日光街道を荒川に向かいお散歩気分でカフェまで
JR北千住駅西口を出て、北千住駅前通り沿いにアーケードが続くきたろーど1010を日光街道に向かって歩く。途中右手には、旧日光街道の千住宿がそのまま商店街になった「宿場町商店街」がある。ここには往時を偲ぶ古い商家も今なお残る。
駅からちょっと離れたカフェまでしばしお散歩気分。目に飛び込んでくるユニークな建物や商店を眺め歩くうち、いつの間にか『Organic Coffee Stand WAN』に辿り着く。駅からぶらぶらゆっくり歩いても15分ほどだろうか。ほどよい距離だ。
オーガニックコーヒーが毎日飲みたくて
住まいの引越しを機にこのカフェを始めたという店主は、もともと銀座でバーを営む。こだわりは、すべてがオーガニックコーヒーであること。
「コーヒーが好きで、自分で始めれば毎日オーガニックコーヒーが飲めると思って」と店主は笑う。
しかし、メニューに並ぶコーヒーもそのほかのラインナップも、そこに添えられた丁寧な添え書きも、これは自分が毎日飲みたいからではなく、カフェに来るお客さんにこそ気軽にオーガニックコーヒーを飲んでもらいからなのでは!? と筆者は思った。
なぜなら、どれも驚くほど安い。「ほぼ利益なしです」とまた店主は笑った。オーガニックコーヒー、スペシャルティコーヒー、フレッシュフルーツシェイクなどなど、どれもコスパ高すぎくんだ。
ペルーとクリミアソフトクリーム、バナナシェイクをオーダーする
12オンスのカップでたっぷりと提供される『Organic Coffee Stand WAN』のコーヒーは、クイックコーヒーを除いてすべてオーダーを受けてから1杯ずつハンドドリップで淹れられる。コーヒーを待つ間に漂う香りが心地よい。
スイーツ代わりに、北海道産生クリームをたっぷり使用したこっくりと濃厚なクレミアソフトクリームをコーヒーと一緒に。絶対クレミアと決めていたという店主こだわりのソフトクリームは、シェイクやホットドックにもなる。
そして、バナナシェイク。実はこれ、かなり人気だそうで店主のおすすめ。バナナまるまる1本と、牛乳とクレミアソフトクリームのみで作られている。なんと贅沢な。ほかにイチゴもあるが、こちらは凍らせたフレッシュイチゴで作るという。それも絶対おいしいに違いない。次回、飲もうと心に決めた。
宿場町千住のおしゃれで居心地いい現代版茶屋
駅前の商店街から外れた日光街道沿いにあるこのカフェを訪れるお客さんには、地元の人はもちろん、荒川を散歩する人やサイクリング途中に立ち寄る人が多いと店主。
それぞれがしばし休息し、また出発する。江戸時代の旅人が団子とお茶でワラジを休めたように。さながらここは、かつての宿場町千住の現代の茶屋みたいだ。
世界中を旅するひとみさんの従妹が内装をしたという店内には、海外から持ち帰ったインテリアが置かれ、旅した地で撮った写真が飾られている。この居心地のいい空間を、奇しくも旅人が作っていた。
ゆっくりくつろげるソファーで写真を眺めつつコーヒーを飲み、ちりばめられた旅の余韻の中にいるとつい長居がしたくなる。
しかし、旅の茶屋にそうそう長居するわけにはいかない。残りのコーヒーを持って散歩を続けることにした。そして再び、このカフェで休息をとりに戻るために。『Organic Coffee Stand WAN』はそんな気持ちになるカフェだ。
取材・文・撮影=京澤洋子(アート・サプライ)