穏やかな国産紅茶に心が和む『サルトリイバラ喫茶室』
目当ては国産の紅茶。立ちのぼる香りに鼻先をくすぐられ、つい目尻が下がる。外国産に比べてボディは軽めとされるが、各地の農家に店主・中野木綿子さん自ら赴き、取り揃えた品々は、しっかりした味わいのものやフルーティなタイプなど幅広い。運ばれてくる時にはポットから茶葉を外してあるので、最後の一滴まで完璧なコンディションなのもうれしい。「温度が下がると香味の感じ方に変化が生じます」。その豊かな表情にも、ときめく。
『サルトリイバラ喫茶室』店舗詳細
本から始まる地域のつながり『Book Cafe Dinerイココチ』
「自宅にある本を店に持ってきて置いたのが始まりです。当初は売るつもりはなかったんですが」と店主の蔵下さんは話す。店内には壁際の本棚を中心に、絵本や小説、デザイン、建築、料理など、幅広いジャンルが揃う。席から手が届く距離にある小さな棚にも、まんべんなく本が詰まっている。このごろはラインナップを見て、お客さんが本を持ってきてくれることもあるとか。地域の憩いの場で、本が巡っていく。
『Book Cafe Dinerイココチ』店舗詳細
作り込みがすごくて読書に没頭できます『アール座読書館』
私語厳禁。古い机やベンチ、植物や水槽などを配した「読書するためだけの空間」は、異様でもあり、どこか懐かしくもある。宮沢賢治の『黄いろのトマト』に出てくるような博物館、長崎の教会、古い木造校舎、昔乗った列車――。造りたいお店のイメージは物件探しの段階からあったが、「結局、開店まで半年もかかってしまいました(笑)」と店主・渡辺太紀さん。長い時間をかけて作り込まれた、どこにもない場所がここにある。
『アール座読書館』店舗詳細
薄闇と音の洪水に埋没し、ひっそりと読みふける『ルネッサンス』
スタッフが「全国で一番敷居が低いんじゃないかと思います」と語る、会話もOKの名曲喫茶。かつて中野に存在した名曲喫茶『クラシック』の家具を使用し、同店おなじみの大工さんが作り上げた空間は、2007年にオープンしたのが信じられないムードを漂わせる。地下演劇の舞台のように入り組んだほの暗い座席で、クラシックに身をゆだね頭の芯を痺れさせれば、難解な詩集や哲学書のわからなさがむしろ楽しくなってくる。
『ルネッサンス』店舗詳細
大人もはしゃぎたくなる、絵本の世界『ムッチーズカフェ』
店主のムッチさんと絵本専門士のまどかさんは、大学生の頃、将来一緒に店をやろうと約束。4年ほど前に満を持してオープンし、昔懐かしい名作から旬の新作まで、まどかさんセレクトの絵本をずらりと並べている。その中には、教訓や風刺、シニカルな笑いを含んだ、大人だからこそ楽しめるものもたくさん! 物語からヒントを得たというメニューも多く、お題となった絵本はどれか、陳列された中から探し出して答え合わせをしてみるのも面白い。
『ムッチーズカフェ』店舗詳細
構成=株式会社エスティフ 取材・文=渡邉 恵(編集部)、信藤舞子、屋敷直子、佐藤さゆり 撮影=門馬央典、金井塚太郎、花岡慎一