洗練された空間で大人の時間を過ごす
東通りを歩いていると大きなフクロウが描かれた暖簾が目を引く。店内はカウンター席やテーブル席があり、一見するとカジュアルな感じだが、洗練され、落ち着いた佇まいで、大人の時間が過ごせそうな雰囲気だ。
カウンター席からはオープンキッチンを見渡せ、目の前ででき上がる料理の数々に目移りしてしまいそうだ。メニューは基本的には仕入れで変わる日替わりとなるので、スタッフと話しながら、今日の肴を決めるのもいいだろう。
カラフルラベルの地酒や焼酎がズラリ
まずはお酒から注文。日本酒(1合1100円~)は定番を決めずに、全国から厳選している。「お客様に楽しんでもらうために、さまざまな日本酒を置いています。“こんな日本酒を飲みたい”“刺し身に合った日本酒を飲みたい”というご希望をいただだきましたらスタッフがお選びします」と、スタッフの吉田友保さん。
焼酎(グラス650円)の取りそろえも豊富だ。吉田さんは「日本酒も焼酎もカラフルで個性的なラベルが多いです。ラベルで選んでみるのも楽しいかもしれません」と話す。
確かにラベルを見ているだけでも興味を引く銘柄がある。今日は自分の勘を信じてお酒を注文してみようか。
港直送の旬の魚介類。豪快に盛られた刺し身は感動的
酒に合う肴は盛りだくさん。特に契約漁港から届く新鮮魚介類で作る刺し身がオススメ。この日の刺身盛り合わせ1人前1500円(写真は3人前)はマグロやツブ貝、アジなどが豪快に盛られ、どれから食べようか迷ってしまいそう。
マネージャーの瀧猛次さんから「まずはイカから食べてみて下さい。次はツブ貝を、その次はアジと……いったように、食べる順番をオススメしています。だんだんと味が濃い刺し身を食べ進めていくと、より美味しさがわかると思います。醤油でもいいのですが、塩でも食べて下さい。新しい味わいでおいしく食べられると思いますよ」とアドバイスをもらった。
瀧さんのいうとおりに食べていくと、まるでコースを食べたときのような満足感を得られる。
まぐろねぎま串1本580円も注文。ほどよい塩加減で、マグロの旨さが生きている。トロッとした食感もある。「お客様からから脂の多い部分を使っているのでは? といわれますが、これは筋の部分でコラーゲンを多く含みます。炭火で焼くことで柔らかく、とってもおいしく召し上がっていただけるのです。」と瀧さん。
マグロの旨さはいうまでもないがネギも旨い。瀧さんにうかがうと「徳島県の農家から直送される長ネギを使用しています」。甘みもあり、鼻から抜ける風味もいい。マグロとの相性もバッチリだ。
魚料理だけでなく、肉料理も旨い
まだまだおいしい肴はある。
山形豚のしょうゆ糀焼き1880円(200g)は、瓶で寝かした醤油糀が味の秘訣。山形豚に醤油糀を絡めて焼くことで、香ばしさと塩味が加わり、より脂の甘さを感じられる。ここにも徳島県産の刻みネギがたっぷり。一緒に食べればさっぱり感と、いい辛みがあって実に旨い。
若どりの蕎麦つゆ香るからあげ(のりワサビ)980円も絶品。揚げたての若鶏の唐揚げを、自慢のそばつゆにつけて、味を染み込ませている。一見、ワサビが多そうに感じられるが、実際に食べてみると、さわやかさがちょうどいい。アオサノリの風味も素晴らしいアクセントになっている。
『〆蕎麦 フクロウ』では、固定のメニューは少なく、生産者から届いたものや仕入れたものなど、食材ありきで毎日料理を変えるという。「同じ食材でも時期や脂ののりなどで料理法を変えていますので、毎回異なった料理が食べられます」と笑顔で瀧さんが教えてくれた。
締めはやっぱり手打ちの蕎麦
たらふく食べて、たらふく飲んだら、最後は店名にもあるように蕎麦で締めたい。
毎日店内で打っている蕎麦は北海道産の蕎麦粉を使用。香り豊かで味わい深く、何もつけずにそのまま食べても美味しさが伝わる。
蕎麦つゆは、出汁がしっかりと利いていて蕎麦の風味をじゃますることなく、そば本来の味をいっそう引き立ててくれる。
瀧さん曰く「季節によって、そのときのいい状態を味わっていただくように、蕎麦の太さを変えています」。この蕎麦を目当てに訪れる客も多いというが、納得できる味だ。
幅広い年齢層に愛され、一人使いにもいい
瀧さんは「若い方から年配の方まで、いろいろなお客様に来ていただいております。お酒はもちろん、料理も随時変わっていきますので、飲みたい・食べたいものがあったらご注文下さい。お一人で来られても、料理はハーフでお出しすることもできます。私やスタッフとの会話もお楽しみ下さい」と話してくれた。
さまざまな銘酒と、今しか食べられない旬の料理……。一人で気兼ねなく訪れて、しっぽりと楽しみたい店だ。
取材・文・撮影=速志 淳