大好きなあんバターパンは具たっぷりで最高
今回は、あんバターパン340円とコーヒー320円(セット割引50円含む)を注文。
さっそく、パンを手に取り、頬張る。口の中でバターが溶けていく。そのバターがあんと絡み合う。なんともいえないハーモニーが始まっていく。『トーチドットベーカリー大森』のパンは固めで、中のあんのしっとりさがより強く感じられる。さらにバターの濃厚な風味が口の中に広がっていく。バターは溶けている状態ではなく、固めな状態で挟んであるのがいいのだ。あんバターパンをテイクアウトしたら、トースターで温めずなるべくはやく食べることをおすすめしたい。
あんバターに使うパンは日によって違うらしい。別の日にも行ってみたい。
温かみのある店内でお子さんも笑顔に
このあたりではイートインのあるベーカリーは珍しいそうだ。たしかにベーカリーはテイクアウトのイメージが強い。
2017年8月に開業した『トーチドットベーカリー大森』。ここにはイートインスペースがあるため、焼き立てのパンをすぐに食べられる。1ドリンク注文する必要があるが、ブレンドコーヒーやカフェラテ、セイロンティやオレンジジュース、さらにはお子様向けのドリンクなどもあり種類が豊富だ。
取材に訪れたこの日も小さなお子さんとお母さんが訪れていた。子どもたちは、パンを食べ終わるとガラスに顔をくっつけて、パン作りを見学していた。ガラス越しにパンを作っているところも見ることができるので、子どもたちは興味津々。
店内は自由に写真撮影ができる。制約が多くなってきて“楽しさ”の範囲が狭まっている気がする昨今、『トーチドットベーカリー大森』のように、自由さがあるお店は雰囲気が良く、温かみがある。皆が笑顔だ。
卵とバターを使っていない食パン
あんバターパンを食べてみて、このお店は間違いない!きっとどのパンもおいしいと確信。さらに松明(たいまつ)パン320円が飛ぶように売れていくのが目に入った。まさに飛ぶように売れるのだ。一人が2斤購入したと思えば、次の人が3斤購入。店員さんが次から次へと、焼き立ての松明パンを並べていく。
これは、はやく購入しないと売り切れる! 筆者も2斤購入した。
松明パンは『トーチドットベーカリー大森』で最も人気のあるパンといってもいいだろう。店名の「トーチ=松明」のパンだが、いわゆる食パンである。
その特徴を松本さんに聞いてみた。
「小麦粉、砂糖、塩は国産の物を使用していて、とくに塩は少量でも味がしっかりとしています。国産へのこだわりというより、いつも選んでいる材料が国産だったという感じです。あとは卵やバターなどの乳製品を使わずにパンを作っています。乳製品を使用しないと、さっぱりした食感になってしまうんですね。そのため“湯ごね”をしています」
“湯ごね”というのは、小麦粉に熱湯を加えた上でパンをコネる製法。小麦粉を湯ごねすることで小麦粉の甘みと旨さがでる。加えて小麦粉のデンプンがもちっとし、弾力がでるのだ。
色々なお店の食パンを購入してきた筆者だが、『トーチドットベーカリー大森』の松明パンは別格だと感じた。松明パンは、毎日食べても飽きない上品さがある。乳製品を使用せず、さらに湯ごねをすることで、甘みはありながらもあっさりとしている。この味と食感が「次の日も食べたくなる」のだと感じた。
毎日3回、80斤くらい焼いているとのことだが、すぐに売り切れてしまいそうだ。
大切にしていきたい思い
「2014年12月にオープンした蒲田の本店が、すこし暗い場所にあって。お店までの通りを明るい雰囲気にしたい、街を照らすような名前にしたいという思いでトーチという名前を使いました」と松本さんは語る。
大学を卒業すると、パン屋の老舗『神戸屋』に就職した松本さん。
「食品メーカーに就職したいという気持ちがありました。中でもパンを扱う仕事をしたいという気持ちが強く、『神戸屋』に就職しました。『神戸屋』で働くうちに、お客様をもっと身近に感じられる仕事がしたいと思うようになったんです」。自分でお店をもってお客さんの笑顔を見たいという気持ちが日に日に強くなって、『トーチドットベーカリー』を開業したそうだ。
「お客さんが楽しんでもらえるようなお店にしたい、お母さんと一緒にお店に来たお子さんが、大きくなってもお店にきてくれる、そうしたお店にしたいと思っています」
手書きのかわいらしいPOPや、パンの香ばしいにおい、レイアウトもきれい。ついつい長居したくなってしまう。常連とおぼしきお客さんも、ひっきりなしにやってくる。『トーチドットベーカリー大森』は地元の人に愛されているパン屋さんだった。
/定休日:無/アクセス:JR京浜東北線大森駅から徒歩5分
取材・文・撮影=アサノカツヒト