エム君は5種類いる

そのM&M’sにはレッド・イエロー・グリーン・ブルー・オレンジの5色のチョコレートに、目鼻と手足がついたキャラクターが存在する。M&M’sの公式サイト(http://www.m-ms.jp/characters/)を見てみると、「言葉では言い表せないほどの美しさを持つ」グリーン、口癖が「どうせ食べられる運命さ」の投げやりオレンジ……と、5色それぞれに個性豊かなキャラクター設定がなされている。彼らの共通する使命は、M&M’sのパッケージやCMに登場し、日々チョコレートの宣伝に勤しむことだ。

そんなエム君(親しみと簡略化を込めてこう呼ぶ)の活動の一つに、スーパーや菓子屋の店頭に立ってM&M’sチョコレートを売り込むというものがある。早い話が、等身大(そもそもチョコレートの等身大がどれくらいかは不明だが、大体高さ1mくらい)の販促人形だ。現在多くの店に出回っているのが、赤または黄のエム君が頭上に大きな黄色い箱を掲げるポーズのもので、その箱にM&M’sを陳列して販売して下さいね、という意図なのだと推察する。

塩あんどーなつを売っていた調布のエム君

しかし街を歩いていると、結構な割合でエム君の頭上の箱に入っているものがM&M’sでない場合がある。例えば調布のとあるスーパー。エム君の箱に入っていたのは「塩あんどーなつ」であった。しかもご丁寧に「程よい塩気と中に入ったあんこが絶妙!」と書かれた宣伝POPまで箱に貼られてしまい、エム君の顔を半分隠してしまっていた。

はるばるアメリカから、M&M’sのチョコレートを売るために日本にやって来たエム君。それなのに顔を隠して「塩あんどーなつ」の宣伝をさせられてしまうエム君。理想と現実とのギャップとはかくも残酷なものなのか。

阿佐ヶ谷の食料品店の店先にいたエム君もまた、違う品を売らされる運命を背負っていた。彼が掲げていたものは「うまい棒 ¥9」。箱の中は整頓されて、数種類のうまい棒が綺麗に陳列されていたが、うまく納まるから良いというものではない。

お人よしすぎるのがイエローの欠点

名古屋・大須の菓子店には2人のエム君がいた。赤いエム君は冷暖房の効いた店内に近いところに設置され、頭上の箱にもM&M’sが陳列されていた。しかし店外にいた黄色いエム君の箱には国内他メーカーのチョコレートが隙間なくみっちり陳列され、更には「大須夏祭」と書かれた赤いTシャツを着せられていたのである。

同じくM&M’sのキャラクターとして生まれながら、この扱いの差。先に挙げた公式サイトのキャラクター紹介には、イエローの欠点として「お人好しすぎるところ」と書かれていた。お人好しであるがゆえに、自ら損な役回りを買ってしまったのだろうか。想像は尽きない。

大須にて。2017年

エム君の理想的な職場環境とは?

そんなことだから、本来の仕事に就いているエム君を見かけると「あぁ、よかったね」という気分になってしまう。戸越銀座では赤と黄、2人仲良く並んだエム君たちが、箱一杯に入れられた「カラフルボトルミルクチョコ」を掲げて誇らしげに店頭に立っていた。

多摩川のホームセンターで、M&M’sの小さい袋はエム君が掲げ、大きなファミリーパックは横のボール紙製什器に並べるという役割分担がしっかり定められた陳列を見た際には、ある種の美しささえ感じたものである。惜しむらくはその什器の箱がスニッカーズのものであったことだが、スニッカーズもM&M’sも同じくマース社のブランドなので、許容範囲内であろう。

調べたところによると、エム君は赤や黄だけでなく青などもいるほか、人形の胴体に商品が入れられるようになっているタイプのものもあるようだ。今後も店先で、街中で、エム君が本来の仕事に従事できているのかどうか、確かめていきたいものである。

 

戸越銀座にて。

絵・文・写真=オギリマサホ