初めての母とのふたり旅で長野・浅間温泉へ。一本のエッセイに書ききれない私たちの関係
生まれて初めて、母とふたりで旅行をした。母についてはこの連載で何度か書いたが、母について書ききれたとは言えない。私と母は今でこそ仲のいい親子だが、関係が落ち着いたのはここ10年ほどのことで、幼少期からそれまでは関係が複雑に変化しつづけた。とてもじゃないけれど、一本のエッセイに書ききれるような関係ではないのだ。だから今回も書ききれるとは思えないが、この連載が続いているうちに、母との思い出を綴る回を設けたかった。それで母に「『さんたつ』の連載で書きたいから旅行に行かない?」とLINEをしたところ、快諾してくれた。私がエッセイを発表するようになった5年前から「ママのことはいくらでもネタにしていいから」と言ってくれている。そうして10月のある日、札幌に住む母が東京にやってきた。