夕方、「浅草東武ホテル」にチェックイン
東武スカイツリーライン浅草駅から徒歩1分……いや、信号が青なら30秒もかからないのではないかという立地の「浅草東武ホテル」。浅草駅とのツーショットが撮れちゃうほどの近さなのだ。今夜だけは「浅草寺? あれはウチの庭だよ」と言わせてほしい。
お部屋に荷物を置いて身軽になったら、さっそく“近所”を散歩しに出かけよう。
名店『ヨシカミ』で腹ごしらえ!
ディナーには少々早いけれど、まずは腹ごしらえだ。というのも、ランチ時や夕食時は混んでいて列ができる人気店に行きたいから、比較的空いている夕方を狙ってみたというわけ。
その人気店というのが、1951(昭和26)年創業の老舗洋食店『ヨシカミ』だ。
この日注文したのは、定番かつ人気メニューであるビーフシチュー。大きめなカットの具がゴロゴロと山積みになり、そこへ滑らかな照りが美しいソースがかかっている。これほど心躍る一皿があるだろうか。
客層は観光客が大半だが、外国人のお客さんは全体の1割程度で、圧倒的に日本人が多いという。日本人による、日本人のための洋食。東京浅草を改めて歩こうぜという今回の散歩にはもってこいの店なのだ。
ホッピー通りでふらりと一杯
さて、満腹で幸せな気分になって『ヨシカミ』を出る。古くから繁華街として栄えた街・浅草のなかでもとりわけ大衆娯楽の中心だったこの浅草六区エリアは、平日の夕方でもにぎやかで歩いていて楽しい。
六区の歴史を滔々(とうとう)と語って聞かせる車夫さんの声に耳を傾けたり、浅草が輩出したスターの写真が飾られた街灯プレートを眺めたりしながらそぞろ歩くうちに、ふらりとこんな通りに入り込んだ。
提灯(ちょうちん)を下げた大衆酒場が軒を連ね、昼間っから酔う気満々の大人たちがうろちょろする……御存知、ホッピー通りである。
冬にこういう酒場で飲むと、初めは寒くて凍えながら飲んでいるのに、終盤はポッカポカで「暑い」とか言っちゃうのが素晴らしい(おそろしい)ところ。
いや、今日は凍えたって問題ないのだ。数分歩けば宿に帰れるのだから……。
仲見世通りを独り占め
すっかり夜も更けた。六区のあたりは日が暮れてさらに活気が増すけれど、逆に雷門周辺の店は次々と暖簾(のれん)を下ろしてゆく。日中のにぎやかさとは一味もふた味も違う雰囲気で、同じ道を歩いても全く飽きない。
人のいない仲見世通りで注目すべきは、各店のシャッターに描かれた壁画。原画の『浅草絵巻』は、平山郁夫教授の監修のもと東京芸術大学の大学院生が手掛けたもので、四季折々の伝統行事が鮮やか過ぎない華やかさで描かれている。約400mも続くこの壁画を眺めて歩くと、もはや商店街というより画廊にいる気分だ。
さらに、夜は浅草寺も美しい。静まり返った本堂に、ぽつりぽつりと参拝客が訪れる。帰宅途中のサラリーマンと思しき人が、静かに一礼して帰って行った。
部屋に戻って窓の外をのぞくと、浅草寺と仲見世通りが見えた。
早朝の隅田川沿いもいとをかし
翌日は昼まで眠りこけて……という過ごし方も悪くないが、それは家でもできる。睡魔を振り払い、日の出とともに起き出して、朝食前の散歩へ繰り出した。
隅田川沿いの道にはランナーや犬を連れた地元の方しかおらず、大観光地・浅草にいることが嘘のような静けさ。どんな二日酔いでも爽快な気分になること請け負いだ。
途中で隅田川を逸れ、待乳山聖天の裏から吉原へと700mほど続く山谷堀公園へ。その名の通り水路だったところで、かつては両岸に船宿や茶屋が並び、数多の遊客が通ったそうだ。現在は公園として整備されていて、春は桜が美しく、夏は隅田川花火大会の穴場になる。
ホテルに戻る頃にはすっかりお腹が減っているが、朝食の心配はご無用。今回の楽しみはホテル3階のレストラン「壱之壱(いちのいち)」でいただく朝食だ。和洋手作りの総菜など約60種類のメニューが並ぶビュッフェ形式(新型コロナウイルス感染症対策のため提供形態が変更となる場合あり)。レストランの名前は、このホテルの所在地「浅草一丁目一番地」にちなんで名づけられていて、広々とした窓の外は目の前が東武スカイツリーライン浅草駅だ。
もちろん、宿泊は素泊まりのプランにして朝ごはんが食べられる店を探したり、喫茶でモーニングをいただいたりするという手もある。
なお、「Go Toトラベルキャンペーン」対象プランを利用すればお得に宿泊できる。
王道のスポット&コースだが、一味違う“浅草さんぽ”になった。都民でも都内泊、泊りがけでの街歩き。ぜひお試しあれ。
取材・文・撮影=中村こより(編集部)