京成金町線 Local Line Data
京成電鉄設立初期からある路線で、明治32年(1899)に金町~柴又間で営業した帝釈人車鉄道が前身。同45年(1912)に曲金(現・京成高砂)~柴又間、翌年に柴又~金町間が開通。2010年には京成高砂駅が高架化した。営業キロ2.5㎞。
車窓の外の住宅地にもひそむ刺激
京成本線と改札が分かれる京成高砂駅の金町線乗り場。長いスロープから乗り込む銀色の電車は遊園地の乗り物みたいでワクワクする。高架を曲がりながら下り、柴又駅に着いたと思えば、ゴーストレートで瞬く間に京成金町駅。5分のアトラクションの復路はのんびり戻ってみる。
線路沿いに目立つピンクと黒の建物は、コーヒーロースタリーの『BICYCLE COFFEE TOKYO』。豆の卸先へは荷車付きの自転車で配達しているそう。2018年に併設したカフェは、約7分おきに往来する電車を目の前で望める特等席だ。「最近、新車両(芝山鉄道カラー)も走るようで、鉄道好きの方も来てくれるんです」と微笑(ほほえ)む店員さん。
沿って歩ける金町〜柴又間は気持ちいいほどまっすぐ。昔は人が車両を押して動かす人車軌道だったとか。なるほど、これなら押しやすそう。和のイメージが強い柴又には、寅年の今年、バター香るアイシングクッキーの店『Tigre(ティーグル)』が開店。世界の料理が味わえる『旅の食堂 ととら亭』も7月に中野区野方から移ってきた。高砂の商店街にはハイセンスなセレクトショップ『zoo.』が生まれ、通りを楽しませる。沿線に吹いている新しい風も心地がよい。
地上駅の京成金町駅。改札口から5段でホームという近さが頼もしいが、駆け込み注意!
金町三丁目交差点に遮断機が12台!警報機が鳴るとバラバラ下りていく遮断桿の動きが面白い。
焙煎の香りと絶景電車ビュー『BICYCLE COFFEE TOKYO』[京成金町]
アメリカのオークランドに本部を持つコーヒー焙煎所。生産者と直接取り引きして仕入れる有機栽培コーヒー豆を使用し、大窓のカフェでは果実のような甘みを感じるミディローストや地元の瓶ラムネを使ったさわやかなエスプレッソラムネなどを電車ビューと楽しめる。
・12:00~17:00(土・日10:00~)、月~水休
・☎︎03-5648-3658
柴又街道に沿って直進する線路。道路脇を駆け抜ける3600形にちびっ子たちも見入る。
金町公園になぜか木彫り熊風のオブジェあり。「何十年も前からある」と女の子のお母さん。
思わずニンマリ、柴又の新みやげ!『Tigre』[柴又]
フランス語でトラを表す店名の焼き菓子専門店。シュガークラフトを学んだ姉妹によるアイシングクッキーがメインで、1枚1枚微妙に異なる繊細な模様にほれぼれする。寅さんをモチーフにしたクッキーもユニーク。小気味よい堅さと優しい甘さだ。寅さんカバン464円ほか。オーダーメイド可。
・11:00~16:00(土は~17:00)、火~木休
・☎070-2324-8244
唯一、上下線が並ぶ柴又駅には構内踏切がある。左は正面下部のスカートが目印の3500形。
本場の料理で世界を旅しよう!『旅の食堂 ととら亭』[柴又]
70カ国以上訪れた旅好き夫婦が手がけるのは本場の味に忠実な料理。2カ国から選べる日替わりの旅ランチはスープ、デザート、飲み物付きで1600円。写真はヨルダン料理で、カルダモン風味のチキン串焼きガーリックヨーグルトソース。
・11:30~13:30LO・18:00~21:00LO(土・日・祝は17:30~)、火休(金はランチ休)
・☎03-6801-7003
柴又は商店が元気。帝釈天参道側と比べて柴又親商会はおでん種屋もある生活密着な商店街だ。
町工場の塀に、これでもかと並ぶウルトラマン人形約40体。お孫さんのおもちゃの有効利用だ。
京成高砂(金)第4号踏切から高砂方面を見る。高架からS字カーブを下ってくるのは3500形。
ここはギャラリー?雑貨屋さん?『zoo.』[京成高砂]
ギャラリーみたいなブティック『VARi』の店内に2021年に生まれたセレクトショップ。店主の渡部優一さんの推しはイギリスのぬいぐるみ・ジェリーキャットで、「種類が豊富でとにかく手触りがいいんです」。オリジナルデザインのグッズもしゃれている。月2回土曜にはバリスタを呼んでコーヒーも販売。
・12:00~17:30、無休
通りからひょこっと現れる高架の3500形。高架下の右奥には京成電鉄の高砂検車区が広がる。
取材・文=下里康子 撮影=山出高士
『散歩の達人』2022年10月号より