半世紀迎えた知の宝庫
大衆誌を中心に、明治時代以降に出版された80万冊以上の雑誌を所蔵。『文藝春秋』『an・an』など、現役雑誌の貴重な創刊号も手に取れる。大宅の自宅を増改築した8室の書庫が、迷宮のように入り組む姿は圧巻だ。
利用者は1階の端末で記事を検索し、受付で閲覧申請をするのが流れ。閉架式のため、通常は書庫に入ることはできないが、コロナ禍以前は「迷宮書庫探検ツアー」と題した見学会も定期的に実施していた。現在ツアーは休止しているものの、「事前に問い合わせていただければ、少人数での見学はいつでも受け付けています」と同館主任の黒澤岳さん。
記事の分類は「大宅式索引分類法」と呼ばれる独自の方法で整理されているのが最大の特徴で、知りたい情報をより細かく、多角的に得ることができる。これらの索引は、日々専任スタッフが雑誌を1ページずつ読み込みながら、手作業で作成しているものだ。そんな網羅性の高さから、マスコミ関係者を中心に愛されてきた大宅文庫だが、インターネットの普及などで利用者は激減。経営危機に瀕した同館を救うべく、昨夏には「パトロネージュ」という支援組織が発足されたほか、50年の節目を記念して、来春には全所蔵雑誌を記録した「大宅壮一文庫所蔵総目録」が刊行予定。困難な状況下でも、雑誌文化の継承のため、試行錯誤しながら歩みを進めている。
同館事務局長の富田明生さんは「雑誌はその時代の生活を映す鏡です。お酒に似て、時間が経つほど魅力を増すもの。マスコミ関係者だけでなく、より多くの人に所蔵雑誌を手に取ってもらいたい」と展望を語る。
懐かしの雑誌を探してもよし、気になる話題の記事を集めてみてもよし。閲覧室で静かな冬のひとときを過ごしてみては。
『大宅壮一文庫』詳細
取材・文・撮影=吉岡百合子 (編集部)
『散歩の達人』2021年1月号より