江戸時代の趣を残す庭園で名月を愛でる

東向島にある向島百花園は、江戸時代に造られた現存する唯一の花園。文化元年(1804)、それまで骨董商を営んでいた佐原鞠塢(さはらきくう)が武家屋敷であった土地3,000坪を購入。交流のあった文人墨客から寄附を募って、360本の梅の木をはじめ、万葉集などに詠まれている日本古来の草木を集めて庭園を造り上げた。同時代に造られた豪華な大名庭園とは異なり、素朴な雰囲気。江戸庶民にも開放され、四季折々の草花が楽しめる人気スポットとして親しまれた。

そんな名園で江戸時代から続く秋の恒例行事が「月見の会」だ。中秋の名月に合わせて開催されるイベントで、期間中は開園時間が21時まで延長され、月明かりの下、夜の庭園を散策できる。「絵行灯やぼんぼりに照らされた幻想的な夜の庭園を楽しんでください」と話すのは向島百花園の土屋萌さん。

期間中は毎日筝(そう)の演奏が行われるほか、16日(月・祝)には団子や野菜などのお供えと篠笛の演奏が行われるお供え式、16日(月・祝)・17日(火)には茶会(有料)などの催しも。和楽器の音色を聴きながら月を眺めれば、より一層風流な気分を味わえそうだ。

お供え式では、これぞ日本のお月見という光景を楽しめる。
お供え式では、これぞ日本のお月見という光景を楽しめる。

園内は秋の山野草も見どころ

また、秋の七草のひとつでもあるハギの見頃に合わせて「萩まつり」も9月14日(土)~10月1日(火)に開催される。竹を組み上げたトンネルにハギを這わせた全長約30mにもおよぶ「萩のトンネル」が名物で、トンネル内では一面ハギに包まれたような感覚を味わえる。「トンネル内は赤紫と白のハギが入り乱れて咲きます。ぜひお好きなスポットを探してみてください」(土屋さん)。それ以外にも可憐な秋の草花もあちこちに咲いているので、足元にも目を向けて深まりゆく秋を感じてみては。

池越しに東京スカイツリーが見られる人気の撮影スポット。
池越しに東京スカイツリーが見られる人気の撮影スポット。

開催概要

「月見の会」

開催日:2024年9月16日(月)~18日(水)
開催時間:9:00~21:00(最終入園は20:30)
会場:向島百花園(東京都墨田区東向島3-18-3)
アクセス:東武スカイツリーライン東向島駅から徒歩8分
入園料:一般150円

【問い合わせ先】
向島百花園サービスセンター☎03-3611-8705
公式HP:https://www.tokyo-park.or.jp/park/mukojima-hyakkaen/index.html

取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供