奢なポットで提供される。スイーツ類もエセルの物語に登場することを想定したもの。メニューブックには、それぞれに背景となるストーリーが添えられている。
『エセルの中庭』店舗詳細
手作りトゥンカロンが人気。最新韓国スイーツ&カフェの発信基地『The Sugar Forest』
『The Sugar Forest』は韓国版マカロン、トゥンカロンのお店だ。
「もともと韓国人は甘いものはそれほど好きではありません」話すのは韓国・釜山出身のパティシエ、金仁子(キム・インジャ)さん。フランスと同じ味では受け入れられなかったマカロンを、韓国人の味や食感の好みに合わせて甘さ控えめにアレンジ。かわいさも相まって人気が出たのがトゥンカロンだ。
店内では1階にも2階にもあるネオンサインに注目してほしい。韓国で今、流行していると取り入れた。2022年は『The Sugar Forest』を震源地として、ポップなネオンサインの前で撮ったかわいい焼き菓子の写真をSNSに投稿することが、日本でも流行していくのかもしれない。
『The Sugar Forest』店舗詳細
ほっこりおいしく野菜不足解消!ヴィーガンカフェ『vege & grain cafe meu nota』
オーナーシェフ、伴奈美さんが訪れたニューヨークで印象的だったのがヴィーガンのレストラン。どんなレベルのベジタリアンやアレルギーの人も一緒に食事ができる空間を東京にも作りたいと、目標だった独立を果たしたのが『vege & grain cafe meu nota』だ。
ランチの人気メニューはヴィーガン ミールス1380円とベジ&グレイン デリ プレート1250円。どちらもワンプレートだが、その日によって内容は異なる。総菜は、はっとする組み合わせのものが多い。例えば千切りのにんじんといえば、オレンジ風味のサラダが定番だが、海苔と合わせて磯和えに。水菜と油揚げといえば煮浸しがお決まりのところ、水菜は生のままマリネに。
『vege & grain cafe meu nota』店舗詳細
取材・文=野崎さおり、渡邉 恵(編集部)、信藤舞子、屋敷直子、佐藤さゆり 撮影=野崎さおり、門馬央典、金井塚太郎、花岡慎一