2014年7月「三軒茶屋シネマ」

煙草の匂いと硬い椅子が懐かしい

60年の歴史を持つ名画座「三軒茶屋シネマ」が7月に閉館した。数々の名画をリーズナブルな入場料で上映してきた名画座だが、最後の上映は『のぼうの城』と『そして父になる』。青春時代には数多くの名画座に通ったが、現在は23区内に残り10軒くらいしかない状況だ。もうもうとした煙草の匂いと硬い椅子が懐かしい。この劇場があった三軒茶屋のど真ん中、三角地帯は昭和の匂いが残るノスタルジックなエリアだが、その香りもずいぶんと失われてしまった。

2014年8月 有楽町「丸の内ルーブル」

ユニークなデザインのロビーが印象的な、落ち着いた映画館

有楽町マリオンの隣のビルにあった映画館「丸の内ルーブル」が8月3日、27年間の歴史を閉じた。最後の上映は、懐かしい『ボディガード』。エレベーターを降りるとユニークなデザインのロビーが待ち受ける、品のある落ち着いた映画館だった。シネコンが全盛になる中、個性的な映画館がひとつひとつ消えていったのだ。現在は、スタジオアルタが運営する演劇中心の「オルタナティブシアター」に生まれ変わっている。

2014年8月「新橋文化劇場」「新橋ロマン劇場」

出入り自由の昭和スタイル。上映中に電車の音が聞こえた

昭和32年(1957)から60年近く続いた「新橋文化」と「新橋ロマン」が、8月いっぱいで耐震補強のため閉館した。最後の上映は、新橋文化が『タクシードライバー』と『デスプルーフ』、ロマンはポルノ映画3本立てだった。出入り自由で自由席という昭和スタイル、新橋のガード下にあるので、上を電車が通ると走行音がBGMになるという昭和レトロな映画館だった。いつもはうるさい走行音が、学生時代『新幹線大爆破』を観た時はやたらリアルでハマっていたことを思い出す。

2014年12月 練馬区「江古田市場」

戦後の雰囲気もにじむ、昔ながらのマーケット

西武池袋線江古田駅からすぐ近くにあった、大正11年(1922)オープンの昔ながらのマーケット「江古田市場」。90年以上続いたこの市場が12月いっぱいで閉鎖してしまった。通りから中に入ると、総菜屋、豆屋、八百屋などが入っていて昭和というより戦後の雰囲気も感じさせてくれた。豆屋のおじさんもいろいろ説明してくれて人情味もたっぷり。令和の現在ではほとんど見ることができない光景である。

2014年12月「銀座ミキモト」ジャンボクリスマスツリー

銀座の冬を華やかに彩ったクリスマスの風物詩

銀座の名物、風物詩として1976年から親しまれたミキモトのジャンボクリスマスツリー。幾多のカップルや家族を見守ってきたこのツリーは、ニューヨークのロックフェラーのツリーと同じく、銀座、いや東京を代表するツリーとしてあまりにも有名だった。しかし「ミキモト」本店の建て替えに伴い、この年が最後のツリーとなってしまった。かつてクリスマスといえば華やかな銀座のネオンだったが、近年華やかさが薄まり、灯りも暗くなった気がするのは私だけだろうか?

2014年12月「新宿ミラノ」「シネマスクエアとうきゅう」

昭和の最後の大劇場と、ミニシアターの先駆け的存在

私が一番好きだった映画館、「新宿ミラノ座(新宿ミラノ1)」が12月31日に閉館し、58年の歴史に幕を閉じた。同時にミラノ2・3、「シネマスクエアとうきゅう」、「ミラノボウル」も閉館となった。「ミラノ座」は1000人以上入る都内最大の映画館で、昭和の最後の大劇場だった。50年以上前、父親に『サンダーバード』の映画に連れてってもらった時から、最も通い、最も思い出のある映画館だ。シネマ2も階段を降りて地下にある味わい深い劇場で、シネマ3は名画中心、昔は名画座ミラノという名前だった。

「シネマスクエアとうきゅう」は81年オープン、豪華な椅子とオシャレな雰囲気で、ミニシアターの先駆け的存在。「ミラノボウル」は、深夜も営業しているボウリング場で、酒に酔ったサラリーマンや若者でいつもいっぱいだった。2000年代初めに十数館あった歌舞伎町の映画館はすべて消え、今は旧コマ劇場跡の「TOHOシネマズ新宿」に変わってしまった。12月20日からは「新宿ミラノ座より愛をこめて」と、ラストショーを開催。ここでかつて上映された『荒野の七人』『アラビアのロレンス』『タワーリング・インフェルノ』『戦場のメリークリスマス』などが上映され、大晦日ラストの『E.T.』は、大劇場で立ち見が出るほどの超満員。上映終了後は紙吹雪と大拍手で感動のフィナーレを迎えた。跡地は閉館後6年たった2020年現在、まだ工事中。2022年には、高さ225mのエンタメ・ホテルなどの複合施設が生まれるらしい。

「ミラノ座」最後の上映『E.T.』終了後の場内。