札幌の住所はまぎらわしい? その理由は……
チャレンジの前に、札幌の住所覚えにくい問題についてひとこと言わせてください(絶対ひとことじゃ済まないけど)。
前回の記事で“地理人”こと今和泉隆行さんにお会いしたのですが、インタビュー後の雑談で、「札幌中心部は碁盤の目状だからわかりやすいけど、住所は覚えにくいですよね~」という話が出ました。
わかる~!
多くの札幌市民は「なんで? 東西南北の数字で場所がわかるから便利でしょ」と言います。私の両親もそう言っていました。
たしかに、わかりやすいんです。たとえば現在地が「南1西4」で、目的地が「南2西6」の場合、「南に1区画、西に2区画行けばいいんだな」とわかります。
だけど、今和泉さんも著書『どんなに方向オンチでも地図が読めるようになる本』で指摘していましたが、東西南北と数字の組み合わせって、字面が無機質で覚えにくいんです。
たとえば「小川町」や「駿河台」なら漢字のイメージで覚えられるけど、「南1西4」って言われて覚えられます? 私は無理です。
でも、多くの札幌民はこれで覚えているので、地元の友だちと話していると、
「パフェが美味しいお店見つけたんだ」
「どこどこ?」
「南3西4のあたりなんだけどさ~」
みたいな会話が当たり前に成立しています。
私はトータルで24年ほど札幌に住んでいますが、南3西4がどのあたりかわかっていません。でも今さら「それってどのへん?」とも聞けず、わかった風な顔で頷いています(なので意外と方向音痴がバレてません)。
あと、方角と数字の住所ってとても間違えやすいんですよね。しかも、1区画がそこそこ広いから、場合によっては間違えたときのダメージがでかい。
たとえば「南16西5」に行きたいのに、「南5西16」に行ってしまったら、戻るのには徒歩40分かかります。
ほらね、そう考えると札幌の住所って、簡単だけどトラップだらけじゃないですか?
友だちからLINEでお題を出してもらう
さて、いよいよ本題です。
今回のチャレンジは、住所だけで目的地にたどり着けるかどうか。目的地は私が知らない場所であることが大前提なので、お店をよく知っている幼なじみのTちゃんに、こんなLINEを送ってみました。
モザイク部分は吉玉の本名。『duo2』は商業施設の名前で、私は逆方向に向かったことがあるようです。そういうことは数えきれないほどあるので覚えていません。
自分で送っておいて言うのもなんですが、いきなり「喫茶店の店名と住所を送れ」って言われるの、ふつうは戸惑いますよね。
お、南2西8ならすぐ行けちゃうかも!?
というのも、私が札幌で唯一わかるのが西4丁目なんです。なぜなら『4プラ(4丁目プラザ)』というビルがあるから。この企画も、お題がどこであれ4プラからスタートする予定でした。西8丁目なら、4プラから4区画だからすぐ行けそう。
そこで、こんな返信をしました。
「余裕で行けちゃうかも!」って、今見るとすごい調子乗ってますね。偏見かもしれませんが、方向音痴の人ってたまに、根拠のない自信に満ち溢れる瞬間ありません? 私だけ?
ともあれ、もう一問出してもらえました。
Tちゃん、いろんなお店知ってるなぁ。
さて、この住所だけでカフェとケーキ屋さんに行けるのでしょうか?
地図を見ずにカフェへ行けるか
最初の目的地は南2西8の『FABcafe』。
予告通り、4プラからのスタートです。
私、4プラが「西4丁目」であることしかわからないんですよね。南北は知らない。手がかりを探すべく信号を見ると……
南1西4だ!
なるほど、ここは南1条だったか。これを読んでる札幌市民に「知らなかったの!?」と呆れられそうで怖いです。
目的地は南2西8だから、南に1コマ、西に4コマ進めばいいんだな。
札幌市民は区画や通りを「コマ」と呼びます……というのは嘘で、私が今適当に言ってるだけなのですが、なんだか「コマ」って表現がしっくりくるんですよね。すごろく感覚。
さて、碁盤の目なので目的地までのルートはたくさんあるのですが、私は下記の順序で行くことにしました。
①現在地から西に4コマ進み、南1西8に出る
②南に1コマ進み、南2西8へ
まずは、今いる通りを西にまっすぐ進みたい。ですが案の定、西がどっちかわかりません。
地図は見ちゃいけないルールなので、信号のプレートを見ます。目の前の信号は西4、道路をはさんで右側の信号は西3。ということは、左に行けば行くほど、西5、6、7……と数字が大きくなっていくはず!
西と信じる方向に歩き出します。
左右で考えず東西南北で考えるべしとの教えを思い出し、「西に進んでるんだ」と自分に言い聞かせながら歩きました。
1コマ進むと……
やっぱりこっちが西だった!
このプレートって、信号の手前側が「南1西5」なんですかね? それとも、ここから先?
この写真、信号のプレートを見てください。右の信号は「南1西6」、左の信号は「南1西7」。
この道路の右側(東側)が西6で、左側(西側)が西7なのはわかります。けど、その境界は? この道路を横断している最中、私は何丁目にいるの?
普段は住所なんか気にせず歩いているくせに、こういうときだけ理屈っぽくなるタイプの方向音痴です。
そのまま西へまっすぐ歩くと、市電の「西8丁目停留所」が。
そうか、南1西8ってこの停留所があるところか……!
高校生のとき市電で通学していたため、この停留所は日常的に目にしていましたが、はじめて映像と住所が一致しました。圧倒的な納得感。水の名がウォーターと気づいたヘレン・ケラーもこんな感じだったのかな。
というわけで、迷わず南1西8に来れました。第一関門はクリアです。
目的地は南2西8なので、次は南に1コマ進みたい。でも、相変わらず南がどっちかわかりません。
目を細めて見つめたところ、進行方向から見て左側の信号に「南2西8」の文字を確認。そこそこ視力がいいので、こういうとき便利です。
「こっちだ!」
このとき、撮影係として同行していた夫に「反対に、南1から北に1コマ進んだら住所はどうなるの?」と尋ねられ、「私にわかるわけないじゃん」と小さく逆ギレしてしまいました(その答えは次回判明します)。
南に1コマ進むと、ほらやっぱり! 南2西8です。あとはこの区画の中で目的の『FABcafe』を探すだけ。
区画をぐるり一周していると、路地を発見。歩いていくと……
あった! こぢんまりした可愛いお店です。お茶したかったけど、残念ながら満席でした。
Tちゃんに「着いたよ~!」とLINEすると「おめでとう!」と返ってきました。へへへ、迷わず着けたもんね。
というわけで、Tちゃんから出された一つ目のお題はクリアできました。
このあとは、二つ目のお題であるパティスリーを目指します。しかし、パティスリーの住所にある疑問が……。
後編に続きます!
文=吉玉サキ(@saki_yoshidama)