古くから日本人が親しんできた飲み物といえばお茶。居酒屋などではウーロンハイや緑茶ハイは定番ドリンクだ。しかし、どこで飲んでも同じ味……。違いはお酒が濃いか薄いかぐらいだ。要するに店側の研鑽が足りない。
そう嘆くアナタに朗報。数年前から異なる要素の組み合わせを追求した"ハイブリッド系"のお茶割りを出す店が続々と登場しているのだ。
ブームに先鞭をつけたのは学芸大学の、その名もストレートに『茶割』。10種のお茶と10種のお酒、すなわち100種のお茶割りが楽しめるという。さっそく訪れてみよう。
100種のおいしさの違いを確かめたい『茶割』
他所ではなかなか飲めない、レアなお茶割りを作ってもらった。おお、ラムや泡盛ですらとろけるような優しい味に化けるぞ。酒をあおるというよりは「お茶を嗜んでいる」感覚だ。「僕が一番好きなのはアールグレイとブランデーの組み合わせ。お茶はアルコールのキツい部分を消してくれるんです。それが、お酒をあまり飲まない若い世代にも人気の理由でしょうね」(店長・根岸寛爾(かんじ)さん)
100種のお茶割り、部位と味付けが異なる100種の鶏の唐揚げが楽しめる(いずれも440円~ 660円)。泡盛、ジン、ブランデーなどのお茶割りは相当レア。お茶は近所の日本茶専門店『今井園』から仕入れているという。定期的に変わる「今月のお酒」と「限定茶」も要チェック。今年3月には目黒に2号店がオープンした。
『茶割』店舗詳細
九州産の高級茶葉を使ったカクテル『INARI TEA』
お次は恵比寿の『INARI TEA』。お茶が主役のカクテルを研究している店だ。ここでは、数日前に完成したという和紅茶とウォッカのカクテルをいただいた。和紅茶の味と香りはそのまま。ウォッカをほのかに感じ、グリオットが花を添える。
「通常のカクテルは分量だけですが、日本茶カクテルはそこに淹れ方が加わります。さらに、日本茶は何かと混ぜると特徴が簡単にかき消されてしまう繊細なものなので、本当に難しい」(オーナー・重松弘毅さん)
バーテンダー、パティシエらのチームで常に新メニューを開発している。写真の「リトル・オデッサ」は「ニューヨークに同名のロシア人街があるんですが、彼らが上等な日本茶を使ってウォッカを飲んだら……という想像を膨らませて作ったカクテル」(重松さん)だそう。
『INARI TEA』店舗詳細
日本一のウーロンハイをご賞味あれ『酎ハイスタンド 練屋』
ラストは練馬の『酎ハイスタンド練屋』。この店はウーロンハイの種類とこだわりではどこにも負けない。看板メニューを飲み比べてみると……。ウーロンハイってこんなにお
いしかったっけ。
「茶葉としては凍頂が一番クリアで鼻に抜ける香りがあります。これを基準にして自分の好みを探してみてください」(オーナー・水野功一さん)
お茶割りはなんとなく体によさそうだし、今回飲み歩いた経験上、翌日にも響かない気がする。結論。「マスター、お茶割りお代わり!」。
ウーロン茶だけでも数種類を取り揃え、「日本一おいしい烏龍ハイ」を自負する。焼酎は主張が少なくお茶の味を邪魔しないキンミヤ限定。ベースのお酒を固定すると、お茶の味と香りの違いがよりわかりやすくなるという。鶏の烏龍茶煮込み300円などのオリジナル料理も人気だ。
『酎ハイスタンド 練屋』店舗詳細
取材・文=石原たきび 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2019年12月号より