尾張屋

明治生まれの文豪・永井荷風が毎日通った創業160年の老舗そば処

えび天は別盛りも可能。サクサク食感と汁がしみた味の両方たのしめておトクだ。

幕末から6代にわたって伝統の味を受け継いできた老舗のそば処。『尾張屋』という店名は、火消し屋だった初代の元上司で、浅草寺の門番も務めた幕末の侠客・新門辰五郎が「えびの尾を張るように勢いよく」との思いを込め命名した。大量のかつお節を使い、強火で1時間半かけて旨味を濃縮させたつゆは、毎日食べても飽きない味。実際、文豪・永井荷風のように、足繁く通う常連客も少なくないという。名物の天ぷらそば1600円は、どんぶりからはみ出すえび天が目をひときわ引く人気の一品。手間暇かけて作った汁に、天ぷらからしみ出たごま油とえびの旨味が溶け合うと、深いコクと何段階にも押し寄せる風味がたのしめる。

永井荷風は、毎日12時5分に訪れては同じ席に座ってかしわ南蛮を注文したという。

『尾張屋』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草1-7-1 /営業時間:11:30〜20:00/定休日:金/アクセス:アクセス:地下鉄浅草駅から徒歩5分、東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)浅草駅から徒歩5分、つくばエクスプレス浅草駅から徒歩5分

佐藤

コスパもボリュームも大満足! 隠れ家的洋食店で牛タンシチューを堪能

初めて訪れた人からはきまって「こんな値段で本当にいいんですか!?」と驚きの声が上がるという。

席数わずか8席の隠れ家的な洋食店『佐藤』の看板メニューは、味よし、コスパよし、ボリューム満点と3拍子そろった牛タンシチュー。厚さ3cm近い牛タンの存在感に圧倒されるが、ひとたび口に含めばやわらかくとろけそうな味わい。サラダ、コンソメスープ、バケットまたはライス付きで1600円とかなりお得だが、ランチの牛タンシチューは、牛タンの厚みが少し変わるだけで1000円と型破りの価格設定。「毎日食べられる味を目指しています」と語るのは、店主の佐藤さん。家族にも食べさせたくなるシチューは、タッパ持参でのテイクアウトも可能だ。

店主の佐藤さん。こだわりと呼べるものはないが、牛タンの下処理だけは徹底的に行う。

『佐藤』店舗詳細

住所:東京都台東区西浅草2-25-12-1F/営業時間:11:30〜14:00、17:00〜21:30LO/定休日:火/アクセス:つくばエクスプレス浅草駅から徒歩3分

グリルグランド

浅草観音裏にある老舗洋食店の名物は、ビターさがクセになる濃厚デミグラスソース

1941年の創業当初から浅草観音裏に広がる花街で話題に。創業78年目にあたる2019年には『情熱大陸』にも取り上げられ注目を集めた。

かつては浅草の花柳界で人気を集めた老舗洋食店『グリルグランド』の名物は、3代目シェフが2週間かけて作る濃厚デミグラスソース。ビターさと旨味が絶妙に絡み合うその魅力は、ビーフシチューやハヤシライスなどで堪能できる。また、“追加の一品”として近年人気を集めているのが、日本コロッケ協会主催のコロッケグランプリで6回連続金賞を受賞したカニクリームコロッケだ。自家製ラードでカリッと仕上げた食感と香ばしさ、口いっぱいに広がるカニの風味にハマる人続出中。こちらは1個から注文可能だ。

看板メニューのビーフシチュー3630円は、特製デミグラスソースにさらなる手間を加えた逸品。

『グリルグランド』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草3-24-6/営業時間:ランチ11:30〜13:45LO、ディナー17:00〜20:30LO/定休日:日・月/アクセス:地下鉄銀座線・東武スカイツリーライン浅草駅徒歩7分、都営浅草線浅草駅徒歩10分

大黒家天麩羅

看板メニューは海老天丼! おいしさの秘密は秘伝の甘辛いつゆにあり

昔ながらの民家を思わせる店舗。空襲による延焼のおそれがあったため、一度は取り壊されたが、昭和21年に再建。修復と補強を行いながらも、昔の面影を守っている。

浅草・伝法院通りにある明治20年創業の老舗天ぷら店。この店の看板メニューは、秘伝の甘辛いつゆに、最高級のごま油でカラッと揚げた海老天をくぐらせ、炊き立てのコシヒカリの上に盛り付けた海老天丼だ。フタをして、少し蒸らしてから食べるその味は、濃厚かつ旨味たっぷり。「店主にだけ作ることが許されている天丼のつゆをはじめ、味噌も甘酢もすべて自家製です」と語るのは、5代目店主の丸山力三さん。そのこだわりは、この店が提供するすべてのサービスに息づいている。

天丼は1600円から。人気は、海老天4本入りの海老天丼2000円。

『大黒家天麩羅』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草1-38-10 /営業時間:11:00〜20:30(土・祝は〜21:00)/定休日:無/アクセス:私鉄・地下鉄・つくばエクスプレス浅草駅から徒歩4分

モンブラン

安い・早い・ウマい! 浅草・雷門通りにある行列必至のハンバーグ専門店

鉄板焼きハンバーグステーキは、950円〜。ハンバーグシチュー1150円は、自慢のやわらか&ジューシーなハンバーグに、牛スジや特製デミグラスソースを入れてじっくり煮込んだシチューをかけた人気の一品。

国産牛肩ロース100%の手ごねハンバーグが手ごろな価格で食べられる、老舗ハンバーグ店。やわらかくてジューシーなハンバーグは、濃厚チーズソースや和風ソース、ピリ辛トマトソースなど、個性の異なる8種のソースからお気に入りを選んでいただく。この店のハンバーグの特徴は、アルプスの名峰モンブランの形を模した山型フォルム。これは、創業者の松家健一さんが何百種類ものハンバーグを試作した末にたどり着いた「肉汁を閉じ込めるのに最適な形」だとう。「安さも味も譲れないから、うちは薄利多売でいいんです」と、松家さん。安くてウマい、その上待ち時間も短い。人気の秘密はここにある。

行列はできるが、待ち時間は〈列に並んでいる人数〉×分を超えることはない。着席後は5分以内に料理が出てくるスピード感も人気の秘密。

『モンブラン』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草1-8-6-1F/営業時間:11:00~21:30/定休日:水(祝の場合は営業、翌日休)/アクセス:地下鉄浅草駅・東武スカイツリーライン浅草駅から徒歩6分、つくばエクスプレス浅草駅から徒歩5分

ヨシカミ

浅草で昔ながらの洋食グルメといえばこの店! 懐かしくもたしかな味わいにハマる

カリッと焼き上がった豚ロースに、醤油ベースのソースが絶妙にマッチ。

ビーフシチューやポークソテー、メンチカツ、オムライス、一口カツなど、定番の洋食が味わえる昔ながらの洋食店。飾らない店構えながら、地元・浅草の老舗からも一目置かれるのは、そのたしかな味と客足の途切れない人気ゆえ。おすすめは、とろける食感のビーフシチュー2600円と醤油ベースのソースが豚の旨味を絶妙に引き立てるポークソテー1550円。「ライスやパンとも合いますが、自由な組み合わせをたのしんで」とは三代目社長・吾妻弘章さんの言。ビーフシチューとスパゲティー、ポークソテーとドライカレーといった異色の組み合わせがたのしめる平日の「たっぷりランチ」1900円(コーンスープ、コーヒーまたはアイスクリーム付き)も見逃せない。

オープンキッチンは、調理をパフォーマンスとしてたのしむコックたちのステージだ。

『ヨシカミ』店舗詳細

金太楼鮨 馬道店

このおいしさでこの値段。お見事

価値あるランチ、ちらし(さくら)800 円。50円プラスでシャリを大盛りにできる。

花街・象潟に近く、ときには粋な芸者さんの姿もあるが、お客さんの大半は地元住民。目当てはランチメニューで、通常1100円のさくら(並)ちらし・にぎりが800円、上2090円が1400円とお値打ち価格。連日通う人も少なくない。金太楼鮨の創業は大正13年。東浅草の本店を中心に直営店16店を擁し、一括大量仕入れができるので新鮮なネタを良心価格で提供できるという。店長の増元裕之さんや職人さんたちも気さくで、いつも和やかな雰囲気が漂う。

馬道店に35年という店長の増元裕之さん(右)とイナセな千葉勇さん。「バクダンも旨いっすよ」。バクダン990円はウニ、イクラなどを混ぜて味わう。

『金太楼鮨 馬道店』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草3-35-10/営業時間:11:30~23:00(ランチは日・祝除く~14:00)/定休日:不定/アクセス:私鉄・地下鉄浅草駅から徒歩10分

水口食堂

メニューは100種類以上迷ったら定食を

本日のサービス定食・日替800円は生姜焼き。ご飯の量が選べ大はプラス100円、小はマイナス50円。サービス定食は日替、焼魚・煮魚(各4種類)の3コース。味噌汁150円、名物いり豚630円、まぐろ刺身1300円。

浅草六区で昭和25年から営業している定食屋。ずらりと壁に並ぶ木札に書かれたメニューは100種類以上。刺し身、煮魚、焼き魚、フライ物、生姜焼きなどいずれも旨いが、いつも感心するのは基本となるご飯とアサリの味噌汁のおいしさだ。サービス定食800円を食すると、ほっくり幸せな気分に。昼間から一杯やっているおじさんや若い女性、外国人観光客と客層も幅広い。雑多な浅草の雰囲気がそのままある感じも心地よい。

家族で切り盛りしている二代目水口正さん、初音さん、三代目淳さん。「気軽にお越しください」。

『水口食堂』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草2-4-9/営業時間:10:00~21:00LO(土・日は9:00~)/定休日:水/アクセス:私鉄・地下鉄浅草駅から徒歩9分

河金

でっかい百匁トンカツが売り

ロース百匁(380g)トンカツ1700円。ご飯と味噌汁各200円。

カウンターとテーブルが2つ。店内は広くはないが、トンカツはでっかい。ロース百匁(もんめ・380g)1700円をいただいた。ランチも旨いが、百匁肉の迫力はすごい。からっと揚がっていて、ジューシーな肉の味が口いっぱいに広がる。開業は大正7年。「河野金太郎が始めたんで、河金なんですよ」と、河野貴和さん。この金太郎さんが考案した「河金丼」がカツカレーのルーツだとか。

河野謙二さん・初江さん夫婦と息子の貴和さん。出前の注文も多く、チームワークは抜群。「家族でがんばってます」。

『河金』店舗詳細

住所:東京都台東区浅草5-16-11/営業時間:11:30~20:00(ランチは平日のみ~14:00)/定休日:土(不定)/アクセス:私鉄・地下鉄浅草駅から徒歩15分

ピーター

長年愛されてきた自家製カレー

レトロな壁画の前で味わうカレーはまさに昭和メシ。 福神漬け代わりの自家製ぬか漬けも絶品。コーヒー400円(カレーとセットで950円)、ハヤシライス(並)810円も。

浅草でカレーがおいしい店として知られている。ボリュームたっぷりのカレー(並) 680円は、野菜と肉がごろりと入っていて、コクがありスパイシーながら優しい味。店主の左東正子さんが、カレー粉に昆布とかつお節でとったダシを加え、いくつかの隠し味を入れて丁寧に煮込む。この作り方は昭和41年以来変わっていないという。黄金バットの作者として知られる加太こうじさんが、浅草ゆかりのスターたちを描いたレトロな壁画も見もの。

国際劇場のSKD(松竹歌劇団)の大ファンだった左東正子さん。

『ピーター』店舗詳細

住所:東京都台東区西浅草3-13-1/営業時間:10:00~21:00/定休日:日/アクセス:地下鉄銀座線田原町駅から徒歩8分

構成=フリート 取材 ・文=伊東邦彦、村岡真理子 撮影=伊東悦代、村岡真理子

浅草寺とその参道である仲見世商店街を中心として東西に広がる浅草。世界的にも有名な観光地であり、一時は日本人よりも海外旅行者の方が目立っていたが、コロナ以後は江戸情緒あふれる“娯楽の殿堂”の風情が復活している。いわゆる下町の代表的繁華街であって浅草寺、雷門、仲見世通り、浅草サンバカーニバルなどの観光地的なイメージや、ホッピー通り、初音小路のような昼間から飲める飲んべえの町としてとらえている人も多いだろう。また、和・洋問わず高級・庶民派ともに食の名店も集中するエリアだ。