絶品肴が地酒の味をふくらます『地の酒しん』[千鳥町]
「食中酒として日本酒はクオリティが高いですね」と、強面(こわもて)の目尻を下げる店主の新保雅敏さん。季節を追っかけながら、30種ほどを揃え、酒好きにはたまらない。対する肴は、大田市場で目利きした魚が中心。ミョウバン臭さのない甘いウニなど、刺し身の質に驚くが、ポテトサラダがまた、杯を誘う。サクにならない端を桜チップでスモークし、ジャガイモにたっぷり加えている。酒は半合でも供してくれ、しっぽり酔いたい夜にいい。
『地の酒しん』店舗詳細
刺し身から〆(しめ)まで魚三昧『釣り魚の店 舟武』[旗の台]
「珍しい魚とお酒を楽しんで」。1970年の開業時から変わらない思いを、若大将・佐々木隆吏さんが受け継いだ。一歩入ると、黒板に力強く綴(つづ)られた魚と料理名が目に飛び込む。千葉県千倉から届く釣り魚を主に、水揚げ少数で市場に出荷しない珍しい魚がどっさりだ。注文必須は、刺し盛り。初秋なら、カイワリ、キントキ、クロシビカマスなど、魚通も喉を鳴らすはず。白身は日本酒、ナメロウは焼酎でと、魚種で酒を変えるのも楽しいぞ。
『釣り魚の店 舟武』店舗詳細
駅近の路地裏で凄腕料理に前のめり『大衆酒場 栄』[荏原中延]
開店当初は、芝浦に出向いて仕入れるモツ焼きが看板だった。が、洋食のコックから和食に転身し活躍した料理の腕がバレて(!)、常連客の要望でメニューが増えていった。「喜んでもらえるのが一番ですから」と、陽気な店主の菅原幸広さんが目を輝かせる。故郷の宮崎産を筆頭に、産地が際立つ素材を大切に、包丁を握る。お義母さん手製の味噌や梅酒も大活躍だ。黙々と食べて飲み続ける一人客には「なぜか女性が多いんだよ」。
『大衆酒場 栄』店舗詳細
150人の宴会もOKな昭和薫る大箱酒場『酒蔵ごたんだ』[五反田]
目黒川を望む店内は、ざわざわと響く談笑が心地よい。150人収容の広さゆえ、突然大人数も、貸し切り宴会も可能な頼れる店なのだ。ひと極目を引くのは、ずらっと並ぶ焼酎の一升瓶。人気銘柄やプレミアムまで品揃えが酒屋並だと思ったら、なんと、業務用酒屋が母体だった。店主は、「自慢は、板前が作る手の込んだ料理です」と、おすすめを指南。「飲む人は、絶対ネギ系」と、ニラ玉を。甘辛味で、日本酒もう1つ!
『酒蔵ごたんだ』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり、松井一恵(teamまめ) 撮影=井原淳一、オカダタカオ、木村心保、高野尚人