早朝まで営業。環七通り沿いの味噌ラーメン

カウンターはU字型。
カウンターはU字型。

扉を開けると、ごま油の香ばしい香りが店の中に充満している。壁には何やら文章があちこちに書かれていて、その様子とはギャップを感じるジャズが聴こえる。

『味噌一』は都内に直営店だけでも6店舗(1店舗は2022年10月現在休業中)を展開するチェーン店だ。高円寺店はその1号店にあたり、1993年にオープンし、2023年には30周年を迎える。ラーメンの激戦区のひとつ、高円寺でも歴史のある店だ。

過去には24時間営業だった時期もあり、今も火曜日から日曜日までは朝5時までの営業。近隣のラーメン好きはもちろん、タクシー運転手や飲食店で働く人など、さまざまな生活時間で暮らす人たちのお腹を満たしてきた。

わかめの香りもいい味噌一らーめん800円。もやしなどの野菜がシャキシャキしているのがうれしい。
わかめの香りもいい味噌一らーめん800円。もやしなどの野菜がシャキシャキしているのがうれしい。

圧倒的な人気メニューは、シンプルな味噌一らーめん800円。オリジナルの味噌ダレがポイントだ。塩味だけでなく、深みのある甘さも感じるスープに仕上げている。

券売機は店内入り口付近に。食券をお店の人に渡すとき、太麺か細麺かを聞かれる。当初は太麺のみだったが、細麺が欲しいというリクエストに応えたそうだ。

歯切れよく硬めに茹で上げられた太麺。
歯切れよく硬めに茹で上げられた太麺。

『味噌ラーメン専門店 味噌一』は提供時間の早さもの売りのひとつ。太麺の茹で時間は1分50秒ほど。その間に野菜を茹でるなど、段取りよく仕上げられたラーメンが出てくるまで、注文から大体2分強と、出来立てを食べるにはうかうかしていられない。

シャキシャキした食感のもやしや豆苗、コーンが彩りよく盛り付けられて、ぱつんと歯切れのいい太麺も食べ応えがあっていい。鶏と豚を合わせた炊いたスープは、炊く時間に差をつけた2つの寸胴からブレンド。ちょうどいい濃さに調整している。『味噌一』は店舗によってスープの炊き方が3種類あるので、別の店舗との違いを確かめてみるのもいいかも知れない。

創業社長が8年の試行錯誤した秘伝の味噌ダレ

店がオープンした当時から壁に書かれている社長の言葉。
店がオープンした当時から壁に書かれている社長の言葉。

創業当時、味噌ラーメンといえば札幌ラーメンが当たり前。そんな中、埼玉でラーメン店を営んでいた創業社長は、オリジナルの味噌ラーメンを作り出すべく8年もの間、試行錯誤を繰り返した。その結果、全国に数多ある味噌から四国の白味噌を選んで完成したのが『味噌一』の味噌ダレだ。

1杯あたり135グラム使うという味噌ダレ。味噌に対して他の材料がたくさん入っているため使う量が多く、保管も要冷蔵。
1杯あたり135グラム使うという味噌ダレ。味噌に対して他の材料がたくさん入っているため使う量が多く、保管も要冷蔵。

その味噌ダレ、52種類もの材料が混ぜ合わせられている。中身は企業秘密どころか、『味噌一』の社内でも社長と一部の従業員だけがそのレシピを知っているという機密情報。

ホームページに材料らしきものの写真が掲載されているが、それぞれが具体的に何かまで特定できそうにない。チーフマネージャーの田中さんによると、スパイスやフルーツ、ナッツなどが配合されてらしいが、田中さんもその中身をすべては知らないというから驚きだ。一体、何が入っているのか気になる。

店で白ゴマを炒っている。ここまで色が付くまで炒る作業は、なかなか気を使うのだとか。
店で白ゴマを炒っている。ここまで色が付くまで炒る作業は、なかなか気を使うのだとか。

卓上調味料はおろしニンニク、酢のほか、すりゴマの容器に入ったゴマが置かれている。よく見ると、中身は黒ではなく濃い茶色だ。白ゴマを各店舗で炒って作っているという。

わざわざ濃い色がつくように炒っているのは、香ばしいだけでなく、ほどよい苦味が味噌味に合うから。ただし、焦げてしまわないように火に掛けている間は、ひたすら鍋とおたまを動かしていなければならないので、気が抜けないそうだ。

原価関係なし。カンパで食べられる味付け玉子やメンマも

年季の入ったカンパ缶。3種類の具材は、1品20円以上カンパするとセルフサービス。
年季の入ったカンパ缶。3種類の具材は、1品20円以上カンパするとセルフサービス。

『味噌ラーメン専門店 味噌一 高円寺店』で見逃したくないのが、入り口付近に置かれている味付け玉子、火吹きメンマ、火吹きもやしだ。

この3種類は一緒に置かれた缶にカンパの小銭を入れると食べられるセルフサービのシステムだ。集まったお金は交通遺児育英会や埼玉のNPO、松ぼっくりの会に寄付されている。

味付け玉子などのサービスは、もう長く行われている。1品につき20円以上と書かれてはいるが、もちろん原価は度外視。社長がラーメンを食べにきてくれる人へのサービスと慈善団体への寄付をしたいという2つの気持ちで続けている。味付け玉子にはしっかり醤油が染みていて旨いので味わってみてほしい。

麦飯用にカウンターのふりかけも用意されている。
麦飯用にカウンターのふりかけも用意されている。

もうひとつ嬉しいサービスがある。11時から20時までは麦飯が1杯無料というものだ。これも、麦飯の香ばしさが味噌味に合うという理由から提供されている。20時以降でも単品で100円という手頃な価格。麦飯用に卓上にふりかけが置かれているのもありがたい。

ランチから深夜まで開いている貴重なお店。味噌ラーメンを食べて温まりたいとき、秘伝の味を感じてみては?

住所:東京都杉並区高円寺南2-35-15/営業時間:11:00~翌5:00(月は~21:00)/定休日:無/アクセス:丸の内線東高円寺から徒歩6分、JR中央線高円寺駅から徒歩13分

取材・撮影・文=野崎さおり