気になるのは、なんとなく置かれている既製品のぬいぐるみ

ひとくちに「店頭に置いてある巨大ぬいぐるみ」と言っても、その形態はさまざまだ。ここでは保険会社のアヒルやスヌーピーなどの巨大ぬいぐるみは対象外としたい。彼らは会社名の入った前掛けやTシャツを身に着けており、企業の側から店頭に置かれるために生み出された者たちである。アウトドア用品を扱うモンベルショップの入り口にも立派な巨大熊がいるが、こちらも入口に立つために作られた、いわば受付熊だ。

そうではなく、私の探しているのは「既製品のぬいぐるみが、なんとなく置かれている感」が出ている熊であった。店頭に置くためにわざわざ購入してきたのか、或いは商店街の福引か何かで当たったはいいものの、置き場所に困って店頭に置くようになったのか。そのような物語が見えてくる巨大熊を見つけたいと思った。

1位は飲食店、2位は雑貨屋

ところで巨大なぬいぐるみであっても、熊ではない場合もある。私が見た限りではゴリラ、パンダ、ヒツジ、招き猫、アンパンマンなどがいた。これらもそれぞれに味わい深いが、やはり圧倒的に巨大ぬいぐるみは熊率が高い。

観察していくうちに「巨大プーさん」「巨大くまモン」のぬいぐるみも発見され、これを他の熊と同列に扱ってよいものかは迷うところであったが、ビジネスでその場にいる訳ではないことが確認された場合には「巨大熊」に含めることとした。

こうして各地で観察した店頭の巨大熊は34頭。店の業種別に見ていくと、飲食店が一番多く12店。次いで雑貨屋が6店、美容院が4店、土産物店・花屋・不動産屋が2店、パチンコ店・歯科医院・自動車販売店・クリーニング店・占い店が1店ずつであった。

田原町の某店の熊(秋)
田原町の某店の熊(秋)

新井薬師では、店先の木の椅子にちょっこりと腰をかけた巨大熊を発見したが、何の店かと思えばテディベア教室であった。これ以上「店頭の巨大熊」がしっくりくる店があろうか。

野ざらしになっている熊ほど愛情いっぱい?

「店頭」と言っても、野ざらしになっている熊、ひさしの下にいる熊、店内の入口にいてガラス越しに店の外にアピールする熊、と居場所には若干の違いがある。しかし野ざらしになっている熊がぞんざいに扱われているのかというと、一概にそうとは言えない。

調布の美容院では(巨大熊ではなくヒツジであるが)雨予報が出ている日にはぬいぐるみ自体を表に出さず、いつもはヒツジが座っている椅子に鉢植えを置いて代用している。更に言えば、季節ごとに衣装を着せ替えるなど、手をかけられた熊の割合も「野ざらし熊」の方が多い。野ざらしである以上、どうしても汚れや色褪せなどは避けられない熊たちであるが、その分店主たちの愛も深いのかもしれない。

 

田原町の某店の熊(夏)
田原町の某店の熊(夏)

ところで巨大熊たちを見ていて思うことがある。熊のぬいぐるみ、しかも巨大サイズとなれば、作っているメーカーも限られてくることであろうし、同じ顔かたちの熊があちこちにいてもいい筈だ。しかし、同じ熊を見かけることは稀なのである。一体店主たちはどこで巨大熊を探してくるのだろうか、そしてなぜ、店頭に巨大熊を飾るのだろうか。

次回はその謎に迫りたいと思う。

オギリマコレクション

絵・文・写真=オギリマサホ

なぜ店頭に巨大な熊を置く店が多いのか。その理由は実際に熊を置いているお店に聞いてみるより他はない。というわけで各地のお店の方にお話を伺ってみた。
2011年の11月、私は年賀状のデザインに悩んで公園にいた。その時ふとひらめいてしまったのだ。児童公園には実にいろんな種類の動物遊具がある。もしかすると十二支(じゅうにし)が揃うのではないか。そしてその十二支遊具にライダーの格好をしてまたがった写真を年賀状にすれば、12年分の年賀状デザインを考えずに済むのではなかろうか、と。ライダーの格好なのはただ単に私がバイク乗りだからだ。