Part.1 TOKYO WATER TAXI
目黒川に架かる御成橋下をレモンイエローの船が静かに進む。
毎時00分、橋からの放水に合わせると滝に突入するような心躍る体験が待っている!
「あれは何?」、「乗り方は?」
全長約7m、6〜8人乗りのこの船は、2015年に設立した「東京ウォータータクシー」が造った専用船。小型ゆえ狭い水路での回旋、低い橋下も楽々通過。トイレやエアコンを完備して、飲食持ち込みも、ペットの乗船もできるリビングのような船なのだ。
「好きな時に好きな場所へ。東京の水路を、道のように自由に移動できるのが醍醐味です」と、マネージャーの井上結葉さんは説明するが、未知の世界過ぎて、半信半疑。しかし、乗降には都内に多数ある防災船着場を使うと知り、納得だ。これを普段から活用して「いざ」という時に備えるというミッションがあるのだ。
乗りたいと思ったら、やってみたいことを相談しよう。
今回は「目黒川を水上さんぽしたい」とリクエスト。運河から東京港を横切り、目黒川に入るルートができたが、冒頭の噴水する橋をくぐり抜ける体験は、とっても新鮮だ。
デッキに立つと涼風が心地よく、川岸の風景は絵巻物が流れるよう。地元で見聞きした話を織り交ぜたガイドにも、感動。
東京港から目黒川へ
「安全に快適に楽しい時を!」
キャプテンの渕上秀文さんと井上さんに迎えられ、いよいよ出発だ。
船上からの風景に興奮。コンテナ荷降ろしに使う巨大クレーンが!
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レインボーブリッジ下を疾走。時速20㎞だが体感速度はその3倍。
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運河や河川の清掃をする船が停泊。水辺で働く人々の存在を知る。
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運河に入ると急に静かになる。目黒川水門に描かれたクジラに挨拶。
京浜運河沿いを走るモノレール。チャーターなので通過待ちも可能。
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目黒川。この辺りは橋が多く、荏原神社前の鎮守橋、荏川橋と続く。
頭上に電車音! 東海道新幹線、山手線などの線路真下を進む。
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地元の人が大切にする桜の木が見事。四季折々の風景、夏は緑が輝く。
『東京ウォータータクシー』詳細
都内に船着場は約20カ所。乗降場所、航路を自由にアレンジできる。1隻1時間チャーターの通常料金は1万8000円(定員8人なら1人あたり2250円)。
●東京営業所: 11:00~19:00、月休(祝の場合は翌火休)。 東京都港区芝浦2-1-11 ☎03-6673-2528
定期乗合便 「おだたま便」が就航!
都内に船着場は約20カ所。乗降場所、航路を自由にアレンジできる。
1隻1時間チャーターの通常料金は1万8000円(定員8人なら1人あたり2250円)。
貸し切り&ペット同乗可能の「御成橋・噴水くぐりと目黒川クルーズ」は1万2000円(最大6人)。
問 東京営業所 11〜19時、月休(祝の場合は翌火休)。 港区芝浦2-1-11 ☎️03・6673・2528
https://water-taxi.tokyo/
Part.2 高浜運河沿緑地
「高浜運河沿緑地」とは
『T.Y.HARBOR』の対岸から浜路橋までの高浜運河両岸に整備された緑道。一周約2.5km。
人工アートと小さな自然に、憩う
海と陸の間に造られた水路、運河。都市の大切な動脈だ。
品川駅から徒歩数分。旧海岸通りの向こうにある高浜運河は、両岸の緑地に遊歩道が続く。散歩やランニング、体操をしたり、ベンチでくつろいだりと、地元の人や近隣ワーカーの日常を潤している。
一帯は埋め立て地。さらに緑地は、災害時に水害から守るために作られた護岸を利用。つまり水辺空間まるごとが人工物だ。なのに、そこここに季節の花が咲き、虫たちが集まり、時にはカルガモの親子にも会える。いとおしい、守るべき、貴重な自然がちゃんと息づいていることに驚く。
運河を挟み、海側と陸側の風景の印象が変わる。海側は新旧さまざまな集合住宅が林立。ベランダに揺れる洗濯物に人の暮らしを感じる。一方、陸側はデザインが映える企業のビルが連なる。無機質に見えるが、エントランスの植栽が運河沿緑地とつながるように設計されている建物も。人工物が自然に「仲よく、よろしく」と、寄り添っている?
橋を行き来して向こう岸を観察したり、ベンチでぼんやり空や水面を眺めたり。時間の流れ、歩く速度が普段よりスローになるのは、水辺のマジック?
ライトアップにも注目
日没からライトが灯る橋が複数あるエリア。全長71mの御楯橋は、月~木は白灯、金・土・祝は青色系のグラデーションになる。夜の水面に色模様が映る様はロマンチック。橋名は万葉集の歌に由来する。
取材・文=松井一恵(teamまめ) 撮影=加藤熊三 鈴木愛子
『散歩の達人』2022年7月号より