「その日仕入れた新鮮なモツを味わってもらいたい」という、素材へのこだわり

ビル入り口の前には、「仲垣」の看板が。
ビル入り口の前には、「仲垣」の看板が。

開業して2022年で10年になるという、『スタミナ串焼き 仲垣』。新宿にあるもつ焼き店の名店で10年修業したという店主の仲原さんと、古くからの知り合いである高垣さんの2人で始めたことから、2人それぞれの苗字からとって店名は名付けられたそうだ。

店舗の外に掲げられた、もつ焼きのお品書き。
店舗の外に掲げられた、もつ焼きのお品書き。

「とにかく芝浦の市場で仕入れた新鮮なモツを、その日中に食べてもらいたい。そう考えて出店する候補地を探したら品川から新宿までが限界で、その間にある目黒に物件が見つかったのでここでやることにしました」。

そう語るほど鮮度にはこだわっており、毎日市場で朝締め豚の内臓肉を仕入れて提供しているという。

店内には、カウンター12席とテーブル15席のほどよい広さ。
店内には、カウンター12席とテーブル15席のほどよい広さ。

「最初はまだ信頼関係も構築できていないから、なかなかウチが希望するような欲しい状態の肉が手に入らないことも。毎日通ってお肉屋さんと意見を交換していくうちに、信頼関係が作られて希望する鮮度の肉が仕入れられるようになりました」。

せっかく市場で新鮮な内臓肉を分けてもらっているので自分たちが提供までに時間をかけてしまわないよう、朝市場で仕入れた肉は店に持ち帰ったらいっせいに仕込み始め、17時の開店までに用意する。

「朝締めの豚の内臓肉を、新鮮な今日中に食べてもらいたいんです」。そうひたむきに素材に向き合う仲原さんの姿勢が、市場の肉屋の人たちからの信頼を勝ち取っていったのだろう。

店内には、さまざまな部位のメニューが掲げられている。ここに載っていない、裏メニューもあるそうだ。
店内には、さまざまな部位のメニューが掲げられている。ここに載っていない、裏メニューもあるそうだ。

専門店がコンセプトという『スタミナ串焼き 仲垣』では、豚のモツをメインに鶏や牛など、25種類ほどのもつ焼きが味わえる。そのほかモツを使った一品料理など、どれも素材本来の味わいを活かすために、手を加え過ぎずシンプルに仕上げられたものばかりだ。

新鮮なモツにこだわっているだけあって、刺身もガツ・コブクロ・ハツ・センマイ・ハチノスと5種類揃う。

鮮度抜群のもつ焼きは、プルッとした柔らかい食感がたまらない!

焼きもの盛り合わせ5本1280円〜。素材の味がよく分かる、塩でいただく。
焼きもの盛り合わせ5本1280円〜。素材の味がよく分かる、塩でいただく。

まずこれを味わってもらいたいという、焼きもの盛り合わせ。食べてみると、ふわっと柔らかい食感で全く臭みは感じない。朝採れの新鮮なモツにこだわっているからこその味わいだろう。

タレで焼き上げたレバーは別皿で。専門店というだけあり、心遣いが嬉しい。
タレで焼き上げたレバーは別皿で。専門店というだけあり、心遣いが嬉しい。

レバーも臭みは全くなく、半生の柔らかいトロッとした食感がたまらない。

もつ煮込み580円。もつ焼きとは違った食感が味わえる。
もつ煮込み580円。もつ焼きとは違った食感が味わえる。

シロをメインに、テッポウなどさまざまな部位を味噌で煮込んだ、もつ煮込み。こちらも臭みは全く無い。モツはプルプルと柔らかい食感に煮込まれ、寒い冬にはぴったりの一品だ。

天然水モルツ生630円を合わせて。この組み合わせを食べて、サッと帰って行くお客さんも。
天然水モルツ生630円を合わせて。この組み合わせを食べて、サッと帰って行くお客さんも。

生ビールと合わせると、ジューシーなモツの脂を、ビールの炭酸が爽快に受け止めてくれる。

店主が自分が好きなもつ焼きと相性が良いものを置いているというお酒は、生ビールや中瓶、ハイボール、サワー系のほか、焼酎、日本酒、ワインまで一通り揃っている。

気取らず飲める専門店のような雰囲気は、通いたくなる居心地の良さ

店長の小川裕之さん。真剣な表情で、一串一串焼き上げていく。
店長の小川裕之さん。真剣な表情で、一串一串焼き上げていく。

そんなこだわりのもつ焼きで勝負する、『スタミナ串焼き 仲垣』。今のように発展するまで、お店には紆余曲折などはあったのだろうか。

「最初は全然人が来てくれなくて、苦労しました。1年目なんて1日に2組しか入らない日もあって、3カ月目は赤字を出したことも。オープン前に想像していたより、なかなか一見さんが訪れてくれないもんだなぁって、厳しさを感じましたね。

ですが、新規のお客さんがリピーターになっていってくれたりして、何とかお店の経営を軌道に乗せることができました。やはり、そういう大変な最初の頃に来てくれたお客さんというのは、ずっと忘れられないものですよ」

早い時間からでも、オープンするとカウンターに1人客が座り出し、そのうち満員に。
早い時間からでも、オープンするとカウンターに1人客が座り出し、そのうち満員に。

「コロナ禍の影響はそれなりにありましたけど、お酒が出せない時期でも常連さんがずっと来てくれたりして、何とかやってこれました。本当に、いつも常連さんに支えられているお店です」と、店主の仲原さん。

普段の客層は、常連さんとそれ以外のお客さんが半々という、『スタミナ串焼き 仲垣』。営業する店内でも、常連と思しき一人客が店員と会話しつつもつ焼きを味わって、サクッと帰っていく。まさに専門店といった雰囲気だ。

1人でも気兼ねなく、おいしいもつ焼きを味わいに来られる。そういったこのお店の居心地の良さが、知らず知らずのうちに人を足繁く通わせて、常連にしてしまうのだろう。

住所:東京都品川区上大崎2-14-3 三笠ビル2F/営業時間:17:00~23:00LO/定休日:無/アクセス:JR・私鉄・地下鉄目黒駅から徒歩2分

2階とは雰囲気の異なる、1階の新店『ランダン』

1階のビル入り口には、『ランダン』の表札がある。
1階のビル入り口には、『ランダン』の表札がある。

コロナ禍前は、人気店で来店した人が入れないことも多かった『スタミナ串焼き 仲垣』。常連客が溢れてしまった時にと、2021年10月にオープンさせたのが1階にある『ランダン』だ。

『ランダン』という名前は、野球の塁間で挟んでアウトにする「ランダンプレー」から取ったもので、1階と2階でお客さんを挟み撃ちにするという、遊び心から名付けられたそうだ。

立派な楠の一枚板が使われている、カウンター。
立派な楠の一枚板が使われている、カウンター。

1階は2階よりも席数を抑え、席と席との間隔を広く取って、ゆったり寛げる雰囲気に。おまかせコースやアラカルトで、もつ焼きはもちろん小鉢などの一品料理も味わえるのが特徴だ。

おまかせコースは、前菜4品ともつ焼き6本のコース3,500円と、前菜4品ともつ焼き10本のコース4,500円、前菜3品ともつ焼き8本、おつまみ3品にご飯ものまで付くランダンコース5,800円の3種。もちろん、単品での注文も可能で、季節ごとに変わる本日の一品料理は、10種以上揃う。もつ焼きも単品での注文が可能だ。

おまかせコースの前菜4品より。八ヶ岳かぼちゃの煮付け、ほうれん草の白和え、ミノ刺し3品を盛ったもの。
おまかせコースの前菜4品より。八ヶ岳かぼちゃの煮付け、ほうれん草の白和え、ミノ刺し3品を盛ったもの。

こちらが、おまかせコースの前菜。2階とはひと味違った、旬の食材を使った繊細な和食がいただける。

この新店『ランダン』ができたことで、家族連れや接待利用など、また違うシーンでの利用需要も増えるのではないだろうか。どんどん目黒の地で進化し続けるスタミナ串焼き 仲垣』から、目を離せなくなりそうだ。

住所:東京都品川区上大崎2-14-3 三笠ビル 1F/営業時間:17:00~23:00LO/定休日:無/アクセス:JR・私鉄・地下鉄目黒駅から徒歩2分

構成=フリート 取材・文・撮影=YUKI