1991年オープン。オーセンティックな雰囲気漂う喫茶店
地下鉄上野広小路駅を出て、「松坂屋上野店」「PARCO_ya上野」が並ぶにぎやかな通りから路地に入ると、小さな雑居ビルが立ち並び穏やかになる。そこに連なっているおいしそうな店の看板に興味をひかれながら歩いていると、雰囲気のいい喫茶店を発見した。
ここは1991年にオープンした『cafe Lapin』。生のコーヒー豆を店内で焙煎し提供している。路地に入ったときに芳ばしい香りがするなぁと思っていたのだが、その源はどうやらココだったらしい。
ガラス張りで開放的、渋い色の木目調で落ち着いた雰囲気の店内に入ると、マスターの高野勝茂さんが次々に入るオーダーに応えている。そんな中でも快く話を聞かせてくれた。
マスターは、学生時代からいくつかの喫茶店で働いているうちに、コーヒーの魅力にハマっていった。当時を振り返り「ただ、サラリーマンになりたくなかったんですよねー」と笑うが、カウンターに整然と並べられたカップや、店の年輪を思わせる塗装がはげたキャニスターを大切に使っていることからも1杯のコーヒーへの想いが伝わる。
こだわりを尋ねると「格別にうまいコーヒーじゃなくて“ふつうにおいしい”のを目指しています。そのほうが毎日来ても飽きないですから」とはぐらかされてしまった。
店の周辺にはオフィスも多く、働く人たちの憩いの場になっている。「この辺りに住んでいる方もチラホラ。最近はね、秋葉原に買い物に来たお客さんも多くて、朝は特に外国人も増えていますよ。一直線に店に入ってくるからウチを目指して来てるんじゃないかな」。
周囲にはチェーン系のカフェもあるが、リラックスできるムードとおいしいコーヒーを求め、あえてこの店に来たくなる気持ちがわかる気がする。
店内に備えた施設で、選りすぐりの豆を自家焙煎
マスターが数々の喫茶店で働いていたなかで現在の店づくりに大きく影響を与えたのが、神田にある『カフェ ビィオット』だ。調べてみると『カフェ ビィオット』の創業は1973年。オーセンティックな重厚さを感じる店の雰囲気や、自家焙煎豆をネルでドリップするところもよく似ている。
正社員として働いていた『cafe BIOT』では焙煎の技術も身につけた。「30〜40年前は問屋がなかなか生豆を卸してくれない時代でした。だから最初は誰も焙煎のやり方を知らなかったんですよ(笑)。失敗しながら、見よう見まねで焙煎のやり方を習得しましたね。この店をオープンしてからもお客さんが来なければやることもないから、豆を焙煎したりケーキを手作りしたりしているんです。まあ半分は暇つぶしですね」と、マスターは涼しい顔でこう言うが、店にはひっきりなしにお客さんが訪れる。
そんな話を聞き店内を見回していたら、突然マスターが焙煎室から手招きするのが見えた。急いで向かうとちょうど豆を焙煎し終わったところを見せてくれた。
しっかり焼かれたコーヒー豆はツヤツヤとしている。こうして自家焙煎するからいつでも鮮度のいいコーヒーが飲めるのだ。朝の始まりはフレッシュなコーヒーで目覚めたい!
モーニングはおいしいコーヒーとさっくりとしたタマゴトースト
厨房の様子をずっと見てきたからいよいよお腹が減ってきた。メニューを見せてもらい、7時〜11時まで実施しているモーニングセットのタマゴトースト850円をオーダーした。
モーニングセットはトーストとサラダ、ドリンクで構成されており、クロワッサンのセットだけヨーグルトがつく。オーダーが入ると、マスターが調理に取り掛かる。
パンだけを焼いて冷たいタマゴサラダを乗せるものだとばかり思っていたが、こちらの店ではパンにタマゴサラダをたっぷり塗ったあとオーブンでトーストにする。
パンを焼くのと並行して淹れていたコーヒーもできあがり、マスターがテーブルに運んでくれた。こんがり焼けたパンの香りと、芳醇なコーヒーの香りで頭が冴えていく。
ちょっぴり焼き色がついて黄金色にも見えるタマゴトースト、シャッキシャキのレタスとキャベツのサラダ、香り高いコーヒー。色彩豊かでにぎやかな朝食となりました。ではいただきます!
モーニングセットのコーヒーは店オリジナルのラパンブレンド。「ブラジルをベースに数種をブレンドしているんですが、私の好みの濃くて甘みがあるテイストに仕上げています」。ふくよかな豆の香りが口いっぱいに広がる。余韻を楽しみながら、タマゴトーストもパクリ。
カリッと音を立ててかぶりつくと、厚めのトーストにたっぷりタマゴサラダが塗られていて1枚でも食べごたえがある。サラダやサイドメニューで追加したゆでタマゴ、トマトジュースを飲んだら満腹になってしまった! マスターが「手作りのケーキは朝から食べられますよ」と声をかけてくれたけど、すみません、もうお腹に入らないので次の楽しみにとっておきますね!
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢