2014年1月「原宿駅前歩道橋」

コープオリンピア前の巨大歩道橋

2014年1月、いつのまにか原宿駅前の歩道橋が姿を消した。駅前にあった歩道橋は巨大で、どちらの方向に行くにも便利だった。写真ではまだ両脇に歩道橋の一部と階段が残っている。ずいぶんとあの歩道橋は渡ったなあ。

2014年3月「青山ベルコモンズ」

黒川紀章設計。おしゃれな青山の象徴

3月31日、青山ベルコモンズが38年の歴史を閉じた。青山3丁目の交差点でランドマークのようにそびえ、付近にこれだけの商業施設が無かったので人気を集めた80年代の象徴でもあった。青山という場所柄、おしゃれで高級な佇まいで、1階の喫茶店はよく待ち合わせに使った。当時タクシーの運転手さんに「ベルコモンズの交差点まで」と言っていたのが懐かしい。2020年、この地には「the ARGYLE aoyama」がオープン。テナント、ホテル、レストランが入り、新ランドマークとして注目される。

2014年4月「銀座日航ホテル」

知る人ぞ知る”タクシーの行先”

同じく3月31日、銀座の日航ホテルが54年の歴史に幕を下ろした。こじんまりとした感じのいいホテルで、銀座と新橋の間にあり、まわりに飲食店やクラブも多く、待ち合わせや打ち合わせによく利用した。当時、タクシーの運転手さんに、銀座に行く時「日航ホテルの前まで」と言っていたが、今は何て言うんだろう?

2014年5月「渋谷 SHIBUYA AX」「六本木 スイートベイジル」

こういう音楽スポットがなくなった気がする

渋谷のライブハウス「SHIBUYA AX」が5月31日に、六本木のライブハウスレストランの「スイートベイジル」が5月25日にクローズした。前者は若者たちのライブハウス、後者は大人向けの音楽を楽しめるスペース。スイートベイジルでは平井堅のライブとか観たなあ。その後も、東京から音楽を聴ける場所がどんどん減っているようだ。

2014年5月「国立競技場」

東京オリンピック前回大会の象徴

1964年の東京オリンピックの象徴だった国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)が2014年5月いっぱいで歴史を閉じた。1958年に完成し東京オリンピックのメインスタジアムとして、開会式、陸上、閉会式の舞台となった。小学校4年の時、この競技場でオリンピックのマラソンを観戦し、目の前でアベベの独走や、円谷がヒートリーに抜かれた瞬間を見たことが思い出される。近年はSMAPや嵐の超ド派手なライブも楽しんだ。ポール・マッカートニーの公演が開演直前に中止になったのをゲート前で聞いてさみしく帰った事も今や思い出だ。

2013年当時、予約制で競技場の見学ツアーに参加して聖火台やトラック、ロッカールームなどを見学し、栄光の歴史に触れる事ができた(写真はその時撮影したもの)。そして新しく生まれ変わった新国立競技場、来年はどんなドラマを見せてくれるのだろう。

2014年5月「吉祥寺 バウスシアター」

爆音上映も懐かしい、吉祥寺ミニシアターの先達

5月31日、国立競技場の陰でひっそりと、「吉祥寺バウスシアター」が30年の歴史に幕を閉じた。演劇やライブもやる個性的な映画館として、若者の街吉祥寺の文化の発信基地としての役割を担ってきた。実験的な作品やアートな作品も上映し、劇場近辺は昭和を感じさせる風景だった。現在跡地は、アミューズメント施設「ラウンドワン」になっているが、吉祥寺ミニシアター文化の精神は、2018年にオープンした『アップリンク吉祥寺』に引き継がれている。

日々、街の表情が大きく変化する東京。2006年、私はふと思い立って、消えていく風景を写真に納めることにしました。「消えたものはもう戻らない。みんながこれを見て懐かしく感じてくれたらうれしいな」とそれぐらいの気持ちで始めた趣味でした。でもここ数年、街の変化のスピードは加速度的に高くなっています。戦後75年、高度成長からも50年経って、老朽化に伴う閉鎖、また東京オリパラに向けての再開発が進んだのも要因の一つ。特に渋谷、銀座地区の変貌は目をみはるものがあります。そんな気運を受けて、短期連載「東京さよならアルバム」を始めさせていただくことになりました。今回はその第1弾、閉鎖の”ピーク”ともいえる2014年上期に消えた風景たちです。素人写真ですが、あの時代を懐かしく思い出してもらえれば幸いです。写真・文=齋藤 薫