もちもちの玄米。ランチに人気の季節のヴィーガン・発酵スロープレート

お店へのアプローチも広々。
お店へのアプローチも広々。

国分寺駅から徒歩5分ほど南に行った三叉路近くにあるのが『カフェスロー』。オーガニックの食材を使い、ヴィーガンの料理やスイーツが食べられるカフェだ。店内は広く、食品や本が売られているコーナーやギャラリースペースもある。

盛りだくさんで満足度が高い、季節のヴィーガン・発酵スロープレートは1680円。
盛りだくさんで満足度が高い、季節のヴィーガン・発酵スロープレートは1680円。

人気のランチメニューは、季節のヴィーガン・発酵スロープレート。植物性の材料とは思えないようなボリュームのある主菜に野菜を使った副菜が2種類、玄米ごはんか自家製玄米パン、そしてスープとフルーツが付くという盛りだくさんのランチだ。内容は1〜2カ月ごとに変更される。

この日の主菜は高きびハンバーグ。味や色がハンバーグに近く、もっちりした中につぶつぶした食感がある。確かに肉ではないが、しっかりした味わいだ。副菜にベトナム風なますや塩麹とオリーブオイルの根菜グリルなど野菜がたっぷりなのもうれしい。ビーツとココナッツミルクを使ったスープも独特の苦味がほどよい。

おかずの満足度以上に、たっぷりのせられた玄米を口にするとハッとする。もちもちした食感で、味に深みがある。この米は山形県新庄産で、「さわのはな」という現在一般に流通していない品種。創業当時から、山形の農家から直接仕入れている。

ランチプレートで使われている「さわのはな」の玄米は販売もされている。
ランチプレートで使われている「さわのはな」の玄米は販売もされている。

「おいしいお米でしょう? 他にはなにもいらないぐらい」

そう話すのは代表の吉岡 淳(よしおか あつし)さん。吉岡さんが2001年に『カフェスロー』を始めたのは、ただカフェを作りたかったわけではない。

「環境に負荷をかけない暮らし方、スローライフを伝えるための方法として編み出したのがカフェです」

吉岡さんは、かねてより環境問題や気候変動などに関心が強く、仲間たちとナマケモノ倶楽部というユニークな名前のNGOを立ち上げて活動を続けてきた。当時は米系コーヒーチェーンが日本にも浸透し始めたころ。たくさんの人に普段から口にする食品の栽培者や地球環境に目を向けてもらいたいと、フェアトレードのコーヒーや有機農法の作物を使うカフェを始めることにしたのだ。

再利用素材を多用した広く心地よい空間

店内はひろびろ110坪。
店内はひろびろ110坪。

『カフェスロー』は、オープン当初は1キロほど南の場所にあったが、2008年に現在の場所に移転した。

「この建物は工場として使われていたものです。私たちが最初に見に来たときは本当にボロボロでした。しかし110坪もある広さや、真裏に野川が流れていて畑も見える。これはおもしろいということになったんです」

店内は天井が高く、空間全体が気持ちいい。テーブルや椅子、ピアノなどはほとんどがリサイクル品だ。可能な限り土に返る素材を使って、どんなものも長く使うことを心がけている。

畳が敷かれたキッズスペース。周辺の本棚には、自由に閲覧できる本がたくさん。
畳が敷かれたキッズスペース。周辺の本棚には、自由に閲覧できる本がたくさん。

お店の隅にはキッズスペースに十分な広さが割かれていて、子どもたちが楽しそうに過ごす光景も見られる。ヴィーガンメニューがあるため、動物性食品にアレルギーがある人も食事がしやすい。

ハチドリのひとしずくのように、小さくても変化を生み出したい

『カフェスロー』の考えるスローライフは、一気に認知されるものではなかった。家族の健康に敏感な女性たちを中心に徐々に伝わっていったと吉岡さんは話す。

例えばフェアトレードのコーヒー豆。栽培者との取引が適正な価格であるだけでなく、有機栽培かつ森林農法で作られたものを選んでいる。森林農法は果樹を含めたいろいろな木の間にコーヒーの木を植える方法だ。単一栽培されることが多いコーヒーだが、栽培者は複数の作物を栽培しているため、コーヒー豆だけに暮らしを依存しなくていい。天候の不良などに強い栽培方法だ。

有機栽培・森林農法で作られたコーヒー豆も販売されている。
有機栽培・森林農法で作られたコーヒー豆も販売されている。

「有機栽培のコーヒーは味がマイルドです。時間はかかりましたが、この店のものは違う、おいしいと思ってもらえるようになりました」

カフェは見えない部分でもさまざまな配慮が行われている。太陽光発電で店内の照明や電源をまかない、関東圏で有機栽培を行う農家から野菜を仕入れ、廃棄率も極力少なくするなど。小さなことから実行している。

代表の吉岡淳さんは、日本ユネスコ協会に長く勤務したあと、『カフェスロー』を立ち上げた。
代表の吉岡淳さんは、日本ユネスコ協会に長く勤務したあと、『カフェスロー』を立ち上げた。

「『カフェスロー』は、ハチドリのひとしずくのようなもの」と吉岡さん。南米のお話に登場する小さなハチドリが山火事を消そうとくちばしで水を運ぶ姿に活動を重ねている。健康志向のおいしいものをきっかけに、地球全体のことに思いを馳せたくなるお店だ。

住所:東京都国分寺市東元町2-20-10/営業時間:11:00~17:00(4月1日〜9月30日は 〜18:00)/定休日:月(祝の場合は翌)/アクセス:JR・私鉄国分寺駅から徒歩5分

取材・撮影・文=野崎さおり