学生街で人気を得た行列店
大学が3つもある西武池袋線江古田駅。駅から線路と並行する細い道は、裏通りといった風情だが、学生や会社員などいつでも人通りが多いエリア。歩きだしてすぐ、かなり目につくのが似顔絵の書かれた「つけ麺」の看板だ。
「超濃厚で超太麺」と書かれた黒板があり、その右側の階段を数段上がって左が店だ。入り口は奥まっているが、営業時間は階段や黒板付近に行列ができているので通りかかれば店を見逃すことはない。
店名のインパクトが強すぎる! 千葉と江古田の「長男」2店
店主はもちろん「ほそのたかし」、細野さんだ。自動車の専門学校に通いながら飲食のアルバイトをしていたそう。一度はメカニックとして就職したものの、やはりラーメン店をやりたい!と一念発起。アルバイト先で出会った「もんたさん」との縁が「長男」の始まりとなる。
2人でつけ麺の味を完成させ、千葉県の『長男、もんたいちお 』をオープンした。超濃厚スープと超極太麺という個性の強い味がうけ、連日行列の人気店となった。そして2021年、江古田で『長男、ほそのたかし』が姉妹店として開店した。
筆者はこの店の前を日常的に通っているため、開店直前に看板をつける現場を目撃している。「変わった名前の店ができるんだなあ」とぼんやり思いつつ、迎えた開店日は衝撃だった。営業時間前だというのにすでに行列ができ、細い裏通りは人であふれていた。「まだ開店していないのに、すでに人気とは!」とすさまじく驚いた。今思えば『長男、もんたいちお 』ファンが多かったと思うのだが、かなりの鳴り物入り感があったのは間違いない。その後は江古田で新たなファンも獲得しつつ、連日行列を作っている。
茹で時間12分のゴリゴリ太麺を、超濃厚スープが受け止める
どどん、と重量感のある深めの丼。特製つけ麺がやってきた。麺の茹で時間は12分。ちょっと長めだと思ったが、実際に麺を見てみると、この太さなら時間がかかるのも納得だ。
重みのある麺をスープにインすると、粘度の高いスープはどぶん、と低い音がした。ずぞぞぞぞぞぞっと思い切りすすり上げた瞬間、脳内を駆け巡ったのは「うお! 弾力すご! もっちもち! めちゃくちゃ濃厚!!」というワード。語彙が少なすぎる。しかし「極太麺・超濃厚」という看板に偽りはないと実感した。
茹でたあと、しっかりと氷でしめられた麺は、うどん並に太く弾力たっぷり。口の中であばれまくる麺を押さえつけるように噛むと、もっちりと強く反発し、小麦粉の香りが鼻を抜けていく。
かたや、野菜を入れず、鶏・豚・煮干しで3日かけて炊き上げるスープは素材の旨味が凝縮し、「超」がつくほど濃厚だ。肉系の甘みのあとに広がる魚介の香りにますます食欲が増す。なんといってもクリーミーな舌触りがたまらない。
このスープを作るために必要であり、1回ではなく2回濾(こ)すことで、よりなめらかなスープに仕上がるのだという。こうしてできあがった濃厚なスープと強さのある麺の一体感は抜群! まさに必食ものだ。
2種のチャーシューと、とろ〜り半熟の味玉。まさに神トッピング
チャーシューは、肩ロースとバラ肉の2種がオン。どちらも真空低温調理しているが、味わいは大きく違う。
肩ロースは7時間かけて低温調理し、薄切りで提供。噛むとほどけるようなやわらかさが特徴。肉の甘みとしょっぱさのバランスがよく、スープにひたして麺に巻いて食べるのがおいしい。
バラ肉のチャーシューのポイントは焦げ目。4時間の低温調理のあと、炭火で約2時間弱吊るし焼きするため、香ばしい風味と脂の甘みがたまらない。食べごたえも抜群だ。
そしてみんな大好きな味玉は、ばっちり半熟で黄身がとろ〜り。そおっと食べるもよし。黄身をスープと混ぜればちょっとした味変にもなる。
日替わりで楽しめる薬味や自家製フルーツ酢で味変を
つけ麺には、国産ネギ、梅カツオ、そして日替わりのアイテムがのった小皿がつく。この日は鯛出汁塩だった。なめてみると、鯛出汁塩はほんのり魚の甘みがあって、ごはんにかけてもおいしそうだ。
当然ネギはぴったりくるけれど、意外に良かったのが梅カツオだ。酸味やカツオの風味が甘みのあるスープにはまる。味がさらに深く複雑になったようだ。
梅カツオが合うなら酢も合うに違いない。テーブルの上に用意されている、レモンとリンゴを入れた自家製のフルーツ酢を試してみよう。フルーツのまろやかな酸味が濃厚なスープと混じり合い、さわやかな味わいに変化する。これもなかなかいいかも。
「ラーメン TOKYO 百名店 2023」にも選出された味とサービス
麺の量は、杏仁豆腐のつくレディース150gから漢盛の600g、それ以上までも幅広く選べ、冷めたスープを温め直してくれるなど、きめ細かなサービスもありがたい。さすがは「ラーメン TOKYO 百名店 2023」に選ばれた店。次はつけ麺とチャーシューをテイクアウトで楽しむのもいいなと思った。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ